死別によるストレスとは?心と体に起こる変化、向き合う方法
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- 【 生き方のヒント 】

大切な方との死別後、喪失感と共に訪れる「ストレス」。それは心だけでなく、身体や日常生活にまで波及し、ご自身でも気づかぬうちに深い疲れや不安を抱えてしまうことがあります。時間が経っても悲しみが軽くならない場合、「どう対処すればよいのか」「これは普通のことなのか」と悩まれる方も少なくありません。
この記事では、大切な方との死別によって生じるストレスについて、心と身体に及ぼす影響を整理し、どのように向き合い、どのようにケアしていけばよいのかをわかりやすくご説明いたします。
1.死別によるストレスとは?

悲しみが心身に与える大きな影響に対処するためには、まずストレスの正体を知ることが大切です。ここでは、「死別によるストレス」がどのようなものかを整理します。
死別は人生最大のストレス
ストレスとは、外から受ける刺激に心や体が対応しようとする働きのことをいいます。たとえば、環境の変化や強い感情の揺れは、脳や自律神経に負荷をかけ、心身のバランスを崩すことがあります。
心理学では、死別は人生で最も大きなストレスのひとつとされています。愛する方を失うことによる悲しみだけでなく、環境の変化や生活上の負担、心の支えを失うといった、複数の要素が同時に重なるからです。
身近な存在を失うことで「これからどう生きていけばいいのか」という不安が生まれ、気力が湧かない状態に陥ることもあります。
人によって影響に差が出る
同じ死別であっても、心身への影響には大きな個人差があります。これは、故人様との関係の深さや別れの状況、また周囲からの支えの有無によって影響が変わるためです。
特に突然死や事故死など、心の準備ができないままの別れは、悲嘆が長期化しやすいとされています。また、近くに支えてくれる人が少ない場合も、孤立感が強まり、回復に時間がかかる傾向があります。
2.死別によるストレスが及ぼす影響
次に、死別によるストレスが具体的にどのような影響をもたらすのかを、心・身体・生活の3つの面から解説します。
心への影響
死別の直後は、深い悲しみや喪失感に包まれるのが自然な反応です。しかし、その中には「怒り」「罪悪感」「孤独感」など、複雑な感情が混ざり合うこともあります。「なぜ自分だけが残されたのか」「もっと優しくすればよかった」といった思いが浮かぶのは、多くの方に共通する心の動きです。
身体・健康面への影響
強い悲しみは、心だけでなく体にも影響を与えます。多くの方が感じるのは、「眠れない」「食欲がない」「体が重い」といった症状です。ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の不調や頭痛、動悸などの体調変化が起きやすくなります。
生活・社会面への影響
死別によるストレスは、生活全体にも影響を及ぼします。たとえば、気力が湧かず外出を控えるようになったり、仕事に集中できなくなったり、人との会話を避けるようになったりすることがあります。その一方で、「自分がしっかりしなければ」と無理をしてしまう方も少なくありません。
3.悲しみから立ち直るプロセスと注意すべきサイン
大切な方を失った深い悲しみは「悲嘆(グリーフ)」とも呼ばれます。ここでは、その悲嘆がどのように進んでいくのか、そして専門家のサポートが必要になるサインについて、順を追って解説します。
死別によるストレスから回復に向かうプロセス
人が大切な方との死別を経験したとき、心には深い悲嘆(グリーフ)が生じます。その際の心理的な反応の流れは「悲嘆プロセス」と呼ばれ、次のような段階を経て少しずつ立ち直っていくとされています。
1.ショック期
現実を受け入れられず、心が麻痺した状態になる。
2.喪失期
「なぜ」「どうして」と思い、怒りや混乱を感じる。
3.閉じこもり期
悲しみや後悔、孤独感が強まり、気力が落ちる。
4.癒し・再生期
徐々に現実を受け入れ、新たな生活に向けて動き出す。
ただし、この流れはあくまで一例であり、すべての人が同じ順序で進むわけではありません。むしろ、ある日は涙がなかなか止まらなくても、翌日には少し落ち着いた気持ちになったり、また数日後に強い寂しさが戻ってきたりと、行きつ戻りつしながら心の整理が進むことも多くあります。
悲しみが長引く「遷延性悲嘆症」とは?
