湯かんは必要?「メイクだけ」と迷った末に行うことにした理由
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】

ご家族の葬儀に際して初めて「湯かん」という言葉を聞き、「本当に必要な儀式なのか」「湯かんを行うべきかどうか迷う」とお悩みではありませんか。
湯かんとは、専門の納棺師が故人様のお身体を温水で洗い清める儀式です。お身体を清潔にするだけでなく、生前の苦しみや悩みからの解放を願う精神的な意味合いも込められています。しかし、普段から話題に上る言葉ではないため、悲しみの中で急な決断を迫られる方も少なくありません。
実際に湯かんを行ったご家族は、どのような思いで依頼を決め、どのように感じたのでしょうか。
この記事では、実際に花葬儀で湯かんと葬儀を行ったK.K様(50代・娘様)に、実施を決めるまでの経緯や、湯かんに立ち会った感想を伺いました。大切な方のお見送りに湯かんを取り入れるか、迷われている方の参考になれば幸いです。
1.初めて聞いた「湯かん」の提案に、すぐには決められなかった

K様がお母様の葬儀の詳細を考えたのは、長らく入院されていたお母様が亡くなられてからのことだったと言います。
「容態が良くないのはわかっていたので、少しでも『万が一のこと』を考えておけばよかったのですが、病気の母と向き合うのに精一杯で、葬儀については考えられていませんでした」と、K様は振り返ります。
一人っ子であるK様が喪主を務めることになったものの、ご夫婦ともに葬儀を取り仕切った経験はありませんでした。
通夜や葬儀の日程、会場などを決めていく打ち合わせの中で、花葬儀のメモリアルコンサルタントが紹介したのが「湯かん」でした。K様は「これは本当に必要な儀式なのだろうか」と迷い、すぐには答えを出せなかったそうです。
2.心によぎった4つの迷い。本当に必要か、母の顔を見ながら迷った
K様の心は、どのようなことから揺れていたのでしょうか。お話を伺うと、背景には次のような迷いがあったそうです。
一般的なものなのか?他の家族もしている?
「故人をお風呂に入れると聞いて、そんなことができるのかと最初は驚きました」
K様は、初めて湯かんを知ったときの心境を、そのように振り返ります。
「父はすでに他界しており、葬儀も行いましたが、その際は母や叔父が中心となって準備してくれて、湯かんのような儀式は行いませんでした。親戚の葬儀にも何回か参列しましたが、恥ずかしながら湯かんについて、知る機会がありませんでした」
葬儀に関する用語や慣習は、実際に直面して初めて知るものも多いため、K様のようなケースは珍しくありません。
湯かんは葬儀において必ずしも行わなければならない儀式ではありませんが、多くのご家族に選ばれているお見送りのひとつです。近年では、2008年公開の映画「おくりびと」で湯かんを知ったという方も多くいらっしゃいます。
メイクだけとどう違う?違いがよくわからない
お母様は病院で酸素マスクをつけたまま亡くなられたため、K様は「安らかな表情になるようにしてほしい」と希望していました。メモリアルコンサルタントからは湯かんのほか、納棺師がお肌を整え、生前のようなお顔になるようお化粧を施す「ラストメイク」についても案内があったといいます。
K様は、「表情を整えたり、髪を整えたりはラストメイクでしていただけると聞いたので、それならメイクだけでよいのではないか、とも思いました。『湯かんを行うと、メイクだけとどう違ってくるんだろう』という疑問もあって、すぐには決められませんでした」と、当時の迷いを語りました。
「簡素に送ってほしい」と言っていた母の遺志に反しないか
お母様が生前に残した言葉も、K様の決断を難しくしていました。お母様は生前、「葬儀は派手にしなくていいからね。簡単にしてね」とおっしゃっていたそうです。
「私たちを気遣って、そう言ってくれたのだと思います。だから、浴槽で行う湯かんは大げさではないか、母の意に反してしまうのではないかと気がかりでした。行わない場合に比べて費用がかかる点も、少し迷った理由です」とK様は振り返ります。
「肌が見えてしまうのでは」と抵抗感もあった
プライバシーの面でも、抵抗感があったとK様はおっしゃっています。
