墓地移転(改葬)に必要な手続きは?流れや費用も解説

墓地移転(改葬)に必要な手続きは?流れや費用も解説

「墓地移転(改葬)」とは、お墓の引っ越しのことです。墓地の移転には手間がかかりますが、現在、墓地を移転せざるを得ない事情を抱えている人が増えています。

そこで今回は、墓地移転に必要な手続きについてご紹介します。移転までの流れや、かかる費用なども解説しますので、墓地移転を考えている方も、これからお墓のことを知ろうとしている方もぜひご一読ください。

1.墓地移転(改葬)が増えている理由は?

墓地移転では、お墓からご遺骨を取り出し、別の場所に埋葬します。この、ご遺骨の引っ越しを正式には「改葬」といい、改葬には行政手続きが必要です。また、基本的には宗教儀式が行われますが、信仰している宗教や地域の習慣によっては行わないこともあります。

改葬が増えている理由としては、ライフスタイルの変化や、お墓に対する考え方が多岐に渡るようになったことが挙げられます。

具体的には、以下のとおりです。

  • ・お墓のある場所が遠く、管理が難しくなった
  • ・お墓を承継してくれる人がいなくなった
  • ・特定の宗教に縛られずに埋葬したい
  • ・家の近くにお墓を建て直したい など

お墓の管理や供養の問題を解決するひとつの手段として、墓地移転(改葬)を選択する方が増えているといえるでしょう。

2.墓地移転の種類は?

墓地移転で移動できるのは、基本的に石碑とご遺骨だけです。お墓から取り出すご遺骨の数や量は、移転の目的や状況によって変わります。

ここでは墓地移転のパターンを、5つに分けてご紹介します。

石碑とすべての遺骨を移動

お墓の引っ越しが決まり、これまで使っていた石碑を移転先でも使用したい場合は、石碑とすべてのご遺骨を移動させます。改葬後、お墓のあった場所は更地となり、お墓は管理者に返還されます。

石碑を移動させる際には、「移転先の墓地や霊園で、石碑が持ち込めるのか」を事前に確認しなければなりません。また、持ち込んだ石碑が置けるスペースを確保できるかどうかも調べておきましょう。

遺骨のみをすべて他のお墓に移転する

移転先で石碑を新調する場合は、ご遺骨のみを移動させます。改葬後、お墓のあった場所は更地になります。

石碑を新たに購入する費用がかかりますが、石碑の持ち込み許可が下りなかった、移動先の区画サイズと石碑が合わないなどの理由がある場合に、ご遺骨だけを移動させる方が多いようです。

複数ある骨壺から一部を他のお墓に移転する

お墓の中に骨壺が入りきらなくなったなどの理由で、複数ある骨壺から一部だけを取り出し、移動させることも可能です。改葬後、もとのお墓はそのまま残ります。

骨壺の中から一部の遺骨を他のお墓に移転する(分骨)

骨壺の中に入っているご遺骨の一部を移動させることを「分骨」といいます。この分骨は「一部のご遺骨を別のお墓に移す」という意味では「改葬」と呼ばれることもありますが、元のお墓にご遺骨が残るため、改葬とは区別されることもあります。

なお、手元供養をする場合は埋葬をしないので、改葬には該当しません。

骨壺の全てを永代供養の合祀墓などに移転する(墓じまい)

改葬には、お墓を撤去し、永代供養をしてくれる合祀墓などにご遺骨を埋葬するケースもあります。このお墓を処分すること(移転は含まない)を「墓じまい」といいます。自分で管理するお墓には移転しないものの、ご遺骨を他の場所に埋葬する行為であるため、やはり改葬の手続きが必要です。

しかし、墓じまいをする際には散骨を選択するケースもあります。散骨は埋葬には当てはまらないため、「ご遺骨を他のお墓などに移転すること」と定義される改葬とは区別されることもあります。

墓じまいに関する内容は、「合祀墓の埋葬方法・費用は?メリット・デメリットも解説します」の記事でご覧いただけます。

3. 墓地移転の手続きに必要な書類は?

墓地移転の手続きに必要な書類は?

