位牌にはさまざまな種類があり、初めて準備する方にとっては「どれを選べばよいか」で迷うことも多いでしょう。

この記事では、位牌の種類や、検討する時のチェックポイントをわかりやすくご紹介します。最後まで読むことで、塗りや用途、デザイン、宗派による違いを理解できるほか、「そもそも位牌とは？」「いつまでに用意すべき？」といった基本的なことも押さえられます。最適な位牌を選ぶためのヒントとして、ぜひお役立てください。

1.位牌は主に「白木位牌」と「本位牌」の2種類

位牌とは、故人様の戒名（※1）や没年月日などが記載された木製の札です。多くの仏教において、魂が宿る「よりしろ」として重要な役割を果たします。
まずは、位牌の基本的な知識である「白木位牌」と「本位牌」の違いや特徴をご紹介します。

（※1）かいみょう：仏弟子になった証として授かる名前。あの世での新しい名前でもある。

葬儀から四十九日まで使う「白木位牌（仮位牌）」

「白木位牌」とは、亡くなった方のために最初に用意される位牌を指し、塗装されていない白木で作られています。葬儀から四十九日（魂が成仏するとされている日）まで使用する仮の位牌であるため、「仮位牌」とも呼ばれます。

白木位牌には、戒名、俗名（※2）、没年月日、享年などが書かれており、四十九日以降はお焚き上げして処分するのが一般的です。この位牌は通常、葬儀社や寺院が用意します。

（※2）ぞくみょう：生前の姓名

四十九日後に仏壇へ納める「本位牌（ほんいはい）」

四十九日以降、白木位牌に代わって使用するのが「本位牌」です。仏壇に納められる正式な位牌で、ご遺族が手配しなくてはなりません。四十九日を迎えるまでに、以下の流れで用意しましょう。

【本位牌作成の流れ】

1. 1. 菩提寺（※3）の有無、宗派の確認をする
2. 2. 白木位牌に書かれている情報を確認する
3. 3. 本位牌の種類やサイズなどを決定する
4. 4. 寺院、仏具店、葬儀社などへ作成の依頼をする

詳しくは「位牌の作成手順」の記事をご覧ください。このコラムでは「本位牌」の種類について、詳しくご紹介します。

（※3）ぼだいじ：先祖代々がお世話になっている、つながりの深い寺院

2.本位牌の主な種類

本位牌には「目的」「形・用途」「素材・デザイン」ごとにさまざまな種類が存在します。
こちらでは、本位牌の主な種類と特徴をひとつずつご紹介します。

目的による分け方

目的別に見る位牌の種類は、以下の通りです。

順修牌（じゅんしゅうはい）

死後に戒名を授かり、その戒名を刻んで用意する位牌を「順修牌」と言います。現代は死後に戒名をいただくことが一般的であるため、多くの方がこの「順修牌」に該当する本位牌を用意することになります。

逆修牌（生前位牌）

「逆修牌（ぎゃくしゅうはい）」とは、生前のうちに戒名を授かり、作る位牌です。「生前位牌」とも呼ばれます。仏教では位牌を作成したり、お墓を建立したりと、自らの死後を見据えた仏事を行うことを「逆修」と言い、大きな功徳を得られるとされています。

逆修牌では、戒名の部分が朱色になるのが特徴です。これは、位牌の持ち主がまだ存命であることを表すとともに、長寿を願う意味も込められています。持ち主の死後は、朱色の部分が金色や黒色に塗り替えられます。

形や用途による分け方

形や用途で見る位牌には、以下の種類があります。

板位牌（札位牌）

ひとつの位牌に、1人分の戒名や没年月日が記載された位牌を「板位牌」と言います。台座に板札が垂直に立っている形状で、「札位牌」とも呼ばれます。

新しく作成する位牌の多くが板位牌です。亡くなられたご夫婦を一緒にお祀（まつ）りする場合には、「夫婦位牌（めおといはい）」という形で、ご夫婦の戒名などを連名で記すこともあります。

回出位牌

「回出位牌（かいしゅついはい）」とは、複数の位牌をひとつにまとめることのできる位牌です。故人様の戒名が書かれた札板を10枚程度収納できるようになっており、命日や法要に合わせて札板の順番を入れ替えて使用します。「順々に引き出して使う」ということから「繰り出し位牌」とも呼ばれます。