「身体を洗ったり、着替えをすると聞いたので、『参加者に肌を見られることを母が嫌がるのではないか』と心配でした」
通常の入浴とどう異なるのか、K様ははじめ、イメージが湧かなかったと言います。メモリアルコンサルタントからは、「故人様の肌が露わになることのないよう、常にタオルやついたてを用い、故人様・ご遺族に最大限配慮して進める」と説明がありました。
「湯かんの説明の動画も見せていただき、普通のお風呂とは違う、厳かな儀式なのだとわかりました」
動画を通じて肌への配慮が丁寧になされていることがわかり、不安が和らいだとK様はおっしゃっていました。
3.迷った末、湯かんをすることにした理由

さまざまな点を考慮し迷われたK様ですが、最終的には、安置していたお母様のご自宅で湯かんを行うことを決断されました。その背景には、どのような葛藤や流れがあったのでしょうか。
長期入院で湯船に浸かれなかった母を、最後にさっぱりさせてあげたい
お母様は長らく病院で過ごされており、ご自宅に帰ることを願いながらも、叶わなかったと言います。メモリアルコンサルタントとの打ち合わせでお母様との思い出を語るうち、K様の頭にふと浮かんだのは、かつての何気ない日々のことでした。
「一緒に暮らしていたときは、家族のために毎日欠かさずお風呂掃除をして、お湯を張ってくれました。『お湯に浸かった方が疲れが取れるよ』と、幼い私によく言い聞かせてくれました」
入院により、当たり前のように大切にしていた「お風呂の時間」が叶わなくなっていたお母様のことを考えると、「最後にお風呂でさっぱりさせてあげたい」との想いが込み上げてきたと、K様は振り返ります。
温泉が好きだった母の、元気な頃の笑顔を思い出した
さらにK様は、お母様が温泉が好きだったことにも思い至りました。K様が結婚される前はよくご家族で旅行に行き、温泉にも立ち寄っていたそうです。
「伊豆の旅館など、よく2人で温泉へ足を運んだものでした。孫が生まれてからも一緒に出かけ、入院中も『元気になったら、また伊豆に行こうね』と話していたんです。『大きくなった娘や孫と温泉に行くのが若い頃からの夢だったのよ』と話していました」
あらためて、生前のお母様の言葉を思い出したK様。「好きだった温泉の代わりに、温かいお湯で身体を洗ってもらえたら、母も喜んでくれるのではないか」と考えたと言います。
最後に親孝行したい、後悔したくない
「小さい頃は私のために、服を作ってくれたり、駅まで送迎してくれたりと、たくさんの愛情を注いでくれました。母のために、私も最後できることがあればやってあげたい」
そうした想いも、K様の背中を押しました。メモリアルコンサルタントから「湯かんは、ご家族が直接故人様に触れ、自分たちの手で旅立ちの支度を整えてあげる機会」と聞いたのも、決め手の一つになったそうです。
「亡くなる前に、一度でいいから自宅ですごさせてあげたかった。それは本当に心残りでした。だから、せめて最後は悔いを残したくなかったんです」
K様はそのようにお話しくださいました。
4.湯かんが始まり、別れの覚悟が整っていった
湯かんは、お通夜の日の午後、故人様のご自宅で行うことになりました。ここからは、K様が立ち会った湯かんの様子を、K様自身の言葉でたどっていきましょう。
湯かんが始まると、その場の空気が静かに変わっていった
湯かんには、私たち夫婦とともに、母の兄である叔父夫婦が同席してくれました。私たち夫婦は堅苦しくなり過ぎたくなかったので、喪服ではなく、普段着で立ち会いました。
時間になると、2名の納棺師の方が訪問され、上品な所作で手際よく、人1人が横たわれるほどの大きな浴槽をリビングに運び込みました。
浴槽に張られたネットの上に、母がそっと寝かせられます。納棺師の方々は、一つひとつの動作を丁寧に確認するように進めていかれました。リビングの空気が少しずつ厳かなものへと変わっていき、私たちも心が鎮まっていくのを感じました。
横たわる母にタオルがかけられ、湯かんの儀が始まる
シャワーなどは服を脱がせないといけないため、どのようになるのだろうと心配しておりましたが、首から足先まですっぽり隠れるくらいの大判のタオルで覆い、その下で服を脱がせてくれました。
「これより湯かんの儀を始めさせていただきます」
その言葉とともに、湯かんが始まりました。納棺師の方に誘導いただき、喪主である私から順番に、足から胸元へと、タオルの上から柄杓でお湯をかけていきます。
