献杯の挨拶の注意点を解説|乾杯との違いやマナー、立場別の文例
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- 【 葬儀・葬式のマナー 】
葬儀の場で献杯の挨拶を依頼された際、「乾杯とどう違うのだろう」「どのような挨拶をすれば失礼にあたらないか」と、戸惑う方は少なくありません。故人様とご遺族に失礼のないよう、注意点を事前にしっかり理解しておくことが大切です。
そこで今回は、献杯と乾杯の違いから、葬儀で挨拶するときの注意点を解説します。気をつけたいマナーや、立場別の文例もご紹介いたしますので、葬儀を控えた喪主様や、献杯の挨拶を依頼された方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
1.乾杯と献杯の違いと注意点
乾杯と献杯は、似た行為でありながら意味や目的が大きく異なります。まずは多くの方に馴染みのある「乾杯」の意味をおさらいし、それと比較しながら「献杯」について詳しく解説します。
乾杯とは
「乾杯(かんぱい)」は、祝いの席や喜びを分かち合う場面で、参加者全員が杯を掲げて祝意を表す行為を指します。代表者の「乾杯」の発声に続いて、参加者が「乾杯」と唱和しながら杯を掲げて共に喜びを分かち合います。
場の一体感を高め、喜びや親睦を深める目的で行われ、参加者同士がグラスを合わせることも一般的です。結婚式や新年会、歓送迎会などでよく行われます。
献杯とは
一方、「献杯(けんぱい)」は、葬儀や法要といったお悔やみの席で、故人様や神仏に対して敬意や祈りを捧げるために、静かに杯を掲げる行為です。代表者が「献杯」と一言発し、続いて参加者が「献杯」と静かに唱和しながら杯を掲げます。
乾杯とは異なり、グラスを合わせたり、大声で発声したりすることは避けます。この点が、最も注意すべき点だと言えるでしょう。
2.献杯の挨拶を行う場面と一般的な流れ
献杯の挨拶は、いつ行われるのでしょうか。献杯の挨拶をする代表的な場面や、挨拶から献杯に至る流れを解説します。
献杯の挨拶はいつ行うのか
一般的に献杯の挨拶は、通夜や葬儀、法要の後に行われる会食の開始前に行います。献杯の挨拶が行われる代表的な場面は以下です。
・通夜後の「通夜振る舞い」
・葬儀後の「精進落とし」
・法要後の「お斎(おとき)」
献杯は、故人様に対してお酒などの飲み物を捧げ、敬意や感謝の気持ちを表す行為であるため、親しい友人同士が集まって故人様をしのぶ際にも行われます。「通夜振る舞いにおける献杯」や「精進落としで行う挨拶」については、別の記事で詳しくご紹介しております。ぜひ、そちらをご覧ください。
挨拶から献杯までの流れ
献杯の挨拶をスムーズに行うには、会食全体の流れを理解しておくことが大切です。挨拶のタイミングや手順が明確にわかるよう、以下に一般的な流れをご紹介します。
1.会食会場に参列者が移動し、全員が着席する
2.飲み物が全員に行き渡るように配られる
3.指定された方が立ち上がり、挨拶を行う
4.挨拶の締めくくりに「献杯」と発声する
5.全員が杯を胸の高さに掲げ、静かに「献杯」と唱和し、グラスに口をつける
6.黙とう、または合掌
7.代表者の「どうぞお召し上がりください」などの言葉で会食が開始される
流れやマナーは、地域や宗派によって細かな作法が異なる場合もあるため、注意しましょう。特に黙とうや合掌は、どちらを先に行うか、あるいは行わないかといった違いが見られますので、当日の進行や周囲の状況に合わせて対応するとよいでしょう。
3.葬儀での献杯の挨拶は誰が行う?
