湯かん(湯灌)とは?費用や当日の手順、行うべきかの判断ポイント
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】

湯かんは、故人様のお身体を洗い清め、生前のような安らかなお姿へと整える儀式です。ただお身体をきれいにするだけでなく、ご家族が故人様のお肌に触れ、感謝を伝えながら心の整理をする時間でもあります。
本記事では湯かんの持つ意味や意義、流れ、費用について、わかりやすく解説します。湯かんを行うべきか悩んでいるご家族は、ぜひ最後までお読みください。
1.湯かんとは何か|故人様を清める大切な儀式

まずは、湯かんの意味と、湯かんと似た言葉である「エンゼルケア」や「死化粧」との違いについて、正しく理解していきましょう。
湯かんの意味
湯かんとは、故人様を棺に納める前に、ぬるま湯で体を洗い清め、旅立ちの身支度を整える一連の儀式を指します。かつてはご家族やご親族が行っていましたが、現在では、ご家族の心身の負担や故人様の尊厳を守るため、葬儀社に依頼し、専門知識を持つ納棺師や湯かん師が行うのが主流です。
「生前の疲れや苦しみを洗い流し、清らかな姿で来世に生まれ変わる」という宗教的、精神的な願いが込められた、ご家族が故人様と向き合う最後の貴重な時間となります。
湯かんと「ラストメイク」「エンゼルケア」との違い
湯かんと似た言葉に「ラストメイク」や「エンゼルケア」がありますが、それぞれ目的や担当者が異なります。
ラストメイクは、主にお顔の清拭や整容、軽いメイクなどを行い、故人様のお顔を自然で柔らかい印象に整えるケアです。いわば「お見送りのための身だしなみ」を整える行為といえます。
一方、エンゼルケアは医療・看護の範囲で行われる死後処置で、体液の処理や清拭、簡単な整容などが中心です。医療機関で行うエンゼルケアは看護師が行い、儀式というより衛生管理の色が強いケアにあたります。
湯かんはこれらとは異なり、故人様の旅立ちに寄り添う儀式的な意味を持ちます。ご家族が「最後にきれいにしてあげたい」と願う気持ちに深く寄り添うものだといえるでしょう。
湯かんの種類
湯かんには、2つの方法があります。それぞれの特徴を知り、後悔のない形を選びましょう。
普通湯かん(シャワー湯かん)
現在、一般的に「湯かん」といえばこちらを指します。ご自宅や会館のお部屋に専用の簡易浴槽(バスタブ)を持ち込み、シャワーと給排水ポンプを使って、お湯で全身を洗い流す方法です。
普通湯かんの特長は、「故人様を最後のお風呂に入れてあげたい」というご家族の想いを叶えることができる点です。納棺師(湯かん師)がお身体や髪を洗いますが、お身体をタオルで覆いながら進めるため、肌が露出する心配はありません。ご希望があれば、ご家族も手桶でお湯をかけてあげるなど参加することが可能です。
古式湯かん
古式湯かんは、蒸しタオルやアルコール綿などを使い、故人様を拭き清める方法です。伝統にならい、納棺師が儀式的な作法を取り入れながら実施します。
お身体を大きく動かす必要がないため、皮膚が弱い方や、動かすと出血の恐れがある場合に適しています。また、専用の機材を使わないため、費用を抑えやすい傾向があります。
2.多くのご家族が湯かんを行う理由
葬儀の打ち合わせで湯かんが選択肢に上がったとき、「そこまでしなくても…」と迷われる方は少なくありません。しかし、実際に湯かんを終えたご家族のアンケートや感想を見ると、「やってよかった」「一番心に残った時間だった」という声が圧倒的に多いのが事実です。
ここでは、湯かんが選ばれる主な2つの理由をご紹介します。
理由1:生前の疲れを癒やし、元気な頃の姿に近づけてあげられる
湯かんには、単にお身体を洗うだけではなく、温かいお湯の力で「表情を整える土台」を作る役割もあります。お湯でお身体を温め、マッサージを行うことで、死後硬直で強張った筋肉が徐々にほぐれ、表情も和らぎやすくなります。ラストメイクがより自然に馴染み、まるで眠っているかのような穏やかなお姿に近づきます。
理由2:ご家族が「何かしてあげられた」と思える
二つ目の理由は、湯かんに参加することで、ご家族自身が「親孝行ができた」「最後に世話をしてあげられた」という達成感を得られる点です。
