エンゼルケアとは何?家族が知っておきたい目的・方法・費用を解説
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
近年、「エンゼルケア」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、「エンゼルケアとは何か」「どのようなケアが行われるのか」「家族も参加できるのか」などと疑問を抱く方も多いでしょう。
そこで今回は、エンゼルケアの目的、具体的な手順、実施される場所ごとの違い、費用の目安を解説します。ご家族が知っておくべき注意点もご紹介しますので、エンゼルケアに関心のある方、大切な人と後悔のないお別れをしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
1.エンゼルケアとは何?
エンゼルケアは、どのような目的で行われるのでしょうか。エンゼルケアの意味や行われる理由を解説します。
エンゼルケアの意味
エンゼルケアには法的または医療的に定められた正式な定義は存在しません。一般的には、亡くなった方のお身体を清潔で安らかな状態に整え、尊厳を保ちながら最後の時を迎えるためのケア全般を指します。
エンゼルケアは、主に専門的な知識を持つスタッフによって行われますが、ご家族が一緒に立ち会ったり、一部のケアに参加したりすることも可能です。
エンゼルケアが行われる理由
エンゼルケアは、主に以下の3つの理由から行われます。
- ●故人の尊厳を守る
- エンゼルケアは、故人様のお身体を清潔で整った状態に保ち、自然で穏やかな表情に整えます。これにより、最後までその人らしさを大切にできます。
- ●ご家族のグリーフケア
- 清潔で整えられた故人様の姿を目にすることで、ご家族は亡くなった現実を受け入れやすくなり、気持ちを整理するきっかけにもなります。
- ●衛生環境を整える
- 故人様のお身体を清潔に保つことも、エンゼルケアの目的です。医療器具の取り外しや消毒を適切に行い、施設内外での衛生環境を整えることで、ご家族が安心して触れたり、心ゆくまで寄り添ったりできるようにします。
エンゼルケアが行われるタイミング
エンゼルケアは、逝去後、できるだけ早く始めるのが一般的です。早めに行うことで、故人様の清潔さや自然な姿を維持しやすくなります。医療機関では通常、医師の死亡確認後に速やかに行われます。介護施設や自宅で亡くなられた場合も、早めの対応が望ましいです。
2.エンゼルケアと湯かん・エンバーミングの違い
エンゼルケアのほかにも、「湯かん」や「エンバーミング」などのケア方法を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
湯かんとエンバーミングについて、エンゼルケアとの違いとともにご説明します。
湯かんとは
湯かんは、故人様を温水で洗い清める儀式で、納棺に際して行われる日本の葬送文化の一つです。主に葬儀社が実施し、故人様を優しくお湯で清め、髪を洗い、清潔で安らかな姿に整えます。
エンゼルケアが主に医療従事者による死後処置であるのに対し、湯かんは儀式的な意味合いが強い点が特徴です。
エンバーミングとは
エンバーミングとは、亡くなった方を長期間保存するための防腐処置で、専門のエンバーマーが専用の施設で実施します。血液を防腐液に置き換えて腐敗を防ぐため、数週間~数ヵ月間程度、故人様を清潔な状態で保てます。
一般的なエンゼルケアとは異なり、長期間お別れを待つ必要がある場合などに選ばれるケアで、医療的な技術が必要とされます。
3.エンゼルケアの手順
エンゼルケアとは、具体的には何を行うのでしょうか。一般的な手順をわかりやすく解説します。
1.医療器具の取り外し
エンゼルケアは、まず点滴やチューブ、人工呼吸器などの医療器具の取り外しから開始されます。安全面を考慮し、医療スタッフが担当することが多いです。ペースメーカーや人工肛門がある場合も、専門のスタッフが対応し、適切に処理を行います。
2.清拭(せいしき)
