キリスト教のお墓は、日本で多く見られる仏教や神道のお墓とは異なる点が見られます。デザインや設置場所も、宗教的な考えに基づいて選ばれることが一般的です。そのため、どのような手順を踏むべきか、費用はどれくらいかかるのか、迷う方も少なくありません。

今回のコラムでは、キリスト教のお墓の特徴について解説します。費用や建て方、お墓参りのマナーまで、キリスト教のお墓に馴染みのない方にもわかりやすくご紹介しますので、どうぞ最後までお付き合いください。

1.キリスト教のお墓の考え方

まずは、キリスト教のお墓の意味や役割を、仏教と比較しながらご紹介します。

キリスト教のお墓の意味・役割

キリスト教では「1人に対し1つのお墓」を用意し、「土葬」するのが基本とされてきました。

火葬ではなく土葬にするのは、「世界の終わりが訪れた時、イエス・キリストが全ての死者を復活させる」というキリスト教の終末思想が基となっています。ただし日本での土葬は衛生問題などを理由に法律や条例等で制限されているため、火葬して埋葬するケースがほとんどです。

仏教の多くの宗派では、「故人様の魂は死後49日目に成仏する」という考えから、お墓を「故人様の魂が宿る所であり、供養する場所」と捉えています。一方、キリスト教では、魂はすぐに天国に召されると考えているため、お墓は「故人様の生きた証」としての意味合いが色濃くなっています。

仏教との違い

仏教のお墓との違いを比較してみましょう。なお、近年は仏教、キリスト教問わず埋葬方法やお墓の在り方に対する考えが多様化しています。以下は「一般的な例」として参考になさってください。

なお、キリスト教、特にカトリックでは、散骨や分骨、自宅での手元供養は原則として認められていないため、留意しておきましょう。

2.キリスト教のお墓の外観

次は、キリスト教のお墓の外観について詳しく見ていきましょう。

十字架をシンボルとする

キリスト教にはカトリックやプロテスタントなどさまざまな宗派がありますが、その多くでお墓に十字架が用いられています。

十字架はもともと、罪人を「はりつけの刑」に処す際に用いられる処刑道具でした。しかしイエス・キリストがこの十字架で処刑されたことにより、「救いの象徴」としてキリスト教のシンボルになりました。こうした背景から、十字架を墓石に刻んだり、十字架そのものを墓標としたりするデザインが多く見られます。

ただし、全てのお墓で十字架が使われているわけではなく、故人様やご家族の意向によってデザインは異なります。

聖句や洗礼名などを彫る

仏教のお墓では、墓標に「〇〇家之墓」や「宗教的な言葉（南無阿弥陀仏など）」といった文字を刻みますが、キリスト教では以下の言葉を刻むのが一般的です。

• ・名前
• ・洗礼名（キリスト教に入信した時に授かる名前。プロテスタントの場合は付けない宗派が多い）
• ・没年月日
• ・聖書の一節
• ・讃美歌　など

「R.I.P.」というアルファベットが刻まれているのを目にしたことがある人もいるでしょう。これは「Rest In Peace（安らかにお眠りください）」という意味で、キリスト教に関係なく使われるお悔やみの言葉です。

デザインの自由度が高い

キリスト教のお墓のデザインには決まりがなく、以下のように種類が豊富です。日本ではこのうち「オルガン型」「平型」などが多く選ばれています。

• ・敷石を横たわらせた「プレート型」
• ・墓石の正面が斜めにカットされた「オルガン型」
• ・墓石の正面が垂直にカットされた「平型」
• ・十字架そのものを墓標にした「十字架型」
• ・聖書の形をした「聖書型」　など

線香をあげる慣習がないため、キリスト教のお墓に線香立てはありません。代わりに、ろうそくを立てるための燭台を設けることがあります。

石材のバリエーションも豊富

お墓に使う石材のバリエーションが豊富なのも、キリスト教のお墓の特徴です。日本の一般的なお墓では、耐久性が高く、日本の気候・風土に適した「御影石（みかげいし）」が主流ですが、キリスト教のお墓では、御影石以外にも大理石や「赤御影石」と呼ばれる赤みがかった石、さらにはガラスを用いることもあります。