悲しみが半年から1年以上続き、仕事や家庭生活に支障をきたすほど強い場合は、遷延性悲嘆症(せんえんせいひたんしょう)の可能性があります。これは、日常的に喪失の現実を受け入れられず、悲しみが慢性的に続く状態で、精神医学的にも精神疾患として位置づけられています。
典型的な症状としては、以下などが挙げられます。
・故人様への思いが強く離れない
・現実を受け入れられない
・自責感が強く、他のことに関心が持てない
・社会的な関わりを避けてしまう
放置すると抑うつや不眠、身体疾患の悪化にもつながるおそれがあり、専門的なケアが必要となります。もし「悲しみが薄れるどころか日々増している」と感じる場合は、早めに専門家に相談することが重要です。
悲嘆が長期化する要因
悲しみの期間が長引く背景には、さまざまな要因が関係しています。まず、突然の事故や予期せぬ別れなど、心の準備が整う前に大切な方を亡くされた場合、現実を受け入れるまでに時間を要することがあります。
また、ご親族やご友人といった支えが身近に少ないと、気持ちを打ち明けたり整理したりする機会が得にくく、悲しみの感情が深まることがあります。さらに、故人様との絆が非常に強かったり、もともと責任感が強かったりする場合には、長期にわたり自らを責めてしまうことも少なくありません。
4.死別の悲しみを受け入れるための心の整え方
大切な方を失った悲しみは深く、すぐに癒えるものではありません。
ここでは、悲しみに向き合いながら心を落ち着け、穏やかに過ごしていくためのヒントをご紹介します。
悲しみを否定せず、感じることを許す
悲しみを受け入れる第一歩は、「悲しみを抑え込もうとしない」ことです。涙が出たり、寂しさがこみ上げたりするのは、故人様を深く想っていた証です。悲しみを抑え込もうとすると、心が固まり、かえって回復に時間がかかってしまうことがあります。
泣きたいときは涙を流し、誰かに話したいときは言葉にしてみましょう。悲しみを表に出すことは弱さではなく、心の自然な働きです。
また、思い出の品や写真を前にして静かに過ごす時間も、心の整理につながります。「こんなに悲しいのは、それだけ大切な人だったから」と、悲しみの奥にある愛情を感じ取ることが、少しずつ心の痛みが和らいでいきます。
生活リズムを整える
ストレスの緩和において重要なのは、生活リズムを整えることです。朝日を浴びる、決まった時間に食事をする、軽い運動を取り入れるなど、小さな行動の積み重ねが、心の回復を助けます。また、睡眠不足や食欲の低下が続くと、体がさらに疲弊してしまいます。悲しみの中でも、自分をいたわる時間を持つことを忘れないでください。
支えを受け入れる
悲しみの中にいると、「周囲に迷惑をかけたくない」と感じてしまう方も多いでしょう。しかし、支えを求めることは決してわがままではありません。人は支え合うことで、悲しみを少しずつ分かち合えるからです。
話を聴いてくれる友人、寄り添ってくれるご家族、あるいは専門の相談員など、どんな形であっても、誰かに想いを打ち明けることが心の回復につながります。「話すこと」が目的ではなく、「気持ちを整理する時間を持つこと」が大切なのです。
人に頼ることは、自分の力を失うことではなく、もう一度歩き出すための準備です。悲しみの中で感じる温かいつながりが、心に光を取り戻してくれるでしょう。
5.外部の支援を活用する方法
前章では、ご自身の心と体を整えるためのセルフケアをご紹介しました。しかし、悲しみが強すぎたり、長期化したりする場合、ご自身の力だけでは解決できないこともあります。
ここでは、外部の力を借りて、死別のストレスを助けてもらう方法をご紹介します。
専門機関・相談窓口を利用する
悲しみが長く続き、眠れない、食べられない、何もする気が起きないといった状態が続く場合は、専門家の助けを借りることを検討しましょう。
各自治体には「こころの健康相談」など、心の健康に関する相談窓口が設けられており、無料で話を聴いてもらえる場合もあります。また、心療内科や精神科、カウンセリングなどでは、悲嘆の状態に応じたサポートを受けることができます。
「相談すること=弱いこと」ではありません。悲しみをきちんとケアすることは、自分を守るための大切な行動です。
支援ネットワークで支え合う
近年では「グリーフケア」を目的とした遺族会やオンラインコミュニティなども増えています。似た経験を持つ人たちとつながることで、「自分だけではない」という安心感を得られる場合があります。人と話すことがつらい時期もありますが、無理に閉じこもらず、少しずつ社会的なつながりを持つことが、心の再生を促してくるはずです。
6.葬儀や法要による癒しの効果
