看取りの手順をわかりやすく解説~知っておきたい準備、心構えとは?
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
身近な人の最期に立ち会う看取りについて、「どのような段取りで進めればよいのかわからない」など、不安を感じる方も多いでしょう。安心して看取りの時を迎えるためには、看取りの手順や事前の準備を理解しておくことが大切です。
そこで今回は、看取りの基本的な知識、自宅・施設・病院それぞれの看取りの手順や、準備について解説します。看取りにあたっての心構えもご紹介しますので、看取りを控えている方、看取りに備えたいと考えている方は、ぜひ、この記事を参考になさってください。
1.知っておきたい看取りの基礎知識
大切な方を見送るために知っておきたい、看取りの基本的な意味や一般的な流れについて解説します。
看取りの意味と最近の傾向
看取りとは、終末期を迎えた方が亡くなるまで寄り添い、心身の苦痛を和らげながら、尊厳ある最期を迎えられるよう支えることを指します。単なる医療行為ではなく、ご本人の生き方や価値観を尊重しながら人生の最終章をともに過ごす重要なプロセスです。
日本では病院での看取りが主流ですが、自宅や施設で看取るケースも増えています。厚生労働省「人口動態統計」によれば、在宅で亡くなる方の割合は2022年に約17%以上と、2020年以降少しずつ増加しており、今後も拡大が見込まれています。
自宅での看取りが増えている背景には、以下のような要因があります。
・自宅でご家族と過ごしたいというご本人の意向
・住み慣れた環境での最期を希望するご家族の思い
・医療の進歩による在宅医療・緩和ケアの充実
出典:厚生統計要覧(令和5年度)第1編 人口・世帯 第2章 人口動態
第1-25表 死亡数・構成割合,死亡場所×年次別
掲載元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_1_2.html
看取りの一般的な手順
看取りの手順は、状況や場所によって異なりますが、一般的には以下のように進みます。
1.余命宣告と看取りの準備
医師から余命の見通しが伝えられると、看取りの方針を決定し、準備を開始します。
2.症状の緩和とケアの実施
苦痛を最小限に抑えるための緩和ケアを行います。
3.最期の時間をご家族と過ごす
意識がある間は会話を大切にし、できるだけ穏やかな時間を共有します。
4.呼吸・心拍の停止と死亡確認
心肺機能が停止すると、医師が死亡を確認します。
5.エンゼルケアの実施
故人様の清拭や着替えを行い、安らかな表情で見送れるよう準備します。
2.看取りに向けた意思表示の準備
もしもの時に備え、どのような医療やケアを望んでいるのか、ご本人の意思を事前に確認し、形にしておくことは、後悔しない看取りのためにとても大切です。ここでは、そのための準備についてご説明します。
なぜ意思表示が重要か
終末期には、病状の変化などから、ご本人がご自身の気持ちを詳しく話せなくなることがあります。延命治療をどうするか、最期をどこでどのように迎えたいかなど、大切な決断をご家族が迫られる場面も出てくるかもしれません。
あらかじめご本人の希望が分かっていれば、ご家族はその想いを尊重した選択がしやすくなります。「ご本人はどうしたかったのだろう」と後で悩むご負担も、少し軽くなるのではないでしょうか。
ご本人の意思を示すための主な方法
ご本人の意思を示すための方法として、主に「事前指示書」「リビングウィル」「公正証書」があります。ご本人の希望や状況に合わせて、どの方法が良いか検討しましょう。
事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)
訪問診療医などに対して、延命措置を希望するか、どのような医療を受けたいかなど、ご本人の意思を明確に記載する書類です。
医師法第19条により、医師は正当な理由なしに診療を拒むことができませんが、ご本人の明確な意思表示があれば、意思を尊重しやすくなります。延命措置を望まないなど、特定の医療に関する希望がある場合は、書面でご本人の意思を明示しておくことをおすすめします。
