花葬儀を選んだ理由
4年半の闘病の末に亡くなった妻。「美しいお花の祭壇」は本人のたっての願いでした。
がんを患い、4年半もの長きにわたって闘病を続けてきた妻は、もう治らないことが分かると「最期はきれいなお花に囲まれながら旅立ちたい」と自ら理想の葬儀について語るようになりました。読経が流れる中、白や黄色の菊の花が飾られた祭壇に遺影が飾られて……というような、いわゆる一般的な形式の葬儀は望んでいないということで、「花」「葬式」のキーワードで検索してたどり着いたのが、花葬儀さんのホームページでした。
パンフレットを取り寄せて病室に持っていくと、まさに妻の希望通りだったようで大変喜んでくれました。他の葬儀会社は検討する余地もないほど本人が気に入っていたので、そのまま花葬儀さん一社で決めました。
実は妻が亡くなる前日に、偶然にも花葬儀のプランナーさんが病院を訪問してくださり、今後の方針などを話し合っていたのです。その日は「万が一、何かあった時のために」という趣旨の訪問でしたが、妻は翌日に亡くなってしまい……。
偶発的な出来事でしたが、こちらも前もっての心構えができていたので、結果的にはとても助かりました。
花葬儀を体験して良かったこと
生前に書いた「好きなものリスト」を参考に、妻らしい祭壇に仕上げてもらえました。
具体的な葬儀の打ち合わせの場では、花葬儀のフラワーデザイナーさんが私たち遺族の要望をヒアリングし、その場でさっとイメージスケッチを描いてくださいました。そのスケッチの内容が、こちらが思い描いていたものとぴったり合致していたため、家族一同とても驚きました。さらに、葬儀当日の会場がまさにスケッチ通りに再現されていたので、再び驚嘆させられると同時に「これぞプロの仕事だ」と感動しました。
祭壇には、家族旅行の写真や妻が好きだったピーターラビットのぬいぐるみ、愛用のテニスラケットなどを飾っていただきました。その他にも、生前に娘が妻に書いてもらっていた「好きなものリスト」を参考にして、小田和正さんのCDを葬儀会場で流したり、祭壇のお花の色あいを決めたり。お花の種類は指定せずデザイナーさんにおまかせでしたが、「ピーターラビットの世界観が好きだった」という意向を完璧に汲んでくださり、素朴な野花に彩られたイギリス・湖水地方を連想させる空間に仕上げてくれました。棺や装飾用の布も淡いグリーンに統一され、子どもたちも「お母さんらしいデザインだね」と満足しており、きっと妻も喜んでくれていたと思います。
奥様はどんな方でしたか?
まじめで何事にも熱心に取り組む性格。料理や裁縫も得意でした。
結婚前の妻はバス会社に勤めており、1年間だけですがバスガイドの業務も経験したことがありました。観光地などの情報を熱心に勉強するまじめな一面があり、世界遺産検定に合格して資格も持っていました。結婚後退職してからも何かに打ち込むところは変わらず、料理番組を見て新しいメニューに挑戦したり、パン作りに凝ったり、ハンドメイドの干支の飾り物をこしらえてご近所に配ったりもしていました。いつも家族の栄養バランスを考えた食事を出してくれて、良き妻であり子ども思いの良き母でした。
軟式テニスで国体出場目前まで!抜群の運動神経は子どもたちへ受け継がれています。
スポーツが得意で運動神経が良かった妻は、学生時代には軟式テニスで「あと一試合勝てば国体に出場」というところまで進むほどの腕前でした。私も大学で硬式テニスを少々かじっていたので、若い頃はテニスデートもよくしましたね。彼女の才能は3人の子どもたちへと受け継がれたようで、長男は野球、長女はバスケットボール、次女は陸上競技にそれぞれ打ち込んでいました。妻の愛情いっぱいの手料理は、子どもがスポーツを楽しめる健康な身体づくりにも一役買っていたのだと思います。
新婚旅行は夏のカナダへ。最後の旅行は“ピーターラビットのふるさと”へ。
夫婦ともに旅行が好きだったこともあり、新婚旅行は夏の気候がいい時季にカナダを訪れました。妻の実家は福島で農家を営んでおり、閑農期にしか長期の旅行は難しかったので、夏ならカナダ、冬ならニュージーランドと決めていたのです。病気になってからも妻が行きたい場所へたびたび足を運び、九州、四国、山陽・山陰地方などを無理のない範囲で旅行しました。妻は花や自然が好きだったので、ひたち海浜公園のネモフィラの丘や、幸手市の権現堂堤の桜並木を訪れたことも良い思い出です。亡くなる9か月前の2024年冬、大学卒業を控えた次女と2人でイギリス・ロンドンとイタリア・ローマへ訪問したのが最後の旅行となりました。真冬で湖水地方へは行けなかったのですが、ピーターラビットの故郷の国を訪れたことで満足していたのではないでしょうか。
こんなご葬儀でした

お式への要望
美しいお花や好きだったものに囲まれ、楽しくお別れができる葬儀に。
〇ピーターラビットの世界観を表現したい。
〇イギリスの湖水地方をイメージしたデザインに。
〇派手でなくやさしく穏やかなカラーリングにしたい。
実際のご葬儀
〇夏のイギリスの自然を想起させる淡いグリーンを基調に祭壇をおつくりしました。
〇英国ガーデンらしい雰囲気をつくるアイテムとして籐製のバスケットを取り入れました。
〇湖水地方に咲くような可憐な野花を祭壇に組み込みました。
〇テニスラケットや旅行の写真などゆかりの品を展示しました。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
妻好みの空間を創りあげてくれたデザイン力に感謝。親族から「最高の葬儀だった」とお褒めの言葉もありました。
こちらの希望を余すことなく、祭壇に落とし込んでいただけたデザイン力とその再現性に、感謝の言葉しかありません。妻の兄も「最高の葬儀だったね」ととても喜んでおられて、親族一同からお褒めの声が聞かれました。妻自身は戒名もお経も必要ない、葬儀にも誰も呼ばなくていいと言っていたのですが、彼女の実家やご近所との関係性もありますので、私の判断である程度折り合いをつけなければならない部分も出てきました。その結果、事前の予想をはるかに上回る弔問者数となり、戒名やお墓についても妻の本意ではなかったかもしれません。しかし、美しい花々に包まれた葬儀という点にはとことんこだわったことで、きっと妻も満足してくれていると信じています。
何より、私も3人の子どもたちも一切の心残りなく、晴れやかな気持ちで妻を見送れたことを嬉しく思っております。妻のためにご尽力くださり、素敵な葬儀にしていただいて本当にありがとうございました。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。














