相続不動産を売却したいと考えたとき、気になるのは「その不動産がいくらで売れるのか」ではないでしょうか。それに先だって、「売却方法」と「手続きの期限」を知っておく必要がありますが、相続や不動産といった事柄は難しい制度や専門用語が多く、苦戦する方が少なくありません。 そこで今回は、相続した不動産を売却するにあたり、押さえておきたいポイントをわかりやすくご紹介します。「売却のタイミング」「売却手順」「売却手続きの期限」さらには「節税のヒント」など、役立つ情報をご提供しますので、ぜひ参考になさってください。 【もくじ】 1.「相続前」「相続後」それぞれの不動産売却のメリット・デメリット 2.不動産を売却するベストなタイミングは? 3.相続した不動産の売却手順 4.相続した不動産に関する手続きの「期限」 5.花葬儀の相続不動産に関する売却相談 6.相続した不動産の売却は、専門家に相談しながら進めましょう 1.「相続前」「相続後」それぞれの不動産売却のメリット・デメリット 不動産を売却するタイミングとして、「相続する前」と「相続した後」では何が違うのでしょうか。 まずは、不動産売却時のメリット・デメリットを、相続前と相続後とに分けて解説します。 相続前の不動産を売却するメリット・デメリット 「相続をする前に不動産を売却する」ということは、つまり、相続とは関係のない通常の不動産売買を意味します。 例えば、自分の親が所有している物件を相続前に売却する場合、「所有者」も「売り主」も親であり、売却して得た現金は親が受け取ることになります。 相続人(相続を受ける側のこと/この例では所有者の子や配偶者など)が相続するのは、被相続人(財産を遺して亡くなった人)が不動産売却で得た現金です。相続前の不動産を売却する方法には、以下のメリット・デメリットが考えられます。 【相続する前の不動産を売却したときのメリット・デメリット】 メリット デメリット 被相続人 ・まとまった現金が得られる ・資産管理がしやすくなる ・売却して得た利益に、税金が課される 相続人 ・本来かかるはずだった不動産の維持費が不要となる ・相続人が複数の場合、不動産を相続するよりも分割がスムーズになる ・不動産を相続するよりも、相続税率が割高になることがある 相続後の不動産を売却するメリット・デメリット 相続後に不動産を売却することのメリットとして、「節税が期待できる」が挙げられます。相続した財産には「相続税」が課されますが、不動産を相続するほうが、現金を相続するよりも、最終的に支払う税金が低くなる傾向にあります。 また、相続税とは別に、相続した不動産を売却して得た利益(譲渡所得)にも、所得税(譲渡所得税)がかかりますが、特定の条件を満たせば税が軽減され、より節税が期待できるのです。 しかし、不動産を相続する人が複数いた場合には、売却手続きが煩雑になるというデメリットもあります。被相続人が死亡して被相続人の遺言書が残されていなかった場合、被相続人の遺産は、遺産分割協議が成立するまでの間、各相続人の法定相続分に応じて共有状態となります。 ひとつの不動産を複数人による共有名義で相続していると、売却には全員の同意が必要となります。共有名義人が多く、円滑なコミュニケーションが取りにくいほど、売却は難航するでしょう。 2.不動産を売却するベストなタイミングは? 相続前と相続後、それぞれのメリットとデメリットをご紹介しましたが、結局どちらが売却にベストなタイミングなのでしょうか? 残念ながら、不動産の売却のタイミングは「こちらのほうが良い」と一概に言えるものではありません。なぜなら、不動産の資産価値や相続人の状況などの背景が、人それぞれに違うからです。 例えば、住む予定の無い空き家があれば、相続前に売却して現金化した方が、維持費がかからず相続人にとって有益です。一方、特例が適用される条件がそろっていれば、税の軽減が期待できる相続後に売却をする方が良い選択だといえるでしょう。 相続する不動産の売却にどのような選択肢があり、何が最適なのか、司法書士などの専門家から情報を得て、慎重に検討することをおすすめします。 3.相続した不動産の売却手順 「相続した後」に不動産を売却したい場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。 ここからは、相続後の売却を中心とした、基本的な手順について解説します。 1.遺言書の有無を確認 売却を検討するにあたり、まず始めに確認するのが「遺言書の有無」です。遺言書は大きな効力を持っており、相続人は基本的に、遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。 【遺言書で確認したいこと】 ・自分に不動産の相続権利があるのか ・相続する不動産の内容や規模 ・不動産を相続する人の人数(単独相続か、共有名義による相続か) 遺言書の効力については、別記事でも解説しておりますので、参考になさってください。 2.遺産分割協議 「遺産分割協議」とは、相続人で遺産の分け方について話し合うことです。被相続人が遺言書を遺していなかった場合や、遺言書に遺産の分け方について具体的な記載が無かった場合などに行います。 遺産分割協議で決定する内容は、相続人全員の合意が必要です。遺産分割協議を得て決定された遺産分割協議書は、相続人全員の署名と捺印が原則必要となります。 3.不動産の名義変更(相続登記) 相続する不動産の概要が確定したら、新たな所有者として、不動産の名義変更を行います。これを、「相続登記」ともいいます。相続登記は、2024年4月より義務化し、変更しないままでいると罰則の対象となることもありますので、注意してください。 相続登記には「登録免許税」が発生します。登録免許税は、「固定資産税評価額(土地や建物などにつけられた価値)×0.4%」で算出されます。例えば固定資産税評価額4,000万円の不動産を相続した場合、納める税額は16万円です。 相続登記は、相続する不動産の所在地を管轄する各法務局にて行います。手続きは自分で行うことができますが、時間と労力がかかる他、登記漏れなどのリスクもあります。心配であれば、弁護士、または司法書士に依頼しましょう。 4.必要書類の準備 […]