葬儀や法要は、形式的な行事のように見えて、実はご家族の心を少しずつ癒してくれる大切な時間です。
ここでは、儀式がもたらす心理的な効果と、その後の法要やご親族などとのつながりがどのように支えになるのかご紹介していきましょう。
葬儀・告別式の心理的な意義
葬儀や告別式は、故人様を想い、別れを受け止めるために意義のある、大切な儀式です。お通夜から葬儀・告別式までの流れを通じ、「もう会えない」という現実を確認することは、強いストレスや悲しみに直面しているご家族にとって、悲嘆の整理に大きな意味を持ちます。
また、葬儀の場では、ご家族だけでなく、友人や知人、地域の方々が集まり、故人様の生きた証を語り合います。この「語りの時間」が、故人様の存在を確認し、ご家族が孤立感や喪失感を和らげるきっかけとなります。
法要やご親族とのつながりも心の支えとなる
葬儀を終えた後も、法要や命日などの節目は、ご家族の心を支える大切な時間です。四十九日や一周忌といった節目にご親族が集まり、故人様の思い出を語り合うことは、死別によるストレスや悲しみを共有し、心が少しずつ癒えていく助けとなるでしょう。
7.死別によるストレスに関するQ&A
A.悲しみに「期限」はありません。1年経ってもふと涙が出ることは自然です。
一般的に悲しみは時間とともに少しずつ軽減しますが、悲しみの深さは人によって異なるため、「他の人より回復が遅い」と比較する必要はありません。ただし、強い苦痛や生活への影響が続く場合は、必要に応じて専門家に相談しましょう。
A.死別による悲嘆と、うつ病による抑うつは似ているようでいて、異なるものです。
死別による悲嘆は、大切な方を失ったことへの自然な心の反応で、故人様への思いや喪失感が中心となり、時間とともに少しずつ変化していきます。時折笑えたり、前向きな気持ちを感じられたりすることもあります。
一方、うつ病は脳や心の機能バランスの乱れによる病気で、悲しみの理由がはっきりしないことも多くあります。興味や喜びの喪失、自責・無力感などが長期的に続く点が特徴です。判断が難しい場合や、睡眠・食欲低下、日常生活への支障が続く場合には、専門機関への相談をおすすめします。
A.まずは生活リズムを整えることが、心の回復にもつながります。
夜は明かりを落とし、ぬるめのお風呂で体を温めましょう。寝る前のスマートフォン使用を控え、穏やかな音楽を聴くのも効果的です。
食事は無理をせず、温かいスープなど口にしやすいものから摂りましょう。体調が少し整うだけで、気持ちも落ち着きやすくなります。
A.相談先としては、公的な相談窓口や専門のカウンセラーがあります。
たとえば、電話をかけた所在地の公的な相談機関につながる窓口としては、「こころの健康相談統一ダイヤル」があります。また、地域の保健所や保健センター、都道府県・指定都市が運営する精神保健福祉センターなどでも、相談が可能です。窓口の場所や連絡先は、市区町村役場への電話問い合わせや公式ホームページで確認してください。
精神科やカウンセリングなどでも悲嘆の状態に応じたサポートを受けることが可能ですので、症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合は検討するとよいでしょう。
A.「何かをしてあげる」よりも、その方の傍にいることが何よりの支えになります。
まずは、話を傾聴する姿勢が何よりの支えになります。アドバイスをするよりも、ただ耳を傾け、共にいる時間をつくることが大切です。話を聴く際はご家族の気持ちを否定せず、「つらかったね」「無理しないでね」といった共感する表現を選びましょう。
また、家事や買い物など、日常の小さなことを代わりに手伝うだけでも、相手の負担はぐっと軽くなります。悲しみを共有しながら、少しずつ支えることが、回復への力になるでしょう。
8.死別のストレスを抱えながら明日へ進むために
死別によるストレスは、誰にとっても避けることのできない大きな試練です。大切な方を失った悲しみは深く、心にも体にもさまざまな影響を及ぼします。悲しみの形や癒えるまでの時間には個人差があり、「こうあるべき」という正解はありません。大切なのは、悲嘆を否定せずに受けとめ、自分のペースで少しずつ心を整えていくことです。
もし今、「誰に相談すればいいのかわからない」と感じているなら、花葬儀までご連絡ください。花葬儀では、大切な方を亡くされた方々を総合的にサポートするメンバーシップクラブ「リベントファミリー」をご提供しております。
経験豊富なスタッフが、ご家族のお気持ちに寄り添いながら、法要や遺品整理、その後の心のケアまで丁寧にサポートいたします。











