花葬儀を選んだ理由
母が遺したエンディングノートが花葬儀との出会いを導いてくれました。
花葬儀を知ったのは、斎場を調べていたときでした。母は生前にエンディングノートを作成しており、「葬儀はここで」と斎場を指定していたため、その斎場をインターネットで検索したところ、花葬儀のバナーを見つけました。問い合わせをしてみたところ、すぐに駆けつけてくださったので、そのままお願いすることにしました。
打ち合わせで詳しく説明を受けて、はじめてどのような葬儀なのかを知り、「今はこんな葬儀もできるんだ」と驚きましたが、不安はありませんでした。母の趣味などを丁寧にヒアリングし、親身になって相談に乗ってくれましたし、費用面の相談にも「それなら、ここをこう調整しましょう」と臨機応変に対応してくださり、安心してお任せすることができました。
式場のイメージに関しては、最近の母のことをよく知る妻の意見を取り入れました。母の趣味の一つが登山だったので、プランナーさんは当初、山や自然をイメージした式場を考えてくださっていたのですが、妻が「これは、ちょっと違う」と。さらに話をして、着物が好きだったという話になったとき、プランナーさんから和モダンな式場の写真を見せられた妻が、「これ!これ!これがお母さんのイメージ」と言って、会場のイメージが決まりました。
花葬儀を体験して良かったこと
母らしい和モダンな会場で、母の無償の愛に想いを馳せました。
母は自分が亡くなったときのことを考えて、エンディングノートを残していました。そこには、「葬儀は家族葬で行ってほしい」「納棺の際には着物を着せてほしい」と書かれていたので、その思いを尊重して、すべてその通りにしました。遺影に使う写真も、母自身が登山のときに撮ったお気に入りの一枚を用意していたので、それを使いました。
当日の会場はスケッチでイメージしていた通りでした。紫と青の花々の中に、歌舞伎の手拭いと自宅にあったたくさんの扇子、愛用の登山靴とリュック。幼少期から和文化に親しみ、歌舞伎が好きで、山登りも大好きだった母らしさあふれる会場でした。
緑と花々が溢れる中で、いろいろなことを思いました。「親孝行したいときに親はなしと言うけれど、本当にそうだな。結局、何も恩返しができなかった。旅行にも連れて行ってあげたかったな」と。葬儀の日も、実は妻の母の一周忌で休暇を取っていたときだったので、「最期まで息子のことを思ってくれていたのかもしれない」と思うと、母の無償の愛を感じました。
お母様はどんな方でしたか?
浅草育ちで若い頃から和文化に造詣が深く、歌舞伎が好きでした。
浅草生まれの浅草育ち。浅草寺を自分の庭のようにして育ち、女学校を主席で卒業した後に商社に就職。父が早くに亡くなってから、一人息子を女手ひとつで育ててくれました。着付け・日本舞踊・三味線を習って、歌舞伎好き。お稽古にも歌舞伎にも、よく連れて行かれました。子どもの頃はまったく興味がありませんでしたが、いま思うと贅沢な経験をさせてもらったと思います。達筆で、年賀状は毎年、毛筆の手書きで送っていました。
登山が大好きで料理も人に教えるほど得意。多趣味で多才な人でした。
自然も大好きで、低山から3000メートル級の山まで、全国の山に登っていました。山小屋泊をしての縦走も家族で経験したことがあります。
母は自宅でいろいろな植物を育てていて、庭には藤棚もありました。亡くなってから、枯れかけていた鉢植えを一つ、私が自宅に持ち帰ったのですが、その途端にきれいな花が咲き始めて驚きました。ひょっとしたら、母が咲かせてくれたのかもしれません。料理も得意で、亡くなる直前まで友人に教えていました。キッチンには食器のコレクションがずらりと並び、「料亭みたい」と言われたこともあります。
芯が強くて決して人の悪口を言わない。母には一生かかっても敵いません。
束縛されることが嫌いで、息子にも「何でも好きにやりなさい」と言う人でした。
覚えている限り、やりたいことを反対されたことも、叱られたことも一度もありません。きっと大変なこともたくさんあったはずなのに、母は芯が強くて辛抱強く、泣き言も文句も、誰かの悪口も決して口にしませんでした。いつもニコニコしていて、友人もたくさんいて、「自分は一生かかっても敵わないな」と思います。
こんなご葬儀でした

お式への要望
家族で温かく、母らしくきちんとした葬儀で送ってあげたい
〇歌舞伎が好きだった母らしい和モダンな葬儀にしたい
〇自然を生かしつつ、和のイメージを出した会場で送りたい
〇エンディングノートに沿いつつ、きちんとした葬儀でお別れをしたい
実際のご葬儀
〇ご趣味の登山で愛用されていた登山靴、リュックなどを展示しました。
〇歌舞伎がお好きだったので、歌舞伎の手ぬぐいと扇子を飾りました。
〇ご遺影は山で撮られた白樺にもたれ掛かるお写真を使用しました。
葬儀を終えての感想はいかがですか?
花葬儀の良さは故人を尊重した葬儀ができること。
母らしさ満載の葬儀に、これなら母の友人も招待すれば良かったと思いました。
葬儀にはお金をかけなくていいと母は書き残していましたが、最期は母らしい、きちんとした葬儀で送ってあげたかったので、花葬儀にして良かったと思っています。花の種類も、菊などにこだわらず、好きな花を選ぶことができますし、供花を花輪ではなく、アレンジに組み込むのも新しい形だなと思いました。
こんなに作り込んだ、母らしさ溢れる会場を作ってもらえるなら、母の友人にも来ていただけば良かったと思いました。亡くなってから知ったことですが、母は本当に友人が多くて、訃報を聞いて自宅まで駆けつけてくださった方や、「葬儀はやらないの?」と、残念そうに声をかけてくださる方がたくさんいました。高齢の方に来ていただくのも申し訳ないと思って家族葬にしたのですが。お二人だけ、幼馴染と家族ぐるみでお世話になったご近所の方が、どうしても参列したいとおっしゃるのでお呼びしましたが、その方々にも「とても良い葬儀ですね」と言っていただけました。
花葬儀の良いところは、故人を尊重できるところだと思います。形式ではなく、故人の思いやその人らしさを一番に考えて、家族や親しい人たちで温かく送ってあげたい方に花葬儀はおすすめできます。葬儀には地域柄もあるので一概には言えませんが、東京などの都市部で、葬儀のしきたりや形式にこだわらない地域であれば良いと思います。
スタッフの方には本当にお世話になりました。最期のメイクでは「こんなに変わるんだ」と思うくらい、きれいにお化粧していただきましたし、お坊様との細かな打ち合わせも、うまくやっていただきました。
場面ごとにいろいろな方が関わるので、同じ説明を何度もするのが少し大変だとは思いましたが、人の最期に立ち会う葬儀という大変な仕事を、スタッフの方は本当に一所懸命にしてくださっていると思います。どうもありがとうございました。
エピソードとお写真、映像は、ご家族様のご許可をいただいて掲載しております。