清拭は、故人様の清潔さを保つために行う重要なケアです。清拭用のタオルやアルコール綿などを使用し、顔、手、足、体全体を優しく拭き取ります。
3.口や鼻、耳、目のケア
故人様の安らかなお顔を保つため、目、口、鼻、耳といったお顔周りのケアも行われます。目や口を閉じさせていただくなど、穏やかな表情に整えます。また、鼻や耳の周りは優しく拭き清め、清潔な状態を保つための処置をいたします。
4.着替えと整え
体を清潔に保つため、新しい衣服に着替えさせます。病院で亡くなった場合は、着脱しやすく処置がしやすいよう、病院が用意した浴衣に着替えることが一般的です。自宅や介護施設で亡くなった場合は、ご家族が衣服を用意することもあります。
なお、エンゼルケアにおいて故人様にお着せする衣服は、あくまで一時的なものです。納棺の際に、あらためてご家族の望まれる服に着替えることも多くあります。
5.整容(せいよう)
整容は、故人様の表情や髪型を整え、自然で穏やかな姿にするケアです。髪はコームで整え、必要に応じてヘアオイルを使用します。
6.メイク(ラストメイク)
故人様の表情を穏やかにするため、自然なメイクを施します。ファンデーションで肌色を整える、リップクリームで唇に潤いを与えるなどにより、自然な表情を再現します。納棺時に、あらためて納棺師や葬儀社スタッフが、より専門的に行う場合もあります。
4.エンゼルケアの依頼先ごとの特徴
エンゼルケアは、依頼先や行う場所によって、担当する人や内容が異なります。こちらでは、それぞれの特徴を解説します。
病院
主に看護師が担当し、病院の規定に従って進められます。医師が死亡確認を行った後、医療器具の取り外しや清拭、整容が迅速に行われます。感染予防のため、ご家族の立ち会いが制限される場合もあります。
基本的な処置のみしか対応していない病院もあり、すべての病院が包括的なケアを実施しているわけではないため、対応の可否やケアの内容を確認しましょう。
介護施設
介護施設におけるエンゼルケアは、看護師または介護士が担当し、施設の方針に従って実施されます。ケアの具体的な内容は施設ごとに異なりますが、ご家族の立ち会いが比較的自由に認められ、髪を整えたり、顔を優しく拭いたりなど、簡単なケアに参加できることも多いようです。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションへ連絡し、訪問看護師にエンゼルケアを行ってもらうことも可能です。ラストメイクなど、専門的なケアには対応できないこともあるため、葬儀社に依頼することが多いようです。
葬儀社
ご自宅でのエンゼルケアを希望する場合や、病院や施設で一部のエンゼルケアを実施していない場合は、葬儀社に依頼するのが一般的です。葬儀社の専門スタッフが、清拭や整容、ラストメイクを行います。
なお、エンゼルケアは衛生面にも配慮しながら行う必要があり、専門知識が必要であるため、ご家族がご自身で行いたい場合には、事前に病院や葬儀社等の専門家に相談し、サポートを受けることをおすすめします。
5.エンゼルケアの費用の目安
エンゼルケアは、いくらかかるのか料金も気になるところです。依頼先ごとの費用の目安を解説します。
- ・病院:5,000円〜2万円程度(医療機関によっては無料の場合もあり)
- ・介護施設:1万円~5万円
- ・訪問看護ステーション:1万円〜2万円
- ・葬儀社の場合:5万円〜10万円
エンゼルケアは病院で行う場合であっても、医療保険や介護保険の適用はなく、費用は基本的に自己負担となります。
病院などでのエンゼルケアは、主に医療処置と簡易的な清拭・整容が中心のため、比較的安価となるケースが多いようです。葬儀社では、基本的な処置に加え、専門スタッフによるラストメイクなど、より本格的なケアが提供されるため、病院などよりも高額になる傾向があります。
エンゼルケアの費用は、依頼先や実施内容によって大きく異なるため、各依頼先としっかり相談し、故人様やご家族の希望や予算に合わせたケアを選びましょう。
6.家族がエンゼルケアに参加する際の心得
エンゼルケアに、ご家族が参加することは可能なのでしょうか。エンゼルケアに参加する意義や、参加を希望する際の心得を解説します。