足元からお湯がかけられ、泡で丁寧に清められていく
納棺師の方がボディソープを泡立て、仏教の作法にならい、足元から素手で丁寧に母を洗ってくださいました。お二人は息ぴったりに、私たちには見えないように、タオルの下で汚れを落としてくださいました。
足や手の指一本一本から爪の先まで念入りに洗ってくださり、温かいものが胸にこみ上げてきました。正直、これほど心を込めて対応していただけるとは思っていませんでした。
ここで、思わぬサプライズがありました。葬儀の打ち合わせで「母とよく伊豆の温泉に行った」と話したことをスタッフの方が覚えていてくださり、なんと、わざわざその温泉のお湯を取り寄せてくれていたのです。
「このお湯で、お母様の手を拭いてあげましょう」
納棺師の方に促され、お湯が張られた手桶に近づくと、懐かしい温泉の香りがしました。露天風呂から母と一緒に眺めた景色が思い起こされ、思わず目頭が熱くなりました。
「お手伝いされますか?」自分も母の髪を洗い、顔を拭いてあげる
湯かんでは、お気に入りのシャンプーを使えるとも聞いていたので、母が病院でも愛用していたシャンプーを用意していました。
納棺師の方が丁寧にシャンプーを泡立て、母の髪を洗ってくださっている時のことです。「よろしければ、K様も髪を洗われますか?」と、優しく声をかけてくださいました。私はサポートを受けながら、自分の手で母の髪を洗うことにしました。
柔らかな泡越しに母の髪へ触れていると、幼い頃に母が私の髪を洗ってくれた記憶が自然とよみがえってきます。それと同時に、これまで伝えきれなかった感謝の気持ちも、胸の奥から込み上げてきました。
叔母は立ち座りの負担が大きかったため、シャンプーすることは見送りましたが、納棺師の方々は、無理に参加をすすめることはありませんでした。それぞれの家族のペースに合わせて、どこまで参加するかを自然に選ばせてくれたのも、とてもありがたかったです。
「お疲れ様」と、思わず言葉がこぼれた
洗顔・顔そりや爪切りもしてもらい、しっかりと身体を拭き上げられた母に、乾いたタオルがかけられます。心なしか気持ちよさそうに見え、「お疲れ様」という言葉が自然と口からこぼれました。
病気による痛みで、思うように身体を動かせなかったこと。それでも、お見舞いに行くたびに私を心配させまいと、明るく振る舞ってくれていたこと。長年の苦労を思い、ただただ母を労りたいという気持ちで、胸がいっぱいになりました。
メイクをしてもらい、元気だったころの母に戻った気がした
「お気に入りの着物や衣装があれば、お着せすることができますよ」とご提案いただいていたので、母が大切にしていた着物を準備しました。
着付けが終わると、納棺師の方がメイクを施してくれます。メイク道具も愛用品を使えるとのことだったので、母がいつも使っていた口紅をお渡ししました。
容態が悪くなってからは口紅を塗る余裕もなかった母でしたが、お気に入りの着物を着て、綺麗に口紅を塗ってもらった姿は、まるでお出かけ前におめかししたようでした。元気だった頃の母にまた会えたようで、「よかったね」と、思わず笑みがこぼれました。
自宅で浴槽を使うと聞いたときは少し驚きもありましたが、当日は納棺師の方々が設置から片付けまで丁寧に対応してくださいました。部屋が汚れたり水が飛び散ったりすることもなく、安心して母を見送ることができました。
5.湯かんが教えてくれた、「故人と向き合う時間」の大切さ

「湯かんは本当に必要なのか」と悩みながらも、決断して実際に儀式に立ち会われたK様。ご自身の手でお母様のお世話をされ、あらためてお母様としっかりと向き合うことができたと言います。
ここからは、湯かんの時間を通じてK様が感じたことや、今も胸に残っている想いを伺っていきます。
母の体に触れ、自分の手でお世話をしてあげられた
母が亡くなってから湯かんまでの間にも、母の手を握ったり、顔に触れたりすることはありましたが、湯かんではまた違う形で母に触れることができました。
シャンプーを泡立て、母の髪を洗ってあげる。その動作を通して、「母の旅支度を手伝っているのだ」という実感が、少しずつ胸に広がっていきました。
最後にゆっくり母のお世話をすることができた
