喪主として葬儀を行っても相続放棄はできる?相続放棄の基礎知識と正しい手続きガイド|葬儀・家族葬・お葬式なら「花葬儀」

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喪主として葬儀を行っても相続放棄はできる?相続放棄の基礎知識と正しい手続きガイド

喪主として葬儀を行っても相続放棄はできる?相続放棄の基礎知識と正しい手続きガイド

喪主として、葬儀の手配など重い役割を担いながら、相続放棄を検討する方は少なくありません。そこで気になるのが「葬儀を主催しても、相続放棄はできるのだろうか?」ということではないでしょうか。「喪主を務めたら、相続したことになるのでは?」と不安に思う方も多いはずです。

この記事では、喪主が相続放棄をする際に知っておくべきルールや注意点を、わかりやすく解説します。法律の仕組みを理解し、ご自身にとって一番よい形を選ぶ参考にしてください。

1.喪主としての役割と「相続放棄」を考える背景

喪主を務めた人は責任を強く感じるため、「自分が喪主をした=相続を引き継ぐ」と考えてしまう傾向があります。しかし、喪主の役割と相続人としての立場は、法律上まったく異なるものです。

まずは、喪主とはどのような存在なのか、そして相続放棄が検討されるケースとはどのようなものかを整理していきましょう。

喪主とは何か

「喪主」とは、葬儀を主催し、ご遺族を代表して参列者を迎える立場の人を指します。一般的には、故人様の配偶者やお子様が務めることが多いですが、それ以外に、ご親族の中で最も適切と判断された人が選ばれることもあります。

喪主の主な役割には、以下のようなものがあります。

・葬儀の準備と運営
葬儀社との打ち合わせ、宗教者への依頼、弔問客への挨拶など、葬儀全体を取り仕切る。

・対外的な対応
弔問客への挨拶、お香典や供花の管理、弔辞・弔電の確認などの事務的な対応。

・葬儀後の手配
法要日程の調整や宗教者の手配など。

つまり喪主は、「代表」として葬儀を執り行う役割を担うものであり、「財産を引き継ぐ権利者」とは異なります。ただし、喪主が相続人であるケースは多く、葬儀を進める過程で相続に関する判断を迫られることもしばしばあります。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が「被相続人(亡くなった方)の財産を一切受け取らない」という意思を、家庭裁判所に申し立てる手続きです。

相続には大きく以下3つの選択肢があります。

・単純承認:負債も含めたすべての財産を引き継ぐ
・限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を受け継ぐ
・相続放棄:一切の財産を受け取らない

相続放棄のメリットとしては、借金などのマイナス財産を背負わずに済む点が挙げられます。一方、プラスの財産(預貯金や不動産など)も一切相続できなくなること、そして家庭裁判所での申述が必要になることはデメリットと言えるでしょう。

なお、相続放棄には家庭裁判所への申述期限が設けられています。詳しくは「喪主が相続放棄をする際の手続きと流れ」で詳しく解説します。

喪主が相続放棄を検討するケース

「残された預金が少なかった」「借金が残っていた」「保証人になっていた」「遺産の全容がわからない」など、相続がマイナスになる可能性があると、大きな不安を感じるものです。

特に、喪主は葬儀費用の支払いを一時的に立て替えることが多く、「あとで相続財産から精算できると思っていたのに、プラスの財産より借金が多かった」というケースも少なくありません。

このような状況で「喪主として葬儀を行うのはよいけれど、相続は放棄したい」と考えるのは、自然な心理といえるでしょう。では、実際にそのような選択は、法的に認められるのでしょうか。次章より、詳しく解説していきます。

2.【結論】喪主を務めても「相続放棄」は可能

結論から申し上げると、喪主という立場にあっても相続放棄は可能です。
ここでは、「喪主として葬儀を執り行っても、相続放棄はできるのか」という疑問に、法律の観点からお答えします。

「葬儀の主催」は相続を承認することではない【法的根拠を説明】

喪主を務めたという事実だけで、相続放棄ができなくなることはありません。相続放棄ができなくなるのは、「相続を承認した」と見なされる行為(単純承認:民法921条)をした場合です。