芝生の上に建てられることも

日本で「お墓」というと、コンクリートもしくは地面に台座を設置し、その上に墓石を建てたものを思い浮かべる方が多いでしょう。

欧米のキリスト教墓地では、広大な芝生の上に墓石や墓標を建てるスタイルが一般的です。日本においても、一部のキリスト教墓地や霊園では、芝生の上に墓石を建てることが可能です。

3.キリスト教のお墓の選択肢

ここからは「日本でキリスト教式のお墓を建てる場合」について細かく解説していきます。
まずは、お墓を建てる場所の選択肢です。

教会の霊園・納骨堂

キリスト教徒のお墓は、基本的に「故人様が生前お世話になっていた教会の敷地内にある霊園（または教会が所有している霊園）」に建てることになります。教会が霊園を持っていない場合は、納骨堂のほか、一般の霊園を利用することもできます。

納骨堂とは、故人様のご遺骨を納めるための施設や建物を指し、信仰している宗教宗派を問いません。多くの納骨堂ではご遺族に代わって納骨堂の運営者がご遺骨の供養・管理を行ってくれるため、定期的なお参りが難しい方でも安心です。詳しくは「納骨堂とは？」について解説している記事をご覧ください。

教会の霊園と、納骨堂それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。

【教会の霊園のメリット・デメリット】

• ・メリット　：信仰の確かな場所で眠れる安心感がある
• ・デメリット：お墓を建てるためには生前故人様が洗礼を受け、キリスト教への信仰や理解を深めていなければならない

【納骨堂のメリット・デメリット】

• ・メリット　：ご遺族の負担が軽減される
• ・デメリット：ご遺骨はやがて合祀（※1）されることがほとんど

（※1）ごうし／骨壺から取り出したご遺骨を、他人のご遺骨と一緒に埋葬すること

公営・民営の霊園

それ以外の埋葬先としては、「公営・民営の霊園（墓地）」が挙げられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

【公営の霊園の特徴】

• ・自治体や公共団体が主に運営している
• ・宗教宗派を問わない
• ・民営に比べて利用料が安く、運営も安定的
• ・応募条件が厳しく申込数が多い
• ・サービスは限定的

【民営の霊園の特徴】

• ・宗教法人や民間企業などが主に運営している
• ・宗教宗派に制約があることが多い
• ・設備やサービスが豊富
• ・公営に比べ利用料が高め

公営と民営のどちらを利用するかは、価格面、利便性などを総合的に考えて判断するとよいでしょう。

4.キリスト教の納骨を行う時期

仏教の納骨のタイミングは、故人様の魂が成仏するとされている死後49日目以降が一般的です。一方、キリスト教では、「逝去から1カ月後の追悼ミサ（プロテスタントでは召天記念日と呼ぶ）」を目安に納骨が行われるケースが多いようです。それまではご自宅や教会でご遺骨を安置し、祈りを捧げます。

納骨の時期について厳格なルールはないため、礼拝日である日曜や、別のミサのタイミングで納骨を行うこともあります。迷う際は死後1カ月を目安とし、ご家族や教会と話し合って決めるとよいでしょう。

5.キリスト教のお墓の費用相場・内訳

キリスト教のお墓を建てる際にかかる費用を詳しくご紹介します。

主な費用内訳

お墓にかかる費用は「墓地代」「墓石代」「管理費」に大きく分類され、この内訳はどの宗教でも同じです。

墓地代（永代使用料）

お墓を建てる教会や霊園に支払う土地使用料が「墓地代」です。「永代使用料」と呼ぶこともあります。原則として、お墓を建てる土地は、霊園の所有者から区画を買うのではなく借りて使います。お墓を撤去したら区画を所有者に返還しますが、返金されることはない点に留意しましょう。