リビングウィル
「延命治療はしないでほしい」「できるだけ自然な形で穏やかに最期を迎えたい」といった、主に終末期の迎え方に関するご本人の意思を示すための文書です。事前指示書と同様、ご本人が自由に作成できます。法的な効力はありませんが、ご本人の大切な想いを伝えるものとなります。
公正証書
事前指示書やリビングウィルの内容を、より法的な形で残したい場合に用いられるのが「公正証書」です。公正証書は、公証役場にご本人が出向くか、公証人に来てもらって作成します。費用は一般的に1万円~5万円程度かかりますが、看取りにおいても意思尊重の根拠として有効です。
認知症により判断能力(意思能力)が欠けているとみなされた場合、公正証書の作成が無効となる可能性があるため、ご本人が早めに準備することが重要です。公正証書があっても、最終的な医療判断は医師が行いますが、ご本人の意思を尊重してもらうための根拠となります。
本人の意思を現場につなぐDNAR指示
看取りを行うご家族が知っておきたい言葉にDNAR(Do Not Attempt Resuscitation)指示があります。
DNAR指示とは、ご本人の事前指示書などで示された意思や、ご家族との話し合いに基づき、医師が「心肺停止時に蘇生措置を行わない」と決定し、指示を出すことです。指示内容は、本人やご家族の希望をふまえて、医師が所定の書式等に記載します。
DNAR指示が医療・介護スタッフ間で共有されることで、ご本人の意思に反する蘇生措置が行われるのを防ぎ、穏やかな最期を迎えるという方針が明確になります。
3.自宅で看取る手順の具体的な流れ
自宅でご家族を看取るためには、事前の準備と適切なステップを踏むことが重要です。在宅での看取りの手順の流れを解説します。
1.訪問診療医を探す
在宅で看取りを行うには、定期的に自宅を訪問してくれる訪問診療医のサポートが必要です。訪問診療医の多くは、在宅療養支援診療所(在支診)に所属していますが、すべての医師が看取り対応をしているわけではないため、探す際には以下の点を確認します。
対応範囲
訪問診療の対応範囲は、保険制度上「医療機関から16km以内」が原則とされています。超えると対応できない場合があるため、自宅と医療機関の距離を考慮して探します。
医師の考え方
医師の全員が在宅看取りを前提にしているわけではないため、「自宅で最期を迎えたい」という意向を理解し、協力してくれるかを確認します。
信頼関係を築けるか(相性)
長期にわたり関わることになるため、患者やご家族の話をしっかり聞き、説明を丁寧に行ってくれる医師を選ぶことが望ましいです。
看取り対応の訪問医の確保には時間がかかる場合もあるため、早めに探すことをおすすめします。地域の在宅医療・介護連携支援センターや地域包括支援センター、介護施設のケアマネージャーに相談すると紹介してもらえることがあります。
2.看取りチームの結成
自宅での看取りには、患者本人の希望を尊重しながら、適切なケアを提供するために、医療・介護の専門家を含む「看取りチーム」を結成し、役割を明確にすることが重要です。
在宅での看取りチームのメンバーは、以下のような人々で構成されます。
・ご家族
・訪問診療医
・訪問看護師
・ケアマネージャー
・訪問介護士
必要に応じて、訪問薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなども加わります。
3.希望する医療やケアの書面の作成
終末期になると本人が自ら意思を伝えられなくなることもあるため、希望する医療やケア内容を次のような書面で残しておくことが重要です。
訪問診療・看護の同意書
訪問診療や訪問看護を受ける際には、事業所との契約が必要です。契約書の中で、どのような医療・ケアを希望するかを明示しておくことで、医師や看護師が迷わず適切な判断・対応をしやすくなります。
4.緊急時の連絡先の共有
急変が起きた際、ご家族が慌てずに対応できるよう、以下の連絡先は事前に共有・掲示しておきます。
・訪問診療医の緊急連絡先(24時間対応か要確認)