法律上、「故人の財産を処分した」と評価される行為が単純承認に当たりますが、葬儀を行うこと自体や、通常範囲内の葬儀費用を支出することは「財産の処分」に該当しません。葬儀費用は「社会的・道義的な義務に基づく支出」と解釈されるからです。

家庭裁判所においても、「葬儀を主催したからといって相続を承認したとは限らない」と継続して判断されています(例:大阪高等裁判所平成14年7月3日決定)。

このように、法律と裁判実務の双方において、「喪主であること」と「相続承認」は明確に区別されているため、喪主が相続放棄を検討することは問題ありません。

「喪主=相続人」とは限らない

相続放棄の制度を理解したうえで、次に整理しておきたいのが「喪主と相続人との関係」です。喪主を務めたからといって、必ずしもその方が相続人であるとは限らないからです。

たとえば、故人様のお子様が遠方に住んでおり、代わりに兄弟姉妹が喪主を務めることもあります。このようなケースでは、兄弟姉妹は通常相続人ではないため、そもそも相続放棄の手続きすら不要です。

3.相続放棄ができなくなる「単純承認」とは?

ここまで、「喪主として葬儀を行っただけでは相続を承認したことにならない」と解説しました。しかし、「一度でも財産を自分のものとして扱った」と法律上認められる行為をした場合、放棄の権利を失ってしまいます(単純承認)。

意図せず権利を失うことがないよう、「承認と見なされる行為」を具体的に確認していきましょう。

法的に「相続承認」と見なされる行為

法律上、単純承認と見なされる行為には次のようなものがあります。

・故人様の預貯金を引き出し、自身の支払いに充てた
・故人様の不動産を売却・名義変更した
・遺産分割の話し合いに応じ、財産を分配した など

特に故人様の口座から葬儀費用を出すことには、慎重な判断が求められます。状況によっては「遺産の処分」と見なされ、相続放棄ができなくなるリスクがあるからす。

安全な葬儀費用の支払い方については、「喪主が相続放棄する際の葬儀費用の支払い」で詳しく解説します。まずは「不用意に遺産に手を付けない」という原則を覚えておいてください。

相続放棄に影響しない「保存行為」

相続放棄をする場合、原則として遺産に手を付けることは禁じられていますが、腐敗しやすい食料品の処分や、遺品を一時的に安全な場所へ移動するなどの「保存行為」は、相続放棄に影響しないとされています。ただし、高額品の形見分けや財産価値のある物品の処分は承認行為と見なされる可能性があるため、注意しましょう。

4.喪主が相続放棄をする際の手続きと流れ

喪主は葬儀の対応や、故人様の死亡後の手続きで多忙になりがちですが、相続放棄には「相続開始を知った日から3ヶ月以内」という期限があります。この期間を過ぎると、自動的に借金もすべて背負うことになるため、すべてが落ち着くのを待つのではなく、葬儀の前後にかかわらず、できるだけ早い段階で準備に着手しなければなりません。

相続放棄には、家庭裁判所での正式な手続きが必要です。ここでは、喪主が相続放棄をする際の一連の流れを、わかりやすく解説します。

1.相続財産と債務を確認する

まず、故人様の財産と負債の全体像を把握します。預貯金や不動産といった資産価値のあるものだけでなく、借金や連帯保証、未払い金といったマイナスの財産も調べましょう。

「単純承認」と見なされないように、財産に手をつけることなく調査することが鉄則です。

【相続放棄に影響しない調査方法】
残高証明書の取り寄せ、不動産登記簿の確認、郵便物から債務の確認など。

【相続放棄に影響が出るリスクのある行動】
通帳からお金を引き出す、遺品を自宅に持ち帰って整理するなど。

届いた郵便物は全て保管し、親族間で窓口を決めておくとよいでしょう。

2.相続放棄の意思を固めご親族に共有する

相続放棄を行うかどうかは、相続人一人ひとりが個別に判断します。たとえ喪主としてご家族の中心にいたとしても、他の相続人の意思に縛られることはありません。

ただし、誰かが放棄すると、次順位の相続人(たとえば子が放棄すれば孫や兄弟姉妹など)に相続権が移るため、親族間で情報共有をしておきましょう。「借金から逃れるための手続き」という否定的なものではなく「負債というリスクを整理し、残されたご家族の生活を守るための選択」として、冷静にご家族と相談してください。

