お盆にナスとキュウリを飾るのはなぜ?精霊馬の作り方・処分方法を解説!

お盆にナスとキュウリを飾るのはなぜ?

お盆の夏休みシーズンに実家へ帰省すると、ナスやキュウリで作られた置物が仏壇に飾られているのを目にしたことがある方も多いでしょう。そのナスやキュウリの置物は「精霊馬(しょうりょううま)」といわれています。
今回は、精霊馬を飾る理由や作り方、処分方法について解説いたします。

1.お盆で見かける「ナスやキュウリの精霊馬」とは?

お盆で見かける「ナスやキュウリの精霊馬」とは?

お盆の時期になると、日本全国でナスやキュウリの精霊馬が見られるようになります。そこで、ここではお盆の由来や精霊馬の意味をご紹介いたします。「お盆はこうするものだ」とただ何となく言われた通りに飾るのではなく、しっかりと意味を理解して用意すると、その行動に価値を感じられるようになるでしょう。

お盆の由来

お盆とは、祖先の霊を祀り供養する期間のことをいいます。先祖や亡くなった方の霊を1年に1度自宅にお迎えし、一緒に過ごすことで冥福を祈り、供養をします。

お盆のことは正しくは、「盂蘭盆(うらぼん)」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といい、仏教における盂蘭盆経(うらぼんきょう)というお経の中で説いている伝説に由来するといわれています。

その伝説とは、次のようなものです。

お釈迦様の弟子である目連(もくれん)は、亡き母が地獄で逆さ吊りの刑を受けていることを知りました。お釈迦様に母を救済するために教えを乞うと、旧暦の7月15日(現在の8月中旬頃)に供養するようにとアドバイスを受けたのです。そのアドバイス通りに実行したところ、その功徳により母親の魂には極楽浄土が遂げられました。

この盂蘭盆経の伝説が日本に広まったことで、旧暦の7月15日に先祖を供養する行事である盂蘭盆会(現在でいうお盆)が世に浸透することになりました。

精霊馬(しょうりょううま)とは?

精霊馬とは、お盆の時期に精霊棚にお供えする馬や牛の形をしたお供え物のことです。ご先祖様がお盆の時期に自宅へと帰ってくる際、またあの世に帰る際の乗り物として作るもの、と古くから伝わってきました。

一般的に、キュウリを馬、ナスを牛に見立てて、割りばしや爪楊枝などを野菜に挿し、それぞれの動物に見立てます。ナスで作られる牛については「精霊牛(しょうりょううし)」といわれ、精霊馬と区別されることもあります。

精霊馬を飾る意味は?

精霊馬はキュウリを馬に見立ててご先祖様の乗り物として用意するものですが、馬は駿足であることから「ご先祖様に早く帰ってきてほしい」という思いで往路用の乗り物として作ります。

一方、精霊牛はナスを牛に見立てて、復路用の乗り物として用意します。牛はたくさんの荷物を運びゆっくりと歩くことから、「ご先祖様にたくさんのお供え物を乗せて、なるべくゆっくりとこの世の景色を楽しみながら帰ってもらいたい」という思いを込めて作るといわれています。

しかし地域によっては、馬は、行きも帰りもご先祖様が乗って移動するためのものとし、牛は、お供え物の荷物を運ぶためのもの、と伝わっているところもあるようです。

2.お盆の精霊馬にナスとキュウリを使う理由は?

お盆の精霊馬にナスとキュウリを使う理由は?

精霊馬にナスとキュウリが使われるようになった理由は、全国的に夏に手に入れやすい野菜だからだと考えられています。平安時代に貴族の間では麦わらを使って馬や牛を作っていたのが始まりですが、その後江戸時代に多くの庶民に広がり、それぞれが手に入れやすい夏野菜であるナスとキュウリで精霊馬をつくるようになったそうです。

必ずしも、ナスやキュウリを使わなくてはならないわけではなく、トウモロコシやトマト、ゴーヤを使って精霊馬を作るご家庭もあります。

3.お盆に精霊馬(ナスとキュウリ)を飾る?飾らない?地域と宗教による違い

精霊馬を飾る文化は、お盆の定番ではありますが、地域によっては精霊馬を飾らないこともあります。

例えば、西日本では精霊馬は飾らず、代わりに木や麦わらで作った精霊舟(精霊船)を飾ります。また、長崎の一部のエリアでは、送り盆の夕方に、明かりを灯した精霊舟を川に流すイベント「精霊流し」を行なっています。