「冷たくなった足にお湯をかけてあげる」「シャンプーのいい香りに包まれた髪を拭いてあげる」といった行為そのものが、ご家族にとってのグリーフケア(悲しみのケア)になります。
あるご遺族からは「闘病中はなかなかお風呂に入れてあげられなかったけれど、最後にきれいにしてあげられて、私の心も軽くなりました」という感想が寄せられました。湯かんは、故人様のためであると同時に、残されたご家族が明日へ歩み出すためのものであるとも言えるでしょう。
湯かんをなさったご家族の体験談は、こちらもご覧ください。
<お客様インタビュー>やっと帰れたご自宅で、ご家族に囲まれて湯かんを。
https://www.hana-sougi.com/interview/49/
3.湯かん当日の一般的な流れと所要時間
湯かんにかかる時間は、準備から片付けまで含めて、1時間から1時間半が目安です。準備から片付けまで、すべて納棺師などの専門スタッフ(通常2名ほど)が進めます。ご家族は、スタッフの案内に従って儀式の一部に参加したり、椅子の近くで見守ったりしてお過ごしいただきます。
シャワーを使った普通湯かんの一般的な流れは、以下のとおりです。
1.準備・搬入
スタッフが到着し、お部屋に専用の浴槽(バスタブ)やシャワー機材を搬入します。 畳や床が濡れないよう、防水シートで養生を行います。
2.ご挨拶・マッサージ・移動
準備が整ったら、スタッフが故人様とご家族にご挨拶をし、硬直を和らげるためのマッサージを行います。 関節を優しくほぐした後、肌の露出が最小限になるようバスタオルでお身体を覆い、浴槽へ移動します。
3.逆さ水(さかさみず)の儀式
ここから、湯かんの儀式の始まりです。通常、ぬるま湯はお湯に水を足して作りますが、湯かんでは水にお湯を足してぬるま湯を作る「逆さ水」を用います。ご家族には、この逆さ水を桶で汲み、足元から順にお身体へかけていただく灌ぎ(そそぎ)をお願いすることがあります。
4. 洗体・洗髪・顔剃り
温かいシャワーやタオルを使い、スタッフが全身を丁寧に洗い清めます。髭を剃り、爪をといで、身だしなみも整えます。「頭を洗ってあげたい」などのご希望があれば、洗顔や洗髪の一部をお手伝いいただくことも可能です。
5. お着替え・ラストメイク
お身体が清められたら、新しいタオルで水分を拭き取り、旅立ちの衣装(死装束やお気に入りの洋服など)にお着替えします。最後にドライヤーで髪を整え、できる限り生前のお姿に近づくようラストメイクを施します。
苦痛の表情が消え、まるで眠っているような安らかなお姿に戻られたところで、故人様の唇を潤す「末期の水」や、「納棺」の儀式へと進む流れとなります。葬儀全体の流れについて詳しく知りたい方は、「死亡から葬儀の流れ」をご覧ください。
4.湯かんの費用相場と料金に含まれる内容
湯かんの費用は、専用浴槽やシャワーを使うかどうかで異なります。一般的なシャワー湯かんであれば10万円前後、清拭のみの古式湯かんであれば3万〜5万円が相場です。
費用は通常、人件費や機材費、消耗品費などの主要サービスが含まれたセットになっています。ただし、葬儀社によって、ラストメイクや死装束に別途費用が掛かるケースもあるため、プラン内でどこまでやってもらえるかを事前に葬儀担当者に確認しておくとよいでしょう。
また、以下のような事情がある場合には、オプション料金が発生することがあります。
・損傷が激しい場合の復元や、特別なメイクが必要な場合。
・深夜早朝の対応や、遠方への出張費。
・通常の白装束ではなく、刺繍入りの着物や特別なドレスを購入する場合。
「故人の気に入っていた服を着せたい場合はどうしたらよいか?」といった相談も、このタイミングでしておきましょう。
5.湯かんを行うか迷ったときの判断ポイント

ここまで湯かんのメリットや費用を見てきましたが、それでも「本当にやるべきか」迷われている方もいらっしゃると思います。迷ったときは、以下の3つの視点で考えてみてください。
ご家族の想い
湯かんは葬儀を行う上で必須ではありません。湯かんを行うかどうかの判断で大切なのは、ご家族全員が納得して故人様をお見送りできるかどうか、そして「してあげたい」という気持ちがあるかどうかです。
「お風呂好きだったから入れてあげたい」
「苦労をかけたから、最後くらい贅沢をさせてあげたい」