・訪問看護ステーションの緊急番号
・介護施設やケアマネージャーの連絡先
・地域の在宅医療支援センター(相談・緊急時対応が可能)
・119番通報(医師と救急搬送の判断基準について話し合っておく)
5.終末期宣言と看取りの準備
病状が進行し、医師が「回復の見込みがなく、終末期に入った」と判断すると、「終末期宣言」が出されます。法的な手続きではありませんが、延命治療を行わず、苦痛の緩和に重点を置いたケアへと切り替える合図となります。
終末期を在宅で迎える際は、患者の快適さを最優先し、痛みや苦痛を和らげるケアが中心となります。
6.死亡確認と死亡診断書の発行
本人が息を引き取った後、まずは訪問診療医に連絡をし、到着までは安らかに見守ります。医師が自宅を訪問し、死亡確認を行った後、死亡診断書が発行されます。
4.施設での看取りの体制と手順
高齢者のケアを行う施設の看取りの体制や手順、延命治療拒否などの意思表示の方法について解説します。
特養・老健・グループホームの看取り体制
高齢者の介護をする主な施設として、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、グループホームがあります。それぞれの看取りの体制をご紹介します。
特別養護老人ホーム(特養)の看取り
特養は、要介護度の高い高齢者が長期間生活する施設です。医師は常駐しておらず、嘱託医または訪問診療医が対応します。
看護師は日中に常駐していることが多いですが、夜間の対応は限定的なため、夜間に急変があった場合は、介護職員が電話で看護師から指示を受けたり、オンコール体制で医師や看護師が駆けつけたりする形になります。看取りを行っているかは施設によって異なります。
介護老人保健施設(老健)の看取り
老健は、在宅復帰を目指すための中間施設で、医師は常駐していますが、リハビリが中心です。看取り体制が整った施設も多くありますが、体制が整っていない施設に入所している場合は、終末期を迎えると自宅や特養への転居をすすめられる場合があります。
グループホームでの看取り
グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。看護師が常駐していないため、医療処置が必要な終末期の対応が難しいところもあります。看取りに対応する場合は、外部の医療機関と連携して行います。
施設での看取りの手順
施設での看取りは、事前の準備が整っていれば、比較的スムーズに進みます。一般的な施設での看取りの手順を説明します。
1.事前の契約と意思確認
入居時または状態が悪化した際に、本人やご家族の医療方針に関する希望(延命治療の希望有無、DNAR指示など)を施設側と共有し、合意の上で、事前指示書などの書面を交わします。
2.終末期の対応とケア
終末期には、ご家族と施設スタッフが定期的に情報を共有し、どのように最期の時間を過ごすかについて調整します。訪問診療医や看護師がいる場合は、主に緩和ケアや疼痛管理が行われます。
3.死亡確認と死亡診断書の発行
看取った後、嘱託医または訪問診療医が死亡確認を行い、死亡診断書を作成してご家族に手渡します。スタッフがエンゼルケア(死後処置)を行ってくれる施設もあります。
5.病院での看取りの手順と注意点
病院の看取りには、病院ならではの手順や注意すべきポイントがあります。病院の看取りの流れと心得をわかりやすく解説します。
病院での看取りの手順
病院での看取りは、医師や看護師と連携しながら行います。以下は、一般的な病院での看取りの手順です。
1.終末期の医療方針の決定
医師が終末期と判断したときの、延命治療の有無や最期の過ごし方について医師とご家族が話し合い、医療方針を決定します。事前指示書や同意書の署名が求められる場合があります。
2.終末期ケア(ターミナルケア)
終末期に入ると、患者の状態に合わせて、苦痛を和らげるために鎮静剤の使用や酸素療法、点滴による栄養補給などの緩和ケアが行われます。
3.死亡確認
呼吸や心拍が停止すると、医師が死亡確認を行い死亡診断書を作成します。ご家族はこのとき、病室で故人様と最期の時間を過ごせますが、病院の方針や病棟の状況により時間制限がある場合もあります。