精霊馬を飾る地域でも、北海道や東北などは、精霊馬を飾るのは送り盆のみで、それ以外のお盆期間は飾らないというところもあります。

そして地域の違いだけではなく、宗派による違いも見られます。同じ仏教の中でも浄土真宗の宗派だけは、お盆にご先祖様が帰ってくるという考えがないため精霊馬などのお盆の飾り物はしません。そもそも浄土真宗には「故人様は亡くなったらすぐに成仏し極楽浄土へ導かれる」という教えがあるため、霊は存在せず、故人様が迷うことはないとされています。

このように、地域や宗派によって精霊馬についての考え方の違いは大きいので、お盆期間を過ごすその土地の風習や、宗派の考えに合わせて用意することをおすすめします。

4.お盆にナスとキュウリを飾るのはいつからいつまで?

お盆にナスとキュウリを飾るのはいつからいつまで?

関東地方では、8月13日の盆入りで飾り、盆明けの8月16日までお供えしておくのが一般的です。地域によっては稲作の繁忙期を避けるため、旧暦を採用し、7月13日を盆入り、7月16日を盆明けとすることもあります。

また、8月13日から15日をお盆期間とし、8月16日が入らないケースもあるようです。それによりナスやキュウリを飾る期間が異なることがあるのです。

5.ナスとキュウリを使った精霊馬の作り方

ご先祖様をお迎えするお盆に備え、ナスとキュウリを使った精霊馬の作り方をご紹介します。

精霊馬の材料

【ナス:1本】
ナスは牛に見立てるので、太く力強さを感じるものを選ぶとよいでしょう。特に、曲がった物を選ぶと牛の首から頭のあたりのフォルムを連想できるので、動物らしく見えます。

【キュウリ:1本】
キュウリは、早く走れそうな、スマートな馬に見えるものを選びましょう。ナスと同じように曲がった物を選ぶと、頭を起こした馬のように見えます。

【割りばし:1膳(爪楊枝を使ってもよい)】
割りばしは、精霊牛の4本足分、精霊馬の4本足分で合計8本になるように折る、もしくはカッターなどで切りましょう。ケガをしないように、爪楊枝8本で代用することもあります。

精霊牛と精霊馬に使う野菜は、必ずしもナスやキュウリである必要はなく、夏に収穫しやすいゴーヤやトマト、ピーマン、トウモロコシ、ズッキーニなど様々な夏野菜を用いて作るのもよいでしょう。現代風に、車やバイクのデザインで作るなどしてアレンジを楽しむ方も増えてきているようです。

精霊馬の作り方

精霊馬の作り方をご紹介します。

  1. 1.割りばしを割って、1本を4等分にします。牛の分と馬の分で、計8本の脚(棒)を用意します。
  2. 2.ヘタが付いている方を頭に見立て、バランスをみて、野菜の中間下部に1.で用意した棒4本を足に見立てて、ナス、キュウリに刺し込みましょう。
  3. 3.4本の足でナス、キュウリが自立するようにバランスをとります。

精霊馬を作る際には、牛と馬の脚に見立てる割りばしのバランスが大切です。4本足でナスやキュウリの胴体となる部分を支えることになるので、倒れないようにバランスを見ながら刺し込みましょう。

6.ナスとキュウリを使った精霊馬の飾り方・置き方

ナスとキュウリを使った精霊馬の飾り方・置き方

お盆に先祖様をお迎えするための精霊馬は、飾り方・置き方も地域や家庭によって異なり、それぞれの作法が言い伝えられています。
ここでは精霊馬の飾り方・置き方についてご紹介します。

精霊馬の飾り方

一般的には、精霊馬は精霊棚(しょうりょうだな)に置きます。精霊棚とは、ご先祖様をお迎えするための専用棚で、仏壇とは別に用意するものです。お盆の間、ご先祖様はそこに滞在すると言われており、ナスやキュウリで作られた精霊馬はその上に置かれます。

