「葬儀費用を控除できれば……」と思う方は少なくありません。葬儀費用は決して安い金額ではありませんが、税に関することは複雑で、理解するのはとても難しいものです。 そこで今回は、葬儀費用の控除について、概要や注意点をわかりやすく解説します。控除の対象になる葬儀費用の範囲や、葬儀費用と関わりのある「相続税」の計算方法など、葬儀費用の控除について知りたい方に必要なポイントを厳選してご紹介します。どうぞ最後までご覧ください。 【もくじ】 1.葬儀費用は税控除の対象になる? 2.葬儀費用のうち相続税控除の対象になるもの 3.葬儀費用のうち控除対象にならないもの 4.【注意】相続税申告のために「領収書」やメモは必ず保管 5.相続税の計算方法 6.葬儀費用は控除を利用して賢く節税しましょう 1.葬儀費用は税控除の対象になる? そもそも、葬儀にかかった費用は、控除対象になるのでしょうか? こちらで詳しく解説します。 葬儀費用は「相続税」の控除対象になる 葬儀費用が控除の対象になるのは、「相続税」です。相続税は、課税対象となる財産の価格(課税価格)が、基礎控除額を超えた場合に支払います。そのため、「課税価格<基礎控除額」であれば、葬儀費用も控除の対象にはなりません。課税価格の出し方については、後ほど解説します。 「基礎控除」とは、全ての納税義務者が、無条件で課税額から一定の金額を引くことのできる、納税の負担を軽くするためのシステムです。基礎控除額の計算方法は以下の通りです。 3,000万円+600万円×法定相続人(※1)の数=基礎控除額 (※1)故人の配偶者や子など、民法で定められた相続権利を持つ人のこと 例えば、課税価格1億円相当の遺産を、2人の法定相続人が相続するとした場合、計算式は下記となります。 3,000万円+600万円×2人=4,200万円 この場合、「課税価格>基礎控除額」となり、相続税の支払い義務が生じます。 「所得税」の確定申告の対象にはならない 葬儀費用は相続税における控除の対象となりますが、「所得税の確定申告」の対象にはなりません。 「所得税の確定申告」とは、1年間の収入から必要経費を控除した「所得」の金額を計算し、その金額に対する税金を計算し、国に申告する手続きのことです。確定申告ではさまざまな控除の項目がありますが、その中に葬儀費用は含まれません。 「葬儀で受け取るお香典は、所得になるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、お香典は非課税扱い、つまり、所得税の申告の必要がないものです。社葬の際に法人がお香典を受け取る場合を除き、葬儀費用を所得税の確定申告で控除することはできないため、注意しましょう。 「準確定申告」で所得控除が受けられることがある 葬儀費用は控除対象にはなりませんが、「もう少しお金を節約したい」という方は、「準確定申告」に目を向けてみましょう。 「準確定申告」とは、故人様が本来行うはずだった確定申告のことです。故人様に代わって相続人が代理で行うもので、場合によっては還付金を得られることもあります。 準確定申告は、相続人が必ず行わなくてはならないものではありません。故人様が生前に確定申告を行っていた場合など、特定の条件下にのみ必要になると理解しておきましょう。 2.葬儀費用のうち相続税控除の対象になるもの 葬儀費用としてかかったもの全てが控除の対象となるわけではありません。国税庁による相続税法基本通達によると、控除できる項目は以下のように定められています。 ・火葬、埋葬、納骨にかかる費用(火葬場までの交通費も含む) ・葬儀の前後に生じた費用のうち、通常葬儀に欠かせない費用 (棺、斎場使用料、安置、通夜、精進落としなどの飲食、会葬御礼、お布施、葬儀を手伝ってくれた人への心づけなど) ・死亡診断書作成費用 ・ご遺体の捜索、ご遺体やご遺骨の運搬にかかった費用 3.葬儀費用のうち控除対象にならないもの 「葬儀に直接的に関係しない費用」は、葬儀費用の控除対象にはなりません。 こちらでは、相続税控除の対象にならない主な項目をご紹介します。 香典返し お香典の本来の意味は、家族を亡くした人への金銭的援助です。そのためお香典は相続財産ではありません。そのため、お香典に対する返礼である香典返しも、相続税の控除対象には含まれません。 参列者の交通費、宿泊費 葬儀場から火葬場までの移動に伴う交通費は、控除の対象となります。ただし、遠方からの参列者の交通費、宿泊費などは、葬儀に伴うものとして認められないため、例えお車代を渡したとしても控除できません。 お墓などの祭祀(さいし)財産購入費用 お墓や墓地などの祭祀財産(※2)の購入費用は、非課税です。そのため、祭祀財産を購入したからといって、相続税の控除の対象になることはありません。 (※2)亡くなった人が遺した、先祖を祀(まつ)るための財産。本位牌、仏壇なども含む。 法事にかかった費用 初七日や四十九日など、葬儀のあとに続く法事は、葬儀とは直接関係ないものです。したがって、法事にかかった費用も相続税の控除の対象から外れます。 ただし最近は、葬儀と初七日を同時に執り行う「繰り上げ初七日」が増えています。その場合、繰り上げ初七日の費用は葬儀費用とまとめて請求されることが多いため、控除の対象となる場合もあります。 4.【注意】相続税申告のために「領収書」やメモは必ず保管 相続税で葬儀費用を控除するためには、何に、いくらかかったかがわかるものが必要です。具体的には、領収書、請求書などが該当します。 しかし、お布施やお心づけなど、現金払いで領収書のないものもあります。その場合は、「いつ、誰に、どのような目的で、いくら渡したか」をノートやメモなどに記録し保管しておくことが大切です。 実際にかかった費用よりも水増しで申告することは、もちろん犯罪です。水増しが発覚した場合、税務署から重いペナルティが課されるため、葬儀費用は正確に記録し、保管しておきましょう。 5.相続税の計算方法 相続税の支払い義務が生じるかどうかは、「課税価格>基礎控除額」の場合であるとご紹介しました。 こちらでは、課税価格はどのように算出できるのか、また、そのあとの相続税はどのように計算したらよいのかを、わかりやすく解説します。 […]