病床の減少で増える自宅や介護施設での看取りと葬儀

病巣数は今後どうなる?

2015年、政府が
『2025年までに、病院の病床数(ベッドの数)を115万~119万床程度にまで減らす』
という目標を発表しました(2015年現在の病床数から、16万床~20万床程度の減少)。高齢化社会が進むにつれて、今後、医療の必要性はさらに高まるはずです。
しかし、なぜここでベッド数を減らすという動きが出ているのでしょうか。今回は、ベッド数の減少から見る医療の動きと、それとともに変わる葬儀のあり方をお話しします。

ベッド数と医療費の意外な関係

需要があるベッド数を減らすという、一見矛盾しているようなこの動き。その裏には、私たちが払う税金にも関係する、医療費の問題が横たわっています。
順を追ってお話ししましょう。

世界トップクラスの病床大国ニッポン

じつは日本は、「世界一病院のベッド数が多い国」であること、ご存知でしたか?
その数は、人口1000人に対して13.1床!
福祉国家の優等生として知られるデンマークは1000人あたり2.2床、スウェーデンは2.3床なので、その数の多さがおわかりいただけるかと思います。
2025年には、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上の年齢となり、「後期高齢者」の人口が一気に増えることが予測されています。
しかし、高齢者が増える一方で、ベットの数を減らす動きが活発になっていることはお話ししたとおりです。事実、ベッド数は1992年の169万床をピークに減少へ転じ、現在は155万床ほどにまで落ち込みました。それでも政府は、「このベッド数はまだ多すぎる」と考えているようです。
こうなると、
「後期高齢者の受け皿になる病院のベッド数を、なぜ減らすのか」
という意見が出てくると思いますが、問題はそんなに単純なものではありません。
ここで、さきほど申し上げた医療費の話が出てきます。

病床大国にのしかかる多額の医療費

なぜここで、医療費の問題が出てくるのか。
それは、世間一般には「ベッド数が多いと医療費も正比例して増える」という考えが支持されているためです。とくに日本は、この仮説に高い相関関係が見られるそうです。
現在の国民医療費は40兆円以上にのぼり、その約4割が国や自治体の税金でまかなわれています。団塊世代の高齢化で入院患者が増えると、そのぶん医療費が膨れ上がることが予想されます。半分近くに税金を充てている医療費が高くなるとどうなるか。そう、
「私たちが普段払っている税金が、さらに高額になるかもしれない」のです。
こうなると、税金で生活が苦しくなる方も増えてくることでしょう。それを避けるため、なるべく医療費を抑える必要性が高まっているのです。
ところで、最近の日本の病床は

  • ・社会的入院(本当は自宅で暮らせる程度の傷病者が入院している)
  • ・重傷者用の病床を軽症者が使っている

という使い方が多いといわれています。
これには

  • ・ひとり暮らし世代の増加で、在宅では面倒を見る人がいない
  • ・公的医療制度の恩恵で、自己負担額が少ない

などの理由があるようですが、このような使い方をなくすことで、ベッド数を削るとともに医療費の増加を抑えることが期待できます。
医師の数やその負担など、医療資源にはどうしても限りがあります。その効率の悪い使い方を減らせば、医療を提供する効率を高めることにもつながります。ベッド数を減らす方向性を打ち出したのも、それなりの理由があるのです。
では、病院に頼れない後期高齢者の行先はどこになるのか、それが自宅や介護施設です。

介護施設は病院の受け皿になれるのか

病院に頼れない後期高齢者を自宅や介護施設に移すことは、これまで病院が支えていた患者を、それ以外の機関に分散させて広く支えるという、医療、福祉のあり方の転換点といえます。しかしこちらも、

  • ・往診を担当する開業医の減少や高齢化
  • ・介護職員の人手がたりない

などの問題点があります。とくに介護職員の人手不足は、33万人にもおよぶ見通しだとか。
つまり、いわゆる「在宅医療制度」が進んでも、患者や高齢者を受け入れる環境が整うとは限らないのです。