また、地域によっては、門や玄関に精霊馬が置かれることもあります。ここでは、それぞれのケースでの飾り方についてご紹介いたします。

精霊棚に置く場合

精霊棚に精霊馬を飾る場合、宗派や地域によって違いがありますが、一般的な飾り方をご紹介します。

【準備するもの】
経机(小机)、真菰(まこも)の敷物、竹笹、位牌、おりん、香炉、ロウソク、真菰(まこも)、精霊馬、精進料理、お供えもの(果物・野菜・お菓子・ご先祖様の趣向品など)、盆花(仏花)、水の子、盆提灯など

【飾り方】
以下の順で飾ります。

  1. 1.仏壇の前に経机(または小机)を置き、その上に真菰を敷きます。
  2. 2.仏壇から位牌を取り出し、経机の真ん中に置きます。
  3. 3.精霊馬は、玄関から自宅の中の方へ向くように置きます。反対に精霊牛は、玄関や屋外を向くように置きます。
  4. 4.その他、位牌のまわりに、お供えもの、香炉、おりん、ロウソク、水の子、盆花を並べます。
  5. 5.精霊棚の脇に盆提灯を置き、お盆期間は常に灯りをともしておきましょう。

その他、13日の迎え盆では、精霊馬、精霊牛どちらも頭を自宅の中の方へ向け、16日の送り盆では頭を外側に向けて置くこともあります。

また置き方についても、精霊棚の両端に精霊馬、精霊牛を置くケースや、お供え物の奥に2頭並べて置くケースもあり、精霊馬の置き方や向きは、その土地やご家庭の慣習により異なるようです。

玄関・門に精霊馬を置く場合

玄関や門に精霊馬を置く場合には、家から見て外側を向くように置くのが一般的です。また、地域によっては、ご先祖様は東から帰って来るという考え方があり、その場合、精霊馬を西向き、精霊牛を東向きに置くこともあるようです。

ご家庭により先祖代々受け継がれてきた飾り方があるかもしれません。まずはご家族に精霊馬の飾り方について確認することをおすすめします。

7.お盆後のナスとキュウリの処分方法は?

お盆期間が過ぎ、お役目を果たしたナスとキュウリの精霊馬を処分する場合には、どうすべきでしょうか。昔は、お盆期間にお供えしたナスやキュウリは、お盆を過ぎたら海や川に流していたようですが、現代では環境問題や条例違反になってしまうことがあるので注意しましょう。
ここでは現代の精霊馬の処分方法をご紹介します。

土に埋める

昔から近所に海や川がなく、精霊馬を流す術がなかった人は、土に埋めるという方法がとられていました。現代でも戸建てにお住まいでお庭があるという方は、この土地に埋めるという方法を取ることができるでしょう。

しかし、今では集合住宅などにお住まいの方も多く、プライベートのお庭を持たないご家庭も少なくありません。集合住宅の場合、共有スペースの土に何かを埋めるということは禁止されているはずですから、この方法は不向きです。

お塩で清めて捨てる

誰にでもできる方法としては、お塩をかけて清めてから一般のゴミと同じように捨てる方法です。処分する際には、白い紙(または半紙)に包んでから捨てるとより丁寧です。精霊馬のお役目に感謝し、手を合わせて捨てましょう。

お寺でお焚き上げ

菩提寺とのお付き合いがあれば、精霊馬やその他のお供え物をまとめて供養し、お焚き上げしてくれる場合があります。お焚き上げをしてくれるかどうかは、お寺によって方針が異なるので、事前に問い合わせて確認することをおすすめします。

ただし、お寺にも宗派がありますので、とりあえず家が近いからという理由で近所のお寺に頼むことは控えましょう。

精霊馬は食べてもいい?

精霊馬としてお供えしたナスやキュウリは、食べてもいいものかと悩まれる方もいらっしゃるでしょう。しかし、お供えした精霊馬は食べずに、お役目に感謝して処分するのが正しい作法です。

それは、ご先祖様に捧げ送迎をしたお供えものであるという理由だけでなく、お盆は夏季の中でも最も暑く、さらに精霊馬は割りばしを刺しているので、その期間常温でお供えしていた野菜は傷んでいる可能性が高いためです。

精霊馬はお盆を過ぎたら速やかに処分しましょう。

8.ナスとキュウリの風習を理解してお盆の準備を進めましょう

お盆の過ごし方は地域や宗派により差異があります。ナスやキュウリの精霊馬を飾る時期や飾り方、そもそも精霊馬を飾らない地域もあるので、お盆を迎えるその土地や、ご家庭の宗派の風習をよく理解してお盆の準備を進めるとよいでしょう。

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