墓石代

「墓石代」とは「墓石そのものの費用」だけではなく、「墓石の彫刻・加工費」「墓石の設置費」も含めた金額を指します。墓石代のうち、もっとも大きな割合を占めるのが墓石そのものの費用であり、選ぶ石材やサイズによって価格が大きく変わります。

管理費

管理費とは、光熱費や修理代など、墓地を運営・メンテナンスし続けるために必要な費用です。年ごと、または数年単位で納骨先に支払います。

ここで注意しなくてはならないのが、「管理費＝自分が建てたお墓を管理してもらうための費用」ではないという点です。墓石の掃除や墓石周りの手入れは、原則として自分たちで行います。

納骨堂の場合は、「永代供養料」を払うことでお墓を管理してもらえることが多くあります。管理費の滞納が続くと、最終的に霊園の使用権を失うこともありますので、忘れずに支払いましょう。

お墓の種類別の費用相場

こちらではお墓の種類別に見る、費用の相場をご紹介します。

墓石を建てるタイプのお墓

公営・民営の霊園や宗教宗派不問の墓地にキリスト教式のお墓を建てる場合は、150～数万円ほどがかかります。この相場は「墓地代」「墓石代」「管理費」込みの金額です。ただし地域や立地、区画の広さ、墓石のデザインなどの内容によって大きく変動しますので、詳しくは石材店や埋葬を希望する教会にご確認ください。

教会敷地内の墓地・納骨堂

教会の敷地内にある墓地や納骨堂に埋葬する場合、教会に対し献金をお渡しするケースがほとんどです。キリスト教における献金とは、神への感謝を込め、教会の活動のために行う寄付であり、仏式で言うところのお布施にあたります。

献金は義務ではなく、また、決まった金額がありません。献金と墓地使用料含めて10～20万円を目安とするところもあるようですが、明確な相場を示すことは難しいのが実情です。詳しい金額はお世話になっている教会の牧師または神父、もしくは同じ教会で埋葬した方に相談するとよいでしょう。

一般の納骨堂

宗教宗派を問わず利用できる一般の納骨堂に埋葬する場合、その費用は納骨堂の種類によって異なります。以下は、キリスト教の方が利用しやすい納骨堂の種類と相場です。

共同墓地

共同墓地とは、1つのお墓に共同で納骨する墓地を意味します。もともとは、集落など近隣の地域がお金を出し合い、共同で管理・運営する墓地を指していました。

キリスト教の共同墓地に納骨する場合、納骨料として10～50万円程度がかかる他、年間管理費や献金が必要です。共同墓地の規定によっても金額が異なるため、詳しくは直接ご確認ください。なお、キリスト教の共同墓地に入るためには、信者であることが前提です。

6.キリスト教のお墓選び・納骨までの流れ

キリスト教のお墓選びから納骨までの流れをご紹介します。

1.納骨先の選定・契約

ご遺骨をどこに埋葬するか、ご家族や教会の意向も尊重しながら決定します。「お世話になっている教会がない」「埋葬先を探す余裕がない」といった場合は、葬儀社に相談するのもおすすめです。なお、花葬儀ではお客様のご希望に応じたキリスト教の霊園をご紹介しております。

2.墓石のデザイン決定・建立

納骨先の霊園または石材店にて、墓石のデザインと墓石に刻む文字を決定します。完成までにかかる日数や、墓石を墓地に運ぶ日程も忘れずに確認しましょう。

3.納骨式の準備・実施

完成したお墓に納骨します。追悼ミサ（カトリック）、召天記念日（プロテスタント）に合わせて納骨をする場合の基本的な流れは以下の通りです。

【納骨式の流れ】

• ・追悼ミサや召天記念日の式典終了後、墓地へ移動する
• ・聖職者による聖書の朗読
• ・参列者全員で讃美歌斉唱
• ・納骨
• ・献花
• ・祈りの言葉

7.キリスト教のお墓参りマナー

納骨後、お墓参りをする際にはどのような点に気をつけたらよいのでしょうか。
こちらでは、キリスト教のお墓参りのマナーについて詳しく解説します。

お墓参りをする時期

キリスト教には仏教のようなお彼岸やお盆といった慣習はありません。そのため、教会のミサに参列した時や、故人様の命日、宗派ごとに設けられている集会などに合わせてお墓参りをするのが一般的です。