仏壇に新たな位牌を置くスペースが確保できなくなった時などに、先祖代々の位牌をまとめる目的で作成されるケースがほとんどです。

寺位牌

「寺位牌」は、菩提寺や宗派の本山に安置するための位牌です。自宅にある本位牌をそのまま安置することもあれば、寺院専用として新たに作成した位牌を指すこともあります。

江戸時代までは仏壇が家庭に普及していなかったため、「寺位牌」が一般的でした。現代では、家に仏壇がない（位牌を納める場所がない）場合や、位牌の承継者がいない場合などに、寺位牌が用意されます。

素材やデザインによる分け方

素材やデザインごとに見る位牌の種類は、以下の通りです。

塗り位牌

漆で塗装され、金箔や金粉で装飾されたものが「塗り位牌」です。黒い光沢を持つものが一般的で、「位牌」と聞いて多くの方がイメージするのがこちらの位牌でしょう。

使用される木材、塗装に使われる漆の種類や塗装技術、さらには金の質などによって、価格は大きく変動します。近年では、天然の漆だけでなく、カシュー塗料やウレタン塗料など、 合成塗料で表面を仕上げた位牌も増えており、これらも含めて広義に「塗り位牌」と呼ぶ傾向が見られます。

唐木位牌

黒檀（こくたん）や紫檀（したん）といった高級木材に、透明感のある塗装をした位牌が「唐木位牌（からきいはい）」です。かつては唐（昔の中国を指す）経由で木材を仕入れていたことからこのような名称がつけられていますが、現代では国産のものを使用することもあります。

耐久性のよさ、美しい木目、シンプルながら重厚な見た目などが特徴で、高級感を求める場合におすすめです。

モダン位牌

伝統的な位牌の材質や形状にとらわれず、自由にデザインされたものが「モダン位牌」です。材料も木材に限らず、ガラスや天然石などが使われることもあり、ご自宅のインテリアと調和させて飾ることができます。

「デザイン性の高い仏具を自宅に置きたい」といったニーズに応える、比較的新しいタイプの位牌です。

3.宗派によって位牌の種類・扱いに違いはある？

位牌を選ぶ際、気になるのが宗派による違いです。位牌を作成する際は、亡くなった方が信仰していた宗派の決まりを基本とします。
こちらでご紹介する内容を参考に、必ず確認をしてから作成するようにしましょう。

位牌を用いる宗派・用いない宗派

同じ仏教でも、位牌を用いる宗派と、用いない宗派が存在します。以下は、「位牌を必要とする主な宗派」です。

真言宗、天台宗、浄土宗、禅宗（曹洞宗、臨済宗）、日蓮宗

位牌を用いない宗派には、浄土真宗が挙げられます。亡くなった人の魂はすぐに成仏すると考え、魂のよりどころを必要としない浄土真宗では、代わりに「過去帳」や「法名軸」（※4）といった仏具で、故人様をしのびます。

ただし、全ての浄土真宗派が位牌を用いないわけではなく、ご遺族や寺院の考えによっては、位牌作成が許容されるケースもあります。

（※4）
過去帳：亡くなった方の戒名、俗名、没年月日、享年などを記載した帳面
法名軸：上記と同じ内容が記載された掛け軸

位牌の形状

位牌の形状（デザイン）に、宗派ごとの厳格なルールはありません。基本的にはお好みの種類をお選びいただくことが可能です。例えば、伝統的な金仏壇には格式のある塗り位牌が、モダンな家具調仏壇にはすっきりとしたデザインの位牌が似合うなど、全体のバランスを考えてお選びになるとよいでしょう。

位牌に記す文字

位牌に刻まれる文字は宗派ごとに異なり、特に「梵字（ぼんじ）」と「戒名」に違いが表れます。

梵字

梵字とは、その宗派の信仰の対象を表す文字を指します。戒名の上に記載しますが、省略されることもあります。浄土宗は「キリーク」、禅宗は「空」など宗派ごとに梵字は異なるため、本位牌を作成する前に確認が必要です。なお、日蓮宗は梵字ではなく「妙法」の2文字を用いるのが一般的です。

戒名

あの世での名前である戒名は、約6～12文字で構成されており、宗派によって文字の入れ方が異なります。いくつか例を見てみましょう。なお、位牌に刻まれる文字は本来縦書きです。

【天台宗の女性の場合の戒名例】
〇〇院△△□□大姉

【日蓮宗の女性の場合の戒名例】
〇〇院△妙□□大姉

【浄土宗の女性の場合の戒名例】
〇〇院△誉□□大姉

戒名の構成や文字の意味について詳しくは「戒名と法名の違い」で解説しておりますので、そちらも併せてご覧ください。なお、位牌は無宗教の方や、戒名の無い方でも作成することができます。その場合の位牌は「俗名位牌（ぞくみょういはい）」と呼ばれ、氏名の下に「之霊位」とつくのが一般的です。