3.必要書類を準備する

相続放棄を家庭裁判所に申し立てる際には、次の書類と所定の費用を準備します。

・相続放棄申述書(裁判所で入手、または裁判所ホームページからダウンロード)
・申述人(喪主本人)の戸籍謄本
・被相続人(故人)の住民票除票又は戸籍附票
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
・収入印紙(800円分/申述人1人につき)
・郵便切手(各裁判所の指定金額)

申述書には、「相続放棄をする理由」や「故人との続柄」などを記載します。以下は申述書の記入例です。

申述書

申述書2

相続放棄申述書に、葬儀の経緯を詳しく書く必要はありません。郵便切手は、申述する裁判所によって金額が異なるため、裁判所ホームページで管轄の裁判所と郵便料を確認しましょう。

(出典)書式の記入例
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/2023_souzokuhouki_rei18h.pdf
(掲載元)相続の放棄の申述書(成人)|最高裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_13/index.html

4.家庭裁判所に申述を行う

書類を揃えたら、故人様の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述します。申述は、郵送でも持参でも受け付けています。

申述した後、裁判所から「照会書」が届きます。この照会書は、「相続放棄を本当に希望しているか」「すでに財産を処分していないか」といった内容を確認するためのものです。

照会書には誠実に回答し、署名押印して返送しましょう。もし疑問があれば、裁判所へ電話で確認しても問題ありません。通常は2週間ほどで「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これをもって、正式に相続放棄が成立します。

5. 債権者・次順位者へ通知する

相続放棄の手続きが完了したら、相続権が次順位のご親族に移るため、必ずその旨を伝えておきましょう。

あわせて、債権者などに「相続放棄が受理された」旨を通知しておくと安心です。家庭裁判所から「相続放棄受理証明書」を取得して送付すると、債権者からの督促が続くといったトラブルを防ぐことができます。

5.喪主が相続放棄を決めたときのご親族への伝え方

喪主が相続放棄を決めると、ご家族やご親族の中には「喪主が放棄なんてできるの?」「責任を果たしていないのでは?」と感じる人もいらっしゃるかもしれません。ここでは、誤解を避けつつ円満に理解を得るための伝え方をお伝えします。

「責任逃れ」ではなく「前向きな判断」であると伝える

まず大切なのは、相続放棄を「責任逃れ」ではなく、「ご家族の生活を守るための前向きな判断」であると理解してもらうことです。

説明をする際は、客観的な事実に基づいて話をすることが大切です。たとえば、「調査したところ、プラスの財産よりも借金の方が多いことがわかった」「今のまま相続すると、将来的に家族全員に経済的な負担がかかる可能性がある」といった具体的なリスクを共有しましょう。

「個人の感情」ではなく、「家全体のリスク管理」としての選択であることを丁寧に伝えれば、周囲も納得しやすくなります。

【表現の例】
✕「借金を背負いたくないので放棄します」
○「調査したところ借金が多く、このままでは家族全員に負担がかかるため、慎重に整理したいと考えています」
○「今の状況で引き継ぐのは難しいため、専門家の意見も聞きながら判断したいです」

他の相続人との情報共有を怠らない

これまでに触れた通り、あなたが相続放棄をすると、借金などを引き継ぐ権利は自動的に次の順位の親戚へと移っていきます。ここで改めて強調したいのは、単に権利が移るという話ではなく、「事前に伝えておかないと、ご親族との関係が壊れてしまう」リスクです。

もし、あなたが黙って手続きを済ませ、数ヶ月後に突然、親戚の元へ借金の取り立て通知が届いたらどうなるでしょうか。「なぜ一言教えてくれなかったのか」「喪主なのに不誠実だ」と責められ、その後の法要や親戚付き合いに大きな亀裂が入ってしまうことは想像に難くありません。

事前に情報があれば、次の順位の人も心の準備ができますし、場合によっては「それなら一緒に手続きを頼もう」と協力して動くことも可能になります。喪主としてご親族の連絡窓口になっている今だからこそ、こまめな情報を共有することが、結果としてあなたを守ることにつながります。