家族が参加する意義
エンゼルケアにご家族が参加することには、心の整理や安らぎなどにつながる重要な意味があります。立ち会うのはもちろん、故人様の髪を整えたり、顔を優しく拭いたりすることで、感謝の気持ちを伝えることもできるでしょう。
参加前に確認しておくべきこと
エンゼルケアにご家族が参加を希望する際は、事前に確認すべき点があります。立ち会いが可能かどうか、どの段階のケアにご家族が関わることができるのかなどについて、施設や葬儀社に確認しておくことが大切です。
無理に参加しないという選択もある
エンゼルケアは、ご家族全員が必ず参加しなければならないわけではありません。心の整理がつかない場合や、体調に不安がある場合は、無理に参加しない選択もできます。参加を希望しないご家族がいるときは、意向を尊重して無理強いをしないようにしましょう。
7.エンゼルケア後、穏やかな時間を過ごすために
エンゼルケアを終えた後、ご家族は葬儀に向けた準備を進めていくことになります。エンゼルケア後は、故人様を速やかに適切な場所に移し、安置します。
病院や施設から安置場所へ故人様を搬送する場合は、葬儀社に依頼し、専用の車両で安全に移動させます。ご自宅で安置する場合は、通気性の良い部屋を選び、お部屋を涼しく保っていただくことが基本です。葬儀社は、安置中の故人様についても、専門的なアドバイスとサポートを提供します。
時間が経過すると、故人様の体温が下がったり、お肌が乾燥したりといった変化が見られることがあります。もし、故人様のお姿を見て何かご不安なこと、気になることがございましたら、些細なことでも一人で抱え込まずに、いつでも葬儀スタッフにご相談ください。
8.エンゼルケアで後悔しないためのポイント
エンゼルケアは、事前の準備を怠ると心残りを感じてしまうこともあります。最後に、エンゼルケアで後悔しないためのポイントをご紹介します。
エンゼルケアの内容と希望を事前に確認する
エンゼルケアで行われる内容は、施設や葬儀社によって実施内容が異なるため、事前に具体的なケア内容を確認し、ご家族の希望を明確にしておくことが大切です。
清拭や整容のみか、ラストメイクも希望するのか、ご家族が立ち会うのかなど、ご家族の希望を整理して施設や葬儀社に伝え、確認と相談を繰り返しながら進めることが、後悔のない選択につながります。
費用と追加オプションの確認
エンゼルケアには基本料金が設定されていますが、希望するケア内容によって費用が変動する場合があります。たとえば、ラストメイクは追加オプションとして別途料金がかかるケースが多いです。夜間や早朝に依頼する場合は、追加料金が発生することがあります。
あらかじめ見積もりを依頼し、基本料金に含まれるケアと追加料金が発生するサービスを明確にすることで、予想外の負担を防ぎやすくなるでしょう。
心の準備と家族内での話し合い
エンゼルケアへの立ち会いや参加は、故人様との別れを実感する時間となり、特に親密な関係であった場合には、悲しみが一層深まることもあります。ご家族で話し合い、誰が立ち会うかを確認し、事前に心の準備を整えておくことが重要です。
9.花葬儀のラストメイク|故人様の尊厳を大切にした最後のケア
故人様の生前の面影を最大限に引き出し、安らかなお顔でのお別れを叶えるラストメイクは、葬儀社の得意とするところです。弊社「花葬儀」では、納棺前に行うラストメイクに特に力を入れています。
こちらでは、花葬儀のラストメイクについてご紹介します。
男性の場合
清潔感を大切に、ひげを整え、髪型を整えることに重点を置きます。ひげは、ご家族に「いつも剃っていたか」「自然なままが良いか」を確認して対応します。運気が良いとされる「宝毛」は抜かずにそのまま残すよう注意します。
女性の場合
生前の姿の再現を重視しています。ご家族に「普段お使いだった化粧品は?」「口紅の色は?」などと確認しながら、故人様の雰囲気に合わせたメイクを施します。ラストネイルを施すことも多いです。
お子様の場合