墓地移転(改葬)の手続きには、いくつかの書類を用意しなければなりません。なお、移転させるご遺骨1体につき、申請書・許可証はそれぞれ1枚ずつ必要です。お墓の引っ越しは時間がかかりますので、スムーズに進めるためにも必要書類はきちんとそろえておきましょう。

墓地移転の手続きに必要な書類は、以下のとおりです。

必要な書類 発行元 補足
改葬承諾書 現在の墓地の承継者 墓地の承継者と改葬許可申請者が異なる場合にのみ必要
墓地使用許可証
もしくは
受入証明書
移転先の墓地・霊園 墓地使用許可証は「永代使用許可書」ともいう
埋葬(埋蔵/収蔵)証明書 現在の墓地・霊園
改葬許可申請書
改葬許可証
現在のお墓がある自治体

なお、分骨の場合は「ご遺骨が元のお墓に残る」ため、改葬の手続きは不要です。別途、墓地の管理者や火葬場からの「分骨証明書」を用意しましょう。

また、散骨する場合は埋葬ではないため、自治体から改葬証明書を発行してもらえないことが多いようです。そのため、墓地管理者や自治体に相談することをおすすめします。

提出先や取得方法については、事項で解説しています。

4.墓地移転の流れは?

ここからは、墓地の移転先を決めてから移転を完了するまでの流れをご紹介します。

(1)移転先を決める

墓地を移転する際には、「現在のお墓はどうするのか」「新しいお墓はどのような条件で探せばよいのか」などを親族間で話し合ったうえで、移転先を決めます。

代々受け継がれてきたお墓は、多くの方が関わっています。ひとりで勝手に決めずに、必ず話し合いの場を設けるようにしましょう。檀家になっている場合は、ご親族との話し合い後、寺院に対し報告・相談することも必要です。

(2)移転先の管理者から墓地使用許可証か受入証明書を発行してもらう

移転したい墓地を見つけたら、移転希望先の寺院・霊園から「墓地使用許可証」もしくは「受入証明書」を発行してもらいます。受領すると、ご遺骨の移転先が決まったことが証明できます。

移転先で新しくお墓を建てる場合は、このタイミングで具体的な建墓の予定を立て、石材店との契約を行うとよいでしょう。

(3)改葬許可申請書を取り寄せる

次に、改葬許可申請書を取り寄せます。申請書は、現在のお墓がある自治体にて発行され、移転させるご遺骨1体に対し1枚必要です。フォーマットは自治体によって異なりますので、必ず申請先の自治体の窓口まで行って受け取るか、指定書式をダウンロードしてください。

改葬許可申請書に記入する内容は、主に以下のとおりです。

  • ・故人様の氏名、性別、本籍、住所
  • ・死亡年月日
  • ・現在埋葬されている場所の名称、所在地
  • ・移転先の名称、所在地
  • ・申請者の氏名

現在のお墓の承継者ではない方が申請する場合は、承継者による「改葬承諾書」が別途必要です。

(4)移転元の墓地管理者から署名と捺印をもらう

改葬許可申請書に必要事項を記入後、現在のお墓の管理者から署名と捺印をもらいます。改葬許可申請書は、「埋葬(埋蔵/収蔵)証明書」と一体になっているものが多く、これにより、現在のお墓にご遺骨が収められていることも証明できます。

(5)移転元の自治体に必要書類を提出し改葬許可証を受け取る

前述した「改葬許可申請書」「埋葬(埋蔵/収蔵)証明書」「墓地使用許可証(もしくは受入証明書)」、必要に応じて「改葬承諾書」を現在のお墓がある自治体に提出し、改葬許可証を発行してもらいます。改葬許可証を受け取ると、お墓の引っ越しが可能となります。

改葬許可証は、ご遺骨を移動させた後に移転先の墓地管理者に提出する必要があるので、大切に保管します。

(6)遺骨を取り出す

前もって予定を立てておいた日時に墓地に行き、閉眼供養(※)をしてからご遺骨を取り出します。実際にご遺骨を取り出す作業は石材店が行いますので、依頼を忘れないようにしましょう。

なお、納骨を行うタイミングは、改葬許可証が発行された後に、移転先の墓地管理者と決めます。納骨まで時間が空く場合は、ご自宅か、移転先の墓地にて保管します。

※)閉眼供養については開眼供養と共に、次項の「墓地移転の際の儀式は?」で詳しく解説しますのでそちらをご参照ください。

(7)遺骨を移転先に運ぶ

お墓から取り出したご遺骨を移転先のお墓に運びます。骨壺を守るため、そして、周りの方の配慮のためにも、骨壺は大きめの布で包み、不安であれば緩衝材入りの入れ物に収めて持ち運びましょう。