もし感情的になって話し合いがまとまらない場合や、親族と疎遠で直接話しにくい場合は、相続問題に詳しい専門家に間に入ってもらい、法的な観点から冷静に説明してもらうことで、スムーズに調整が進むこともあります。こじれてしまう前に、第三者の力を借りることも検討してください。

6.喪主が相続放棄する際の葬儀費用の支払い

葬儀は待ったなしで進むため、費用の支払いに迷われる方も多いでしょう。前述した「単純承認」のリスクを避け、相続放棄を行う最も安全な方法は、「喪主ご自身の預貯金から一時的に立て替えて支払う」ことです。

立て替えた葬儀費用については、後に遺産から差し引いたり、他の相続人へ請求したりすることが可能です。

やむを得ず相続財産から支出する場合でも、以下の点に細心の注意が必要です。

・葬儀は身分相応の範囲に留める
・領収書・明細書を証拠として保管する
・葬儀費用として法的に認められないもの(香典返し等)を把握する

葬儀費用として認められる費用の判断基準や、相続財産から支出する方法については、「相続放棄したいとき葬儀費用は遺産から払える?」で解説しています。自己判断で支払う前に、ぜひご一読ください。

7.喪主が相続放棄を考える際のQ&A


A.原則は3ヶ月以内ですが、事情によっては期限を延長できる可能性があります。

喪主様は葬儀の準備や参列者への対応、四十九日法要などに追われ、あっという間に時間が過ぎてしまう傾向にあります。しかし、相続放棄の期限(熟慮期間)は原則として「相続開始を知ってから3ヶ月以内」と決まっています。

もし期限が迫っている、あるいは「気づいたら過ぎてしまっていた」という場合でも、家庭裁判所に申し立てを行うことで、期間の延長が認められるケースがあります(熟慮期間の伸長)。「相続放棄の期間|延長方法」で、詳細な対応方法をご確認ください。


A.問題の複雑さや、どの範囲のことまで相談したいかなどで判断するとよいでしょう。

相続放棄に関して相談できる主な専門家は、主に以下の通りです。

・弁護士
交渉や代理業務など全て対応可能。ただし費用は高め。

・司法書士
家庭裁判所に提出する書類作成を代行してもらえる。弁護士より安価となる傾向がある。

また、最近では相続に詳しい葬儀社もあり、葬儀と合わせて相続相談の窓口を担うこともあります。弊社「花葬儀」では、相続に関する手続きのご相談も承っております。弁護士や司法書士のネットワークもありますので、お気軽にご相談ください。相続放棄は期限が重要ですので、まずは専門家に現状を伝え、アドバイスをもらいましょう。


A.可能な限り早く、理想は「遺産に手を付ける前」です。迷った段階ですぐにご相談ください。

喪主様は遺品整理や支払いで財産に触れる機会が多いため、知らず知らずのうちに「相続承認」と見なされる行動をとってしまうリスクがあります。手遅れになるのを防ぐため、相続の可能性があるとわかった時点で、できるだけ早く相談するとよいでしょう。

弊社「花葬儀」は相続の相談も承っているため、葬儀の事前相談とあわせて相続放棄についてご相談いただくことも多くあります。すでに故人様の遺産から葬儀費用を支払ってしまったあとでも、相続放棄が認められることもありますので、「もう遅いかもしれない」と自己判断せず、不安を感じたその時に専門家を頼ってください。

8.相続放棄で迷ったときは、喪主一人で抱え込まず専門家に相談しましょう

相続放棄は、残されたご家族を守るための手段でもあります。喪主を務めたとしても、罪悪感を抱く必要はありません。

相続放棄を検討する際、重要なのは法的な誤りを防ぐことです。「残された財産状況が不明で、放棄すべきか迷っている」「家族間の意見が分かれ、調整が必要」といった場合は、一人で抱えず、専門家や信頼できる人に話してください。

葬儀や相続の不安については、ぜひ花葬儀を頼ってください。花葬儀は、葬儀だけでなく、弁護士や司法書士といった各種専門家と連携し、相続手続きまで包括的にサポートできる体制を整えています。「リベントファミリー」にご加入いただくと二親等のご親族までサービスをご利用いただけますので、ぜひ一度ご検討ください。

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