医療費の削減は重要なことですが、それにばかり注目してベッド数を削ると、いわゆる「医療難民」が増えるという本末転倒な結果になりかねません。また、これまで使用率が3~4%ほどという赤字体質だった(公立の)感染症指定医療機関の病床が、2020年の新型コロナウィルス流行により大活躍しています。
もちろん、見知らぬ病原体のためにベッド数を必要以上に残すことは、現実的ではないでしょう。しかし、万一のときに柔軟な対応がとれる体制づくりと、ある程度の余裕をもたせることは重要です。医療費の削減と、その受け皿となる現場の強化、そして万一のときの体制づくり、この3つの要素をバランスよく調整することが、これからの社会に必要であるといえるでしょう。

動き出した医療、福祉と葬儀の関係

ベッド数の減少という動きから、医療、福祉のあり方が大きく変わりつつあります。では、それらと関係が深い葬儀は、どのような動きが予想されるのでしょうか。

コンセプトはこれで決まり?「コンパクトなお葬式」

ベッド数を減らすという動きがある以上、ご自宅や介護施設など、病院以外の場所でお亡くなりになる、または看取る方が増えることは間違いないでしょう。また、新型コロナウィルスの影響で、参列者をご家族だけに絞った「家族葬」、少人数のため自宅でのお見送りでも問題ないことから「自宅葬」が多くなるなど、葬儀の在り方も変わってきています。
そして、葬儀の内容についても、「その人らしさ」を盛り込み、画一的な形式にこだわらないという価値観が認められるようになりました。人生の最後を、多くの思い出が詰まったご自宅で、旅立ちの節目も記憶に残るものにする。このような「コンパクトで、故人様らしいお見送りができる」様式の葬儀が、少しずつ勢力を強めていくのではないでしょうか。

じつはできます。介護施設でのお葬式

また、介護施設での葬儀も、徐々に一般化していくことでしょう。ご自宅で営む「自宅葬」の規模であれば、介護施設のホールでも祭壇を設営することができます。「自宅では面倒を見てくれる人がいないから、病院にいる」という高齢者が多いことはお話ししましたが、このような一人身の方が介護施設に入所してお亡くなりになることも、今後増えてくることでしょう。そういった場合でも、施設で人間関係を持った方々に見送っていただけると、故人様も少し安心して旅立てるのではないでしょうか。
もちろん、これからの葬儀がすべてご自宅や介護施設で営まれるようになるわけではありません。しかし、いろいろな選択肢が出てきていることは事実です。ご自身のお考えをまとめ、または対象者様の希望をくみ取り、その晩年をどこでお過ごしになるか、葬儀をどのように営むか、少し検討されてもよいかもしれませんね。

弊社「花葬儀」では、ご自宅に祭壇をお作りする「自宅葬」はもちろん、介護施設での葬儀プランもご用意しており、多数の実績を持っております。どんな小さなことでもかまいません。葬儀でご心配なこと、気になることがありましたら、ぜひお問い合わせください。みなさまのご希望に寄り添ったご葬儀ができるよう、全力でお手伝いさせていただきます。

参考文献
病床削減で恒例の医療難民が多発するリスクが!医療費用を抑える地域医療構想には課題が山積 超高齢社会の「イマ」を追う!ニッポンの介護学 2019年1月15日
病床を減らそうとしているらしいけど、なぜ? ニッセイ基礎研究所 2019年1月17日
病床・保健所を削減しまくってきた理由と今後のあり方 Yahoo!ニュース 2020年8月10日

◎花葬儀は「100人いれば100通りのお葬式」をコンセプトに、完全オーダーメイドの花祭壇をお作りする葬儀社です。フラワーデザイナーが故人様の生前のお人柄を「花」で表現し、葬儀コーディネーターと共に唯一無二のお別れの時間をご提案いたします。大切な方へのこれまでの感謝の思いを花祭壇で届けませんか?ぜひお気軽にお問合せください。

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