葬儀での献杯の挨拶を誰が行うかに明確な決まりはありません。喪主様やご遺族が、故人様との関係性などを考慮して、適任者にお願いするのが一般的です。ここでは、どのような方が挨拶を行うことが多いのか、一般的なケースをご紹介します。
喪主が行う場合
献杯の挨拶を喪主様が務めるケースもあります。特に家族葬や小規模な葬儀では、喪主様が会食の開始前に参列者への感謝の意を述べ、そのまま献杯の音頭を取ることもあります。
親族代表が行う場合
喪主様の負担を軽減したい場合や、故人様との関係性から、ご親族の代表者が献杯の挨拶を行うこともあります。故人様の兄弟姉妹や長男・長女など、故人様と関係の深いご親族が行う場合が多いです。
会社関係者が行う場合
故人様の会社関係者が、献杯の挨拶を行うケースも見られます。特に、故人様が社会的に活躍していた場合や、葬儀に職場の参列者が多い場合は、会社の上司や同僚が挨拶を担当することもあります。
4.献杯の挨拶で気をつけたい4つの注意点
献杯の挨拶は、参列者と共に故人様をしのぶ大切な時間です。こちらでは、献杯の挨拶で特に気をつけたい4つの注意点を解説します。
1.挨拶は2〜3分で簡潔に
献杯の挨拶は、会食の開始前に行われるため、参列者を長く待たせないよう2〜3分程度を目安に簡潔にまとめます。故人様をしのぶ気持ちは大切ですが、他の参列者への配慮を忘れずにあらかじめ話す内容を整理し、要点を絞って話しましょう。
2.故人との関係性を明確にする
最初に、故人様との関係性を明確に述べることが大切です。「〇〇会社の同僚の△△です」「故人の甥の□□です」といったように、参列者が故人様と挨拶者との関係性を理解できるように冒頭で簡潔に述べます。
3.忌み言葉・重ね言葉を避ける
不幸や不吉なことを連想させる「忌み言葉」を避けることも、重要な注意点です。具体的には、「苦しみ・散る・消える・浮かばれない」などです。また、「重ね重ね・たびたび・またまた」など同じ言葉を繰り返す「重ね言葉」も、不幸が重なることを連想させるため、使いません。
4.静かに杯を掲げるのが作法
献杯の際には、静かに杯を掲げるのが作法です。「献杯」と静かに述べて杯を胸の高さまで持ち上げ、故人様をしのびます。声高に音頭を取ったり、杯を強く打ち合わせたりするのはマナー違反であるため、特に注意が必要です。
5.献杯の挨拶で何を話す?内容の注意点
献杯の挨拶では、何を話したらよいのでしょうか。一般的な献杯の挨拶に含めるべき内容と、それぞれで意識したい注意点をご紹介します。
自己紹介・故人との関係
献杯の挨拶は、自分が誰であるか、故人様とどのような関係にあったかを簡潔に伝えることから始めます。喪主様や式の代表者から紹介を受けた場合であっても、自ら改めて故人様との関係を述べることが大切です。
故人への気持ち・思い
故人様に対する思いを率直に伝えます。悲しみや感謝、尊敬など、故人様への感情を具体的に述べることで、参列者にも気持ちが伝わります。故人様との関係性に応じた感謝や尊敬、愛情の言葉を選びましょう。
故人との思い出・エピソード
故人様との思い出やエピソードを一言添えることで、故人様の人柄をしのぶことができます。たとえば、「○○様はいつも明るく、周囲の人を笑顔にしてくれました」「学生時代に一緒に旅行をしたことが懐かしいです」といった具体的な思い出を交えます。
故人を悼む言葉
挨拶の最後は、故人様を悼む言葉で締めくくります。一般的には「○○様のご冥福をお祈りし、献杯いたします」「故〇〇様をしのび、献杯」などの表現が用いられます。
ただし、浄土真宗では、「亡くなった方はすぐに阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ導かれる」と考えるため、死後の世界でさまようことを前提とした「冥福を祈る」という言い方はしません。神道やキリスト教の式でもこの言葉は使わないため、注意が必要です。
6.葬儀の献杯挨拶の立場別文例
葬儀での献杯の挨拶は、話す方の立場によって内容が異なります。こちらでは、故人様との関係に応じた挨拶の文例をご紹介します。
ご紹介する文例は、どのような宗派でもお使いいただける表現を用いて作成しました。ご自身でエピソードなどを加えてアレンジされる際は、これまでに解説した忌み言葉や、宗派による表現の違いといった注意点にご留意ください。
喪主・親族による挨拶文例
心より感謝申し上げます。
私は喪主を務めさせていただいております、故人の次男(次女)でございます。
皆様の温かいお支えをいただきながら、
故人は生前、幸せな時間を過ごすことができました。
今日もここに集まってくださった皆様に囲まれ、
きっと喜んでいることと存じます。どうか皆様も、
故人のことを心に留め、温かく見守っていただければ幸いです。
それでは故人をしのび、ここに献杯をお願い申し上げます。
みなさまご唱和ください。
献杯。
なお、参列者はすでに喪主様のことを認識しているため、自己紹介は省略されることもあります。
友人・知人による挨拶文例
私は、故○○様とは長年の親交があり、
多くの時間を共に過ごしてまいりました。
○○様は、いつも穏やかで思いやり深く、私たちの支えとなる存在でした。
このたび、突然の別れに言葉が見つかりませんが、
○○様の優しさと思い出は私たちの心に永遠に残ります。
皆様とともに、故人をしのび、ここに献杯いたします。
献杯。
会社関係者による挨拶文例
誠にありがとうございます。
私は、○○様が長年ご勤務されていた
○○株式会社の○○(役職・氏名)でございます。
○○様は常に誠実に職務に取り組み、多くの方々から信頼されておられました。私たち一同、○○様との思い出を胸に、これからも努力してまいります。
皆様とともに、故人をしのび、献杯いたします。
献杯。
7.献杯は乾杯の違いを理解し、注意点を押さえた挨拶を
献杯は、普段よく行う乾杯とは、目的も作法も異なる儀式です。お祝いの席での乾杯とは違い、故人様を悼む厳粛な場で行われるからこそ、献杯の挨拶には、守るべきマナーや細かな注意点が数多く存在します。
献杯の挨拶を任された場合は、本記事で解説したさまざまな注意点を念頭に置き、故人様をしのぶ気持ちを込めた失礼のない挨拶を心がけましょう。
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