樒(しきみ)を葬儀・お供えに使う意味とは?使用する主な宗派や手配する方法

樒(しきみ)を葬儀・お供えに使う意味とは?使用する主な宗派や手配する方法

仏教の葬儀や法要では、「樒(しきみ)」と呼ばれる植物が、よく祭壇に飾られています。名前は知らなくても、仏教の葬儀や法要に参列した際、多くの人が一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。樒は仏教の葬儀と深い関係があり、知っておくと葬儀などでもきっと役立つことでしょう。

今回は、樒の特徴や、なぜ仏教の葬儀やお供えに使われるのか、各宗派との関係や手配の仕方について詳しく解説します。

1.葬儀で使われる「樒」の意味や特徴

葬儀で使われる「樒」の意味や特徴

ここでは、葬儀で使われる「樒」の特徴や、どのようにして葬儀で使われるようになったのか解説します。

樒の特徴

樒は常緑小高木で、光沢のある緑の葉を持ちます。
樒の特性が、葬儀という場においてどのように機能するのかを見ていきましょう。

強力な毒性

樒は、その美しい外見とは裏腹に、「アニサチン」と呼ばれる猛毒を持っています。根、葉、花、実などすべての部分に毒が含まれています。この強い毒性のため、樒は植物としては唯一、法律で劇物に指定されています。特に実の部分には神経に作用する強い毒が含まれており、誤って食べると非常に危険です。

特有の香り

樒は特有の香りを放つことでも知られています。この香りと強い毒性は、かつては土葬された遺体が獣に掘り起こされるのを防ぐ目的で利用されていました。それが、仏事で樒が使われるきっかけになったともいわれています。

現在でも、樒の強い香りはお焼香で使う粉末状の香や線香として使われており、邪気を払い、死者を守る力があるとされています。

「しきみ」という名の由来

樒の名前の由来には、いくつかの説があります。ひとつには、四季を通じて常緑で美しい緑色を保つので「四季美」と呼ばれていたことから今の名前になったという説です。

他にも、樒の果実に強い毒があったので「悪しき実」と呼ばれていたことが、名前の由来になったとの説や、実がぎっしりと敷き詰められているように実るため「敷き実」といわれていたことが始まりだという説もあります。

いずれの説が正しいのかは定かではありませんが、樒の特徴が名前の由来となっていることは興味深いといえるでしょう。

榊(さかき)との違い

樒と榊は、日本の伝統的な植物であり、宗教的な儀式で重要な役割を果たす点で共通していますが、その用途と特徴には大きな違いがあります。

樒は、仏教の儀式でよく用いられます。一方、榊は神道の儀式で使われる植物で、神様が宿る依り代とされています。神社の神事においては、例えば玉串奉奠(たまぐしほうてん)などの際に使用されます。

見た目の違いとしては、樒の葉は波打ち、肉厚で柔らかく、葉の向きがそろっていません。対照的に、榊の葉は平べったくて硬く、葉の向きがそろっており、色も樒より濃い緑色をしています。

2.樒と仏教は古くから関わりがある

仏教と樒とのかかわりは、奈良時代に遡ります。日本に仏教を広めた鑑真が、唐で咲いていた仏教のシンボル「青蓮華(あおれんげ)」と樒が似ていたため、唐から日本に持ち込んだことが、樒が仏教で使われるきっかけになったといわれています。

また、真言宗の開祖である空海は、入手が困難だった青蓮華の代わりに樒を修行に用いたとされています。樒という漢字に「密」が使われているのは、空海が密教(※1)の修行に使っていたからだという説もあります。

樒は常緑樹であり1年中緑の葉を保つことができ、仏前などに四季を問わず供えられることから、長きにわたり仏教の儀式や行事において重要な役割を果たしてきたのです。

(※1)大乗仏教の宗派のひとつ。

3.樒を葬儀やお供えの場面で使う主な宗派

樒を葬儀やお供えの場面で使う主な宗派

樒を葬儀などで用いる宗派としては、創価学会、日蓮正宗、浄土真宗などが挙げられます。次項より、これらと樒との関係を深堀りして解説します。

なお、上記に挙げた以外の浄土宗や曹洞宗、臨済宗などでも、樒が使われることもあります。

創価学会

創価学会は、日蓮の仏法を信仰する法華経系の宗派です。創価学会の葬儀は友人葬と呼ばれますが、この友人葬において、ご遺族や参列者が樒を祭壇に供えるのが習わしです。

樒は昔から野生動物による墓荒らしを防ぐために用いられてきましたが、創価学会ではこの習慣を受け継ぎ、故人様を悪霊から守るために樒を用います。

創価学会の友人葬において、樒は白い花とともに祭壇に飾られます。白い花と樒の組み合わせは、清らかさと純粋さを象徴し、故人様への敬意と哀悼の意の表現なのです。

友人葬について詳しく知りたい方は、「友人葬の特徴や費用、香典マナー」をあわせてご覧ください。

日蓮正宗

日蓮正宗は日蓮を開祖とする仏教宗派です。法華経(ほけきょう)の教えに従い、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えることを重視しています。