もし、ご家族の中にそのような想いが少しでもあるなら、湯かんを行うことをおすすめします。逆に、「静かにそっとしておきたい」「あまり体に触れてほしくない」というお考えであれば、無理に行う必要はありません。
故人様の状態
長い闘病生活や、病院でのお別れの状況によっては、湯かんを行うことで見違えるほど安らかなお姿に戻られることがあります。
たとえば、長く入浴が叶わなかった故人様にとって、洗髪でさっぱりと清めて差し上げることは、何よりの供養になります。また、病院で行う処置だけでは落としきれない汚れやにおいも、シャワーを使ってきれいに洗い流すことが可能です。
故人様のお人柄や生前の意向
故人様がどのような方だったかを思い出してみることも、湯かんを行うかどうか判断するヒントになります。生前お風呂が好きだった方や、常に身だしなみを気にされていた方に対しては、湯船を使う普通湯かんを行うことで、故人様に安らぎを与えられるでしょう。
逆に、故人様が生前、儀式を望まれていなかった場合は、ラストメイクのみに留めるという選択肢もあります。
ここまで、判断のポイントを解説しましたが、それでも迷われる場合は、葬儀スタッフに率直にご相談ください。湯かんの知識が豊富な信頼できる葬儀社であれば、故人様のお身体の状態やご予算を確認したうえで、具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。
6.湯かんに関するよくあるQ&A
A.基本的にはどの宗教・宗派であっても、湯かんを行うことは問題ありません。
日本では古くから「旅立ちに備え、身体を清める」という習慣があります。そもそも湯かんは、『日本書紀』に見られる沐浴の思想や、仏教の灌頂(かんじょう)儀礼の流れを受けて広まったといわれています。
宗教的な理由で控える必要があるケースは稀ですが、気になる場合は、菩提(ぼだい)寺や葬儀スタッフに相談するとよいでしょう。
A.原則として喪服は必須ではなく、平服で問題ありません。
平服とは、普段着ではなく略礼装(地味な色の私服)のことです。男性ならダークスーツや落ち着いた色のジャケット、女性なら黒や紺、グレーのワンピースやアンサンブルなどが適しています。
喪服を着用してはならないという決まりはないので、お通夜の時間まで余裕がなかったり、遠方から喪服を着用して来る場合などには、喪服でも問題ありません。
水がかかる心配をされるかもしれませんが、湯かんに参加される場合も手元だけですので、エプロンなどの特別な準備は不要です。
A.はい、まったく問題ありません。
湯かんは1時間以上かかる儀式ですので、悲しみが深くなり、見ているのが辛くなることも当然あります。小さなお子様がぐずってしまったり、お疲れが出たりすることもあるでしょう。
そのような時は、遠慮なく退室して休憩してください。スタッフもご遺族の心情を十分に理解していますので、「少し席を外します」と伝えるだけで大丈夫です。無理をせず、ご自身の心のペースを大切になさってください。
A.湯かんを行わないことが失礼にあたることはありません。
お身体の衛生管理という面だけであれば、病院で行われる清拭で十分です。しかし、「湯かんをやってよかった」というお声をいただくことが非常に多いのも事実です。「行うことで満足度が高まり、心の整理がつく儀式」と捉えていただくとよいでしょう。
7.湯かんで穏やかな旅立ちの準備を

湯かんは、故人様の旅立ちを整えるだけでなく、ご家族の心に区切りをつけるための大切な儀式です。
専門スタッフによる丁寧な洗体、洗髪、そして生前のような表情を取り戻すメイクは、悲しみの中にあるご家族の大きな慰めとなるでしょう。
「最後にお風呂に入れてあげたい」
「きれいな顔で送ってあげたい」
もし、そのような想いが少しでもあるのなら、ぜひ湯かんをご検討ください。
私たち花葬儀では、映画『おくりびと』で広く知られるようになった、納棺師による「納棺の儀」を実施しており、お見送りのいち工程として、湯かんを行っております。納棺師の行き届いた所作は、ご家族の心に寄り添い、故人様の旅立ちを美しく演出いたします。
花葬儀の行うお見送り、納棺の儀について詳しく知りたい方は、「おくりびとの演出、納棺の儀」をぜひご覧ください。











