香典返しの辞退は失礼?伝え方や文例、辞退された場合の対応も解説

香典返しの辞退は失礼?伝え方や文例、辞退された場合の対応も解説

通夜や葬儀でお香典を持参した人の中には、諸事情により香典返しを辞退したいと考える方もいます。しかし、いただいたお香典には香典返しを送るのが喪主側の一般的なマナーとされていますから、「香典返しを辞退することはよくないことだ」「香典返しを辞退することで相手に迷惑をかけてしまうのではないか」などと考えてしまいがちです。

そこで今回は、「香典返しを辞退することは失礼にあたるのか」について詳しくご紹介します。辞退する際の伝え方や文例、また、辞退された側の対応も併せてご紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。

1.香典返しとは?

香典返しとは?

香典返しについて、お香典の意味を踏まえながら解説します。

そもそもお香典とは

故人様を悼み供養の気持ちを込めて渡すお香典は、急な不幸で出費が生まれるご遺族の負担が少しでも減るよう、参列者がお線香を持参したことから始まったといわれています。現代はお線香の代わりに現金を包みますが、いずれにせよどの時代でも、「故人様の冥福を祈るとともに、残されたご遺族のことを思い、助け合う心の形」がお香典であり、古くから受け継がれている大切な慣習です。

香典返しとは?

ご遺族は、参列者からいただいた心遣い(お香典)に対し、感謝の気持ちとして贈り物を返します。これを香典返しといい、品物と一緒に葬儀参列のお礼状を添えるのが一般的です。

なお、香典返しを贈る方法は2通りありますが、葬儀当日に品物を渡すことを「当日返し」と呼び、四十九日後に送ることを「忌明け返し」と呼びます。香典返しを辞退する場合は、上記の2通りのケースに備えて、香典返し辞退を伝えるための準備をする必要があります。

2.香典返しの辞退は失礼?

「香典返しを辞退することは失礼にあたるのではないか」と考える方もいらっしゃるでしょうが、香典返しの辞退そのものについてはマナー違反ではありません。なぜなら、お香典には前述した「供養」「助け合い」の気持ちが込められているのであって、お返しをもらうために渡すものではないからです。

このように、香典返しの辞退は失礼にはあたりませんが、喪主様に伝えるタイミングと方法には気を配ることが大切です。

3.香典返しの辞退の理由は?

香典返しの辞退の理由は?

お香典を送る側が香典返しを辞退する理由として、以下の5つのケースをご紹介します。

ご遺族の負担に配慮したいため

「悲しみに暮れるご遺族側の負担を減らしたい」という相手を思う気持ちが、香典返しを辞退する理由のひとつに挙げられます。

基本的に香典返しはいただいたお香典の半額(半返し)とされていますが、それでも用意するとなれば時間的にも金銭的にも負担がかかります。そういった負担を減らし、少しでも心穏やかに過ごしてほしいという思いが、香典返しを辞退する理由の多くを占めているようです。

お香典の金額が少額なため

お香典の金額が少額なため辞退するというケースもあります。

例えば連名でお香典を出し、香典返しがひとりあたり500円程度だったとします。そのためにわざわざ人数分用意していただくのは申し訳ないという気持ちから、辞退することが多いようです。

公共機関などの規定で禁止されているため

政府関係者や公共機関からの参列者は、規定により香典返しの受け取りを禁止されていることがあります。

民間企業でも同じように「一切の贈答品を禁止する」という規則を設けているところもあるため、そういった場合は香典返しの辞退を申し出ます。

福利厚生の一環として会社から支給されているため

会社関係者が会社名義でお香典を用意した場合も、香典返しを辞退するケースが多く見られます。

なぜなら、会社名義で出すお香典は福利厚生の一環で支給されたり、会社の組合から慶弔費として支給されたりするものだからです。そのため、会社から出したものに対するお礼を個人が受け取ると問題になることがあります。