なお、公共交通機関を使ってご遺骨を移動することができますが、国内であればゆうパックで送ることもできます(他の配送業者は不可)。ただし、送る際には注意点があるため、事前に郵便局に確認してから準備しましょう。

(8)遺骨を新しいお墓に埋葬する

ご遺骨の状態(カビが生えているなど)によっては、洗浄を行うことがあります。開眼供養を行い、新しいお墓にご遺骨を埋葬したら、墓地の移転は完了です。

5.墓地移転の際の儀式は?

ご遺骨をお墓から取り出し、移し替える際には「閉眼供養」と「開眼供養」を行います。どちらも仏式における墓地移転で行う儀式であり、他の宗教においては必須ではありません。

それぞれの意味とかかる費用について、解説します。

閉眼供養の意味と費用

閉眼供養(へいがんくよう・へいげんくよう)とは、お墓に眠る故人様の魂を抜き、参拝の対象だったお墓を「モノ」に戻すための儀式です。「魂抜き」や「お性根抜き(おしょうねぬき)」とも呼ばれます。

お墓を改葬する際の閉眼供養のお布施は、1~5万円が相場といわれています。

開眼供養の意味と費用

開眼供養(かいがんくよう・かいげんくよう)とは、「モノ」であるお墓に魂を入れるための儀式です。「魂入れ」や「お性根入れ」ともいいます。

こちらも僧侶による読経が必要です。開眼供養も閉眼供養と同様、1~5万円ほどをお布施として包みましょう。

6. 墓地移転にかかる費用は?

墓地移転にかかる費用は?

墓地の移転には、全国平均で150~300万円ほどがかかるといわれています。費用は、お墓を新設するかどうかで大きく変わってくるようです。

改葬にかかる費用の内訳と相場をご紹介します。

現在のお墓から移転する時にかかる費用

  • ・墓石の処分費 : 1㎡あたり10~50万円程度
  • ・ご遺骨の取り出し費用 : 3万円(1体につき)
  • ・閉眼供養 : 1~5万円
  • ・離檀料 : 5~20万円(檀家だった場合に必要)
  • ・墓石運搬料(石碑を移転先で使う場合) : 20~80万円

移転先でかかる費用

  • ・新しい墓石の建立費 : 100~150万円
  • ・永代使用料 : 10万円
  • ・埋葬費用 : 3万円(1体につき)
  • ・開眼供養 : 1~5万円
  • ・入檀料 : 10~30万円(檀家になる場合に必要)

改葬に関する費用は一例です。詳しくは、現在お世話になっている寺院や移転先の管理者、石材店へお問合わせください。

7.墓地移転の際はお寺とのトラブルに注意

ごくまれに、墓地移転の際に寺院側とトラブルに発展することがあります。長きにわたってお墓の管理・供養をしてきた関係上、離檀を防ぐために高額な離檀料を請求してきたという例もあるようです。

トラブルを防ぐためにも、改葬を検討する際には家族や寺院としっかり話し合い、理解を得られるように努めましょう。

8.墓地移転(改葬)はご遺族・ご親戚にも相談を!慎重な判断が大切です

墓地移転(改葬)はご遺族・ご親戚にも相談を!慎重な判断が大切です

墓地移転(改葬)を行う際になにより大切なことは、ひとりで決めないことです。お墓は個人の所有物ではなく、家族間で代々受け継がれてきたものですから、墓地移転をする際には必ずご遺族(場合によってはご親族も)の意見も聞き、お世話になってきた寺院への連絡もきちんと行うようにしましょう。

また、墓地移転の際には、このようなご遺族と協議をする時間や、書類の準備・手続き、新しい墓地の準備など、時間がかかるものです。スケジュールの計画や移転先の決定など、慎重に判断しながら進めることをおすすめします。

花葬儀ではリベントファミリー という会員制度(年会費無料)を設けており、葬儀に関連するお悩みに幅広くお応えしております。墓地移転のタイミングや方法などでお悩みの方には、葬儀前・葬儀後でもサポートさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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