不明点は寺院や葬儀社に確認を

位牌の手配をする際は、宗派の確認や戒名の依頼、デザインの決定など、初めての方はもちろん、経験がある方でも悩むことが多いものです。不明な点は菩提寺や仏具店に問い合わせましょう。

「菩提寺がない」「仏事全般の準備で忙しく、位牌のことまで手が回らない」といった場合は、葬儀社への相談がおすすめです。葬儀社は四十九日法要の準備や、寺院の紹介なども一括して対応できるため、ご遺族の負担を軽減することができます。

4.位牌の種類を検討する際にチェックしたい5つのポイント

本位牌は四十九日以降から使い始めるため、亡くなった後に位牌を用意する場合は時間に余裕がありません。慌てて用意した結果、「イメージと違った」「刻まれた内容に誤りがあった」とならないよう、慎重に進めましょう。

こちらでは、位牌を検討する際に確認しておきたいポイントを5つご紹介します。

1.仏壇のサイズ・スペースを確認する

位牌は500mlペットボトルを一回り小さくした程のサイズが主流ですが、実際には仏壇の設置スペースを確認してから決めましょう。位牌のサイズを考える際の注意すべきポイントは以下の通りです。

• ・新しい位牌を置くスペースが十分に確保できているか
• ・仏壇の上段にあるご本尊の目線より高くならないか

仏壇の中央、最も高い部分にはご本尊が配置されます。「ご本尊を大切に敬う」「ご本尊に位牌を見守っていただく」という理由から、位牌のサイズがご本尊の目線の高さを超えないようにするのが基本です。

スペースの確保が難しい場合は、回出位牌を別途用意するなどの対策が必要です。選定や手配に時間がかかることがあるため、時間に余裕を持って準備しましょう。

2.仏壇や部屋の雰囲気に合わせる

近年は仏間のない部屋が主流になりつつあるため、仏壇を寝室に置いたり、モダンなデザインの「ミニ仏壇」をリビングに置いたりする方が増えています。位牌が部屋の雰囲気に合うかどうかも選ぶ際の参考にしましょう。既に仏壇に納められているご先祖様の位牌に寄せたデザインとするのも、ひとつの方法です。

3.宗派の決まりを確認する

故人様が信仰していた宗派や菩提寺による「位牌作成に関する決まり」をしっかり把握することも、とても大切です。特に「梵字を刻むかどうか」「どのような戒名を希望するか」は菩提寺との丁寧な打ち合わせが必要となるため、ご家族だけで判断しないように注意しましょう。

4.納期を確認し、余裕をもって手配する

本位牌は、依頼してから手元に届くまでに通常1～2週間ほどかかります。依頼先や依頼内容によっても納期が異なるため、余裕を持ったスケジュールでの手配が重要です。

もし四十九日に間に合わなくても、慌てる必要はありません。その場合は、納骨や次の法要の機会などに合わせて作成しましょう。

5.品質と価格のバランスを考え、信頼できる依頼先を選ぶ

ご紹介してきたように、位牌にはさまざまな種類があるため、価格も数万円～数十万円と大きく幅があります。また、購入先もネット通販、仏具店、寺院、葬儀社と複数あり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

納得のいく位牌を用意するためには、品質と価格のバランスが取れており、かつ、信頼できる場所で購入することがポイントです。各販売先のメリット、デメリットについては以下を参考になさってください。

【ネット通販】
メリット：気軽に注文できる
デメリット：イメージと実物の間に差が生じやすい

【仏具店】
メリット：位牌以外の仏具もまとめて相談・購入できる
デメリット：店舗に赴く手間がかかる

【寺院】
メリット：法要の相談も一緒にできる
デメリット：選択肢が少ない

【葬儀社】
メリット：葬儀、法要、お墓など包括的な相談が可能
デメリット：ネット通販や仏具店に比べると、選択肢が少ないことが多い

5.位牌の種類に関するQ&A

6.種類やチェックポイントを押さえて納得のいく位牌を用意しよう

四十九日以降に使用する「本位牌」には、用途やデザイン、材質ごとにさまざまな種類があります。それぞれの特徴や検討にあたってのポイントを押さえておくことで、大切な方の魂のよりどころにふさわしい、納得のいく位牌が用意できるでしょう。

位牌でお困りの場合は、ぜひ花葬儀にご相談ください。花葬儀ではお客様のご希望に合わせた最適な位牌をご紹介し、葬儀や法要の準備もまとめてサポートいたします。お問い合わせは24時間365日、お電話または無料の事前相談にて受け付けております。お気軽にご連絡ください。