喪主側の立場で考えた際にも、会社名義のお香典に対する香典返しは原則不要であり、「供花」のお返しも、同様に不要です。

香典返しを辞退する慣習があるため

慣習によって、香典返しを辞退することもあります。

例えば関東のある一部地域では、冠婚葬祭においてそれぞれの負担を軽くするために金銭のやり取りを控える「新生活運動」というものが根付いています。

そのため、お香典も香典返しも双方が辞退することがあるようです。

4.香典返しを辞退する方法と文例

香典返しを辞退することは失礼にはあたらないとご説明しましたが、伝え方には十分な配慮が必要です。

お通夜や葬儀に参列するケースはもちろんのこと、郵送でお香典を送るケース、お香典を葬儀後に持参するケースにおいても、きちんと辞退する旨を伝える工夫をしましょう。

ここでは、香典返しの辞退を伝える方法と、文例をご紹介します。

参列した際に辞退する方法1/忌明け返しへの対応

忌明け返しの場合は、喪主様が香典返しの準備をするまでに時間があります。そのため、「香典返し辞退」について、香典袋の中袋の裏面に記載したり、一筆箋やカードに記載して香典袋に入れたりして伝えるとよいでしょう。

香典袋の中袋の裏面に記載する

持参した香典袋に香典返しの辞退について記載する場合は、香典袋の中袋裏面を使いましょう。参列者自身の氏名・住所の左隣に、以下のような一言を添えます。

【文例①】

香典返しは辞退させていただきたくお願い申し上げます

 
【文例②】

会社規定により香典返しは辞退申し上げます

 
【文例③】

お返しのご配慮は不要でございます

一文は薄墨の毛筆で書くことがよいとされていますが、難しい場合は万年筆やボールペンで記載します。
文例③

香典袋に一筆箋やカードを入れる

香典袋の中に、現金とは別に一筆箋やカードを入れて伝える方法もあります。差出人が誰か分かるよう、必ず「宛名」「本文」「差出人」の順で記載しましょう。

【文例①】

〇〇様
心よりお悔やみ申し上げます
誠に勝手ではございますが お返しは辞退させていただきますようお願い申し上げます

 
【文例②】

〇〇様
(故人様)のご冥福をお祈り申し上げます
なお お返しのお心遣いは遠慮させていただきます
何卒ご了承のほどお願い申し上げます
山田花子

一筆箋やカードを用意する場合は、香典袋と同じように薄墨を使うとよいとされています。
文例②

なお、香典袋の中袋や一筆箋、カードなどに記載せずに、お香典の受付担当者に口頭のみで伝えることはおすすめできません。大勢の人が参列する葬儀では、ことづけがご遺族に伝わらない可能性があるからです。

「忌明け返し」の場合は喪主側が後日対応することになるため、喪主様に香典辞退の意思が確実に伝わるよう、香典袋の中袋などに一筆添えておくと安心です。

参列した際に辞退する方法2/当日返しへの対応

「当日返し」の場合はお香典を受け取ったその日に香典返しが渡されるため、配慮が必要です。香典袋の内袋などに香典返しの辞退を記載していたとしても、受付担当者が香典返しを渡す前にお香典の中身を確認しない限り、辞退の意思は伝わらないからです。

しかし、香典返しが当日返しなのかどうかは、斎場に到着し、実際に品物を受け取るまではわかりません。そのため、お香典を受付で渡す際に「申し訳ございませんが、香典返しは辞退させていただきたく存じます」などと、ひとこと伝えることが重要です。

【挨拶例①】

このたびは 心よりお悔やみ申し上げます
会社規定により香典返しを受け取ることができませんので 喪主様にお伝えください

 
【挨拶例②】

お返しのお心遣いは不要でございます
香典袋にもその旨を記しておりますので 喪主様にお伝えください

香典返しを辞退する場合は、当日返し、忌明け返しのどちらの場合でも香典返し辞退の意思が伝わるように、香典袋などに文章で書き添えるだけでなく、受付で口頭にて伝える必要があります。

また、辞退を伝えたとしても、会葬御礼(喪主が参列者に用意する、葬儀に参列していただいたことへの感謝の品物)は渡されるので、必ず受け取りましょう。

※会葬御礼と香典返しの違いはこちらの記事が参考になります。

郵送でお香典を送る際に辞退する場合

遠方に住んでいる、都合がつかなかった、逝去を後で知ったなどの理由で葬儀に参列することが叶わなかった場合、お香典を郵送することができます。

郵送するお香典で香典返しの辞退を伝えたいときは、お香典にお悔やみの手紙を同封しましょう。文例は横書きとなっていますが、実際は縦書きが基本ですのでご注意ください。

【文例①】

〇〇様の突然のご逝去を悼み 心からお悔やみ申し上げます
本来であればすぐにでも駆け付けるべきところ 葬儀に伺うことがかなわず申し訳ございませんでした
心ばかりのものを同封いたしましたので 御霊前にお供えいただければと存じます
なお お返しのお気遣い等はなさらぬようお願い申し上げます
ご家族様の悲しみはいかばかりかと心が痛みますが くれぐれもご自愛ください