日蓮正宗では、樒は「永遠の命」を象徴するとして特別な意味を持ちます。日蓮正宗の教えでは、命は常住不変(変わらずに常に存在すること)とされ、樒の常緑性、鮮やかな緑と通じる部分があるためです。そのため日蓮正宗では、お墓や仏壇に花ではなく、樒をお供えすることが習慣となっています。

浄土真宗

浄土真宗は親鸞が開いた仏教の宗派で、「南無阿弥陀仏」と唱えることに重きを置いています。浄土真宗の葬儀では樒が重視されており、仏壇に水の入った華瓶(けびゅう・かひん)に樒を挿して供えます。樒を水に入れるのは、極楽浄土に流れる清らかな水である「八功徳水(※2)」を表すためです。

(※2)仏教用語で、8つの特性を備えた聖なる水のこと。8つの特性とは、甘さ、冷たさ、柔らかさ、軽さ、清浄さ、無臭、飲むときに喉を損なわない、飲んだ後に腹を痛めないことを指す。

4.樒は葬儀でどのように使われるのか

ここでは、樒が葬儀で使用される具体的な場面や場所、そしてそれが持つ意味について、詳しく解説します。以下の表にまとめましたので、参考になさってください。

使う場面・場所 使われる意味・理由
枕飾り
・故人様が亡くなった後、その枕元に設置される小さな祭壇。
・「故人様の魂が安らかに旅立てるように」との願いを込めて、樒の枝が飾られることがある。
納棺
・樒の枝が棺の中に故人様と一緒に置かれることがある。
・これは、故人様を邪気から守るとともに、遺体の腐敗臭を和らげるためとされている。
末期の水
・故人様の唇を水で濡らす儀式。
・水を含ませるため脱脂綿の代わりに樒が使われることがある。
葬儀の祭壇や仏壇に飾る
・故人様に対する感謝の気持ちを表現すると同時に、故人様への最大の贈り物であると考えられている。
・また、樒を供えることで、故人様の霊魂を守り、邪気を防ぐ意味もがある。
葬儀式場の入口に飾る
・関西地方の一部の地域では、門樒(かどしきみ)などと呼ばれる大きな樒を寺の門前や葬儀会場の入口に飾る風習があるが、最近では少なくなっている。
・供花、花輪の代わりに参列者から贈られることもある。
・葬儀会場の中に結界を張って、故人様を邪気から守る意味が込められている。

5.葬儀・お参りのために樒を手配するには

前述の通り、樒は葬儀やお墓参りなどにおいて大切な役割を果たします。では、これらの場面では、樒をどのように手配すればよいのでしょうか。ここでは、樒の手配方法とその相場について詳しく解説します。

樒を手配・入手する方法

葬儀において樒を使用する場合は、葬儀社を通じて手配することが基本となります。葬儀の準備をする際に、葬儀社に相談してみるとよいでしょう。

日常のお参りや仏壇で樒を供える場合、スーパーマーケットやホームセンター、ガーデニングショップなどで購入できることがあります。ただし、最近では取扱っていない店舗も多く、常時手に入るとは限りませんので、事前に問い合わせることをおすすめします。

また、板樒(いたしきみ/木材を薄く削った板状のもの)や紙樒(かみしきみ/樒に似せて紙でつくられたもの)を樒の代用とすることも、選択肢のひとつです。

樒の値段

樒の価格は店舗や地域によって異なり、1本数百円~1,000円ほどで販売されています。オンラインショッピングサイトでも販売されていますが、別途送料がかかることもあります。

葬儀で樒を使用する場合の価格は、使用する量や葬儀社、祭壇のデザインなどによって異なります。

たとえば、創価学会や日蓮正宗の葬儀で厨子(ずし:本尊を祀る祭壇)の両サイドに樒を飾る場合、葬儀社によっても異なりますが、樒を生ける入れ物のレンタル代も含め、3万円前後です。具体的な価格については、利用する葬儀社に直接確認することをおすすめします。

6.樒に込められた意味を知り、心を込めた葬儀に

樒に込められた意味を知り、心を込めた葬儀に

樒は生命力や永続性を象徴する植物として、特に仏教の葬儀において重要な役割を果たします。樒が葬儀で理由やその意味を理解することで、葬儀の意義をより深く捉えることができます。故人様を悼み、大きな喪失感を抱えているご家族にとって、樒に込められた思いを知ることは、精神的な支えともなるのではないでしょうか。

樒の宗派による使い方など、何か疑問がある場合は、花葬儀事前相談をご利用ください。経験豊富なスタッフが、お客様の疑問をしっかりサポートいたします。

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