カトリックとプロテスタント、それぞれの主な追悼儀礼の時期は以下の通りです。

【カトリックの追悼儀礼】

• ・逝去後3日目、7日目、30日目（追悼集会）
• ・逝去後1年目の命日（死者記念ミサ）
• ・毎年11月2日（死者の日）

【プロテスタントの追悼儀礼】

• ・逝去後7日目、10日目（記念集会）
• ・逝去後1年後、3年後（追悼集会）
• ・毎年11月の第1日曜日（聖徒の日）
• ・イースター（召天者記念礼拝）

お墓参りの時期に厳密なルールはないため、故人様に会いたくなったタイミングや、穏やかな気候を選んでもよいでしょう。

持ち物

キリスト教のお墓参りの際の持ち物は、以下が基本です。

• ・お墓を掃除するための道具（スポンジ、バケツなど）
• ・ロウソクとライター
• ・生花（白いユリ、白いカーネーションなど）
• ・聖書や讃美歌の本

白はキリスト教において、純潔や神性といったものを象徴する大切な色です。そのため献花は白い花が基本ですが、故人様のお好きだったお花を手向けても問題ありません。

お墓参りの服装

お墓参り時の服装に関する考え方は、どの宗教でも同じです。過度に派手で露出の多い格好ではない限り、私服でもよいでしょう。

特に重要な節目でのお墓参りは、身だしなみに気を配ります。以下を参考になさってください。

【節目の時の服装】
男性の場合

• ・ブラックスーツ
• ・白いワイシャツ
• ・黒いネクタイ
• ・黒の小物

女性の場合

• ・黒のスーツまたはワンピース
• ・肌が透ける程度の黒いストッキング
• ・黒の小物

身だしなみに関する詳細は「法事の服装」も参考になります。

8.キリスト教のお墓参りの流れ

キリスト教のお墓参りの流れは、一部は仏教と共通していますが、宗教的な作法や意味は異なります。詳しく見ていきましょう。

清掃

まずはお墓とお墓周りの清掃を行います。墓石の汚れを落とし、周囲に生えている雑草などを抜きましょう。きれいになったら、お墓の燭台にロウソクを刺して火を灯します。

なお、キリスト教のお墓参りでは、仏教ほどロウソクや線香を使う習慣は強くなく、献花と祈りのみの場合も多くあります。

献花

持参した花を供えます。ご紹介したように、花は白いユリやカーネーションが一般的ですが、故人様が生前お好きだった花でも差し支えありません。なお、仏花（仏教の供養のためにあつらえられた花束）は、こだわりが無い限り避けるのが無難です。

キリスト教では線香や飲食物などを供えることは基本的にありません。献花以外にもお供えしたいものがある場合は、必ず霊園に確認しましょう。

祈り

両手を胸の前で合わせて祈りを捧げます。祈りの最後に十字を切るのはカトリックのみで、プロテスタントは十字を切りません。祈り終わったらロウソクの火を消して終了です。

【十字の切り方】

• ・心の中で、または声に出して「父と子と聖霊の御名(みな)によって。アーメン」と唱えながら、右手で額→胸→左肩→右肩の順に指を動かす
• ・最後に胸の前で手を合わせる

9.選択肢の多いキリスト教のお墓｜お墓選びは信頼できる所に相談を

デザインの自由度が高いキリスト教のお墓選びでは、何を重視して考えればよいか悩みがちです。お墓選びで失敗しないためには、キリスト教のお墓や墓地に詳しい、頼れる相談先を見つけると安心でしょう。

キリスト教のお墓選びは、花葬儀におまかせください。経験豊富なスタッフが、お墓の建立や納骨式の準備、お花の手配などを一括してサポートいたします。現在、無料の資料・お見積りを請求していただいたお客様には、葬儀後の必要な手続きなども載っている「お葬式の教科書」をプレゼントしております。この機会にぜひご検討ください。