お子様へのエンゼルケアは、特に慎重かつ繊細な配慮が必要です。化粧は基本的に控え、唇の色が悪い場合はほんの少し口紅を加える程度にとどめます。ケアをお母様ご自身にお願いすることも多く、最期に子どもに触れることで安心される方もいらっしゃいます。
10代後半~20代の若者の場合
若い方では、もともとの肌のつややかさを生かし、厚化粧は避けて仕上げます。ご家族に普段のスタイルを確認しながら、自然な印象を保つことを重視し、無理に派手なメイクを施すことはありません。
全体的な仕上げ
年齢や状態に合わせ、以下の手順で仕上げを行います。
- ・肌を保湿し、ファンデーションを薄く塗布
- ・必要に応じてコンシーラーを使用し、肌を整える
- ・フェイスパウダーで仕上げ、頬に軽くチークで血色を追加
- ・口紅を塗り、眉を自然に整える
- ・肌の色味は複数の化粧品を使用し、個々の肌に合わせて調整
花葬儀がラストメイクで大切にしているのは、「こちらに全てお任せください」という姿勢ではなく、ご遺族の意向を丁寧に伺いながら行うことです。故人様の「いつもの姿」を再現し、ご家族が安心してお別れできるよう心を込めてラストメイクを行います。
花葬儀が納棺前に行う儀式については、「納棺の儀」のページにて詳細をご覧いただけますので、あわせてご覧ください。
10.エンゼルケアとは何かに関するQ&A
A.エンゼルケアにご家族が立ち会うことができるかどうかは、状況によって異なります。
病院や介護施設では、感染予防や衛生管理の観点からご家族の立ち会いを制限する場合があります。感染の心配が無い場合は、簡単なケアにご家族が参加することも可能です。エンゼルケアの依頼先に確認し、立ち会いの可否や参加できるケアの範囲を確認しておきましょう。
A.基本的な処置のみの場合、30分~1時間程度であることが多いようですが、ケア内容により前後します。
特殊な処置、家族の立ち会いや参加がある場合は、1時間を超えることもあります。利用者の状態や、ご家族の希望されるサービスによっては、さらに時間がかかるケースもあります。
A.エンゼルケアはその全てが法的に義務付けられているわけではありませんが、最低限必要な処置は、通常行われます。
医療器具を外したり、お体を衛生的に保ったりするための最低限の処置は、ほとんどの場合行われます。その上で、お体を丁寧に清めたり、お着替えやメイクを施したりといった、故人様のお姿をより安らかに整えるための丁寧なケアを行うかどうかは、ご家族の希望によってお選びいただけます。
どこまでのケアをしてあげたいかご家族で話し合い、希望に基づいて判断しましょう。
A.はい、エンゼルケアは自宅でも行うことが可能です。
ご自宅でエンゼルケアを希望する場合は、ケアの内容を確認した上で、葬儀をお願いする葬儀社に依頼するとスムーズです。
訪問看護師に依頼することもできますが、ケアの範囲は事業所や地域によって異なるため、事前に訪問看護ステーションに確認しましょう。
A.ご家族だけで行うことは可能ですが、葬儀社や訪問看護師など専門家に依頼することをおすすめします。
エンゼルケアには、専門知識と衛生管理が必要です。ご家族だけで行おうとすると、かえって故人様を傷つけてしまわないか、というご心配や、精神的なご負担が大きくなるかもしれません。
そのため、まずは葬儀社のスタッフなど専門家にご相談いただき、「どこまでを専門家に任せ、どの部分でご家族が参加するか」を一緒に考えることをおすすめします。
11.エンゼルケアとは何かを理解して後悔のないお見送りをしましょう
大切な人とのお別れは、一度きりです。だからこそ、エンゼルケアが何かを理解し、ご家族が望む形で故人様を穏やかに見送ることが、後悔のないお別れにつながります。
エンゼルケアの内容や手順は施設や葬儀社によって異なります。「これでよかった」と安心できる選択をするためにも、事前に依頼先とよく相談し、ご家族が納得したうえで準備を進めましょう。
エンゼルケアの内容や手続きに迷っている方、進め方に不安のある方は、花葬儀の事前相談までご連絡ください。経験豊富なスタッフがご家族の希望に寄り添いながら、最適なエンゼルケアとお見送りの方法をご提案いたします。