 
【文例②】

〇〇様の突然の訃報に接し大変な悲しみを覚えております
謹んで哀悼の意を表し ご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます
心ばかりのものを同封させていただきますが 立場上 香典返しは辞退させていただきたく存じます
ご家族の皆様におかれましては 大変お力落としのことと存じますが どうかご自愛ください

 
【文例③】

このたびはご尊父〇〇様ご逝去の報を受け 心よりお悔やみ申し上げます
本来であればお別れの場に駆け付けるべきところ 存じ上げず叶わなかったことをどうかお許しください
ささやかながらご香料を同封いたしましたので ご霊前にお供えください
なお お返しなどのお心遣いはなさらぬようお願いいたします
改めまして 生前は格別のご厚情を賜りましたことを深く感謝すると共に 〇〇様の安らかなご永眠をお祈りいたします

お香典を葬儀後に持参する際に辞退する場合

葬儀当日の参列が叶わず、後日喪主様のご自宅などへお香典を持参することがあります。

香典返しの辞退を希望する場合は、お悔やみの挨拶と共にお香典を渡す際に「お返しなどのお心遣いはどうかなさらないでください」などと丁寧にお伝えするとよいでしょう。

5.香典返しを辞退された場合の対応方法

香典返しを辞退する側の対応についてご説明してきましたが、ここでは香典返しを辞退された喪主側の対応についてお伝えします。

相手が香典返しの辞退を申し出てきたら、その気持ちを受け止め控えることも必要です。以下のいずれかの方法で、香典返しに代わって感謝の気持ちを表すことができます。ぜひ参考になさってください。

電話をかける、もしくはお礼状を忌明けに送る

「香典返しを辞退したい」と伝えられた場合は、品物は贈らずに、電話をかける、もしくはお礼状を送るという方法があります。タイミングとしては、忌明けが最適でしょう。電話をかける際は、早朝や夕方など、相手の迷惑となる時間帯を避けます。

お礼状は、以下の文例を参考に、気持ちを込めて手書きで書くようにします。文例は横書きですが、お礼状の基本は縦書きですのでご注意ください。

【文例】

拝啓

時下ますますご清祥の事とお慶び申し上げます
この度は父〇〇の葬儀に即し ご参列ならびにお心遣いをいただき誠にありがとうございました
おかげさまで無事忌明けを迎えることができましたことを ご報告させていただきます
本来ならば直接御礼申し上げるところではございますが 略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
暑い季節になりましたので どうぞご自愛ください

敬具

心ばかりの贈り物を忌明けに送る

香典返し辞退の旨を知らされ、気持ちを尊重すべきと分かっていても、やはり何かお返しをしたいと思うこともあります。その場合は、「3分の1~半返し」にこだわらずに心ばかりの贈り物を送ってもよいでしょう。タイミングは忌明けとし、贈り物には手紙を添えるとより丁寧です。

例えば、連名でお香典をいただいた相手には分けられるお菓子を送る、高額なお香典をいただいた相手には、気持ちが伝わるような、その方の喜ぶようなものを選んで送るなどの方法があります。

また、大切なのは、お香典をくださった方へのお礼の気持ちなので、「香典返しとして掛け紙をかけて送る」「何もかけずに通常の贈り物として送る」、いずれの方法でも差し支えないでしょう。

ただし、立場上、受け取ることができない人もいるので、必ず相手の事情を考慮することが大切です。

違う方法でお礼をする

「香典返しの辞退を受けたのにお返しを送るのは気が引ける」という方には、お歳暮やお中元といった季節の挨拶をするタイミングを選んだり、辞退した相手を食事などへ招いたりすることで感謝の気持ちを伝えることもできます。

6.香典返しの辞退は失礼ではありませんが、伝える際には失礼のないように気をつけましょう

ご遺族側の負担を軽くしたいと考えたり、組織の規約に従わなくてはならなかったりといった理由で、香典返しを辞退することは失礼にはあたりません。

しかし、辞退を伝える際はタイミングと方法、そして言葉に失礼のないよう気を付けることが大切です。葬儀が終わった後も相手との関係は続くため、きちんと自分の気持ちが伝わるような伝え方を心がけましょう。

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