母が亡くなった後は、決めなければならないことが山のようにあり、悲しみに沈む間もありませんでした。けれど湯かんの時間は、急かされることなく、母のそばにいることができました。
納棺師の方々が丁寧に母を清めてくださる様子を見ていると、そこだけ時間がゆっくりと流れているように感じました。穏やかな空気の中で、ようやく「母がいなくなってしまう」と、悲しみを実感できたような気がします。
家族で思い出を語り合い、温かな時間を過ごせた
納棺師の方が母に着物を着付けてくださったとき、叔父が「姉さん、昔はよくこの着物着ていたね」と言ったんです。そこから、母が好きだった歌や、母の得意料理だった巻き寿司の話など、思い出話が次々と広がっていきました。
悲しさはもちろんありましたが、母の思い出を語り合いながら、みんなの表情がやわらいでいました。
最後にできる限りのことをしてあげられて、気持ちが少し整理できた
生前、母にはしてあげたかったのに、できなかったことがいくつもありました。「もっとたくさん会いに行けばよかった」「もっと話を聞いてあげればよかった」と、あとからはいくらでも思いつくんです。
後悔が全部なくなるわけではありませんが、湯かんをしたことで、気持ちが少し整理できた気がします。悩む時間もまた、母のことを思い出し、自分の心に問いかける大切な時間になりました。
参列者からの「きれいだね」の言葉に、救われたような気がした
葬儀では、参列してくれた母の知人たちが棺に立ち寄り、「きれいだね」「安らかなお顔ね」と声をかけてくださいました。
湯かんの後、メイクをしていただいて横たわる母は、娘の私が言うのも変ですが、本当にきれいだったので、そんな母を見ていただくことができ、嬉しい気持ちでいっぱいでした。おかげで孫たちも怖がることなく、母の顔に触れお別れをすることができました。
湯かんを通じて、母のために、そして自分のためにも、大切な最期の記憶を残すことができました。母もきっと「よかったよ」と言ってくれていると思います。
6.湯かんはご自宅でも行うことができます
湯かんは葬儀会館や安置施設で行うだけでなく、ご自宅で行うことも可能です。ご自宅で行う場合は、納棺師が専用の浴槽や必要な道具を持参し、設置から片付けまで対応します。
ただ、ご自宅(マンションを含む)での湯かんを希望された場合、湯かんには事前準備や環境確認が必要となるため、対応の可否はその状況や葬儀社によって異なります。
実際に花葬儀でお父様をお見送りされた別のご家族も、当初は自宅での湯かんを強く希望し、4、5社の葬儀社に相談をされました。しかし、どの葬儀社からも前向きな返答は得られなかったと言います 。そんな中、花葬儀だけが「できます」と即答したことで、私たちにお任せくださることになりました。
<お客様インタビュー>孫たちにそばで見送ってもらい、父も喜んでいるでしょう。
https://www.hana-sougi.com/interview/48/
花葬儀では、湯かんを単なる「お身体を綺麗にする作業」ではなく、「ご家族が故人様とゆっくり向き合い、お別れの心を整えるための大切な時間」として位置づけています。 ご自宅でのお見送りを希望される場合も含め、ご家族の想いに寄り添いながら、一つひとつ丁寧にご案内しています。
7.湯かんが必要か、迷ったら花葬儀までご相談ください

湯かんは、葬儀において必ずしも行わなければならない儀式ではありません。しかし、「やってよかった」「心が救われた」とおっしゃる方が多いのも事実です。
「お風呂が好きだったから」「最後に自分の手で何かをしてあげたかったから」など、湯かんをされる理由はご家族によってさまざまです。大切なのは、残されたご家族がどう見送ってあげたいか、そして故人様がどのようなお人柄だったかを、あらためて思い返し、無理のない形を考えることではないでしょうか。
もし「うちの場合はどうだろうか」「少し気になるけれど踏み切れない」と迷われることがあれば、ぜひ花葬儀にご相談ください。私たちは、故人様を美しい状態でお見送りすることが、記憶に残る温かいお別れにつながると考えています。ご事情やお気持ちを伺ったうえで、後悔のないお見送りの形を一緒に考えてまいります。
湯かんの具体的な手順や流れについては、「湯かん」のページでご案内しておりますので、あわせてご覧ください。