病院での看取りの注意点
病院によっては、死亡確認後すぐに故人様の搬送が求められることがあります。特に、個室ではなく一般病棟の場合、早くベッドを空けるよう言われるケースもあるため、事前に病院での安置が可能な時間を確認します。
6.看取りの手順におけるご家族の心構え
ご家族の接し方ひとつで、看取りの時間が穏やかなものになるかどうかが変わってきます。ご家族の寄り添い方や心の準備について解説します。
穏やかなコミュニケーションを心がける
看取りの間は、ご本人が安心できるような関わりを心がけることが大切です。「ありがとう」「そばにいるよ」などと伝えてもよいでしょう。耳は最後まで聞こえるとされているため、思い出や感謝の言葉を話すことで、心の安らぎを与えることができます。手を握る・背中をさするなどのスキンシップも有効です。
苦しませないための配慮
看取りの場面では、本人の苦痛を最小限に抑えることがもっとも重要です。医師や看護師と連携しながら、以下の点に気を配りましょう。
・疼痛や呼吸困難の緩和(医師による薬の調整や姿勢の工夫)
・口の中の乾燥対策(湿らせたガーゼや口腔ケアで対応)
・体位変換や枕の調整(褥瘡予防や呼吸を楽にするため)
・好きな音楽や照明、香りなどの環境調整(落ち着いた雰囲気づくり)
医療行為は専門スタッフに任せる
医療行為や身体的ケアを無理にご家族が担おうとすると、心身ともに疲弊し、後悔や不安を残すこともあります。医療行為や疼痛管理は医療スタッフに任せ、ご家族は穏やかな見守りや可能なフォローに専念します。
7.看取りの手順の最後は葬儀の準備
看取りの後、ご家族はすぐに葬儀の準備に取りかかる必要があります。深い悲しみの中、短い時間で多くの決断をしなければならないため、精神的・体力的な負担は決して小さくありません。
最近では、あらかじめ葬儀の事前相談を行い、葬儀の準備を整えておく重要性が認識されつつあります。葬儀社との事前相談では、次のような内容を決めておけます。
・葬儀の種類・形式(一般葬・家族葬・一日葬・直葬など)
・参列者の規模や会場の希望
・宗教者の有無・宗派(僧侶・神職・牧師など)
・費用の目安や見積もりの提示
・火葬場や安置所の確認
・看取り後の搬送場所(自宅、安置施設など)
葬儀の準備をあらかじめしておくことで、看取りの後も慌てずに、共に過ごす最期の時間を大切にできるでしょう。
8.看取りの手順に関するQ&A
A.看取りの最適な場所は、本人とご家族の希望、医療体制、介護環境などによって異なるため、総合的に判断することが大切です。
自宅や施設、病院それぞれにおける看取りの手順やメリット・デメリットを理解し、ご家族や医療関係者などと相談した上で決めることをおすすめします。
A.大切な方の最期の時間に寄り添うために、いくつか心に留めておきたいことがあります。
まず、ご本人を不安にさせるような言動は避けましょう。ご本人の前でご家族が口論したり、深刻な表情でひそひそ話をしたりすることは、ご本人の不安を増幅させてしまうかもしれません。
また、大声で呼びかけたり、必要以上に体を揺らしたりすることは、不快感や混乱の原因になる可能性があります。できるだけ落ち着いた態度で、安心感を与える言葉とふれあいを心がけましょう。
A.基本的に、かかりつけ医がおり、医師が死亡診断書を発行できれば、警察への連絡は不要です。
訪問診療医や主治医による死亡診断書が発行されれば、通常の死亡として扱われます。医師による診察歴がない場合や急変による予期せぬ死など、死因が不明なケースでは「異状死体」として警察への届け出が必要なこともあります。
9.看取りの手順を理解して後悔のないお見送りをしましょう
看取りは、ただ最期を見届けるだけでなく、人生の締めくくりを支える貴重な時間です。そして、大切な方の看取りを後悔なく行うには、事前に手順を理解しておくことが不可欠です。
医師や看護師との連携、延命治療に関する意思確認、葬儀の事前相談などについて、あらかじめ把握することで、ご家族の心の負担が軽くなり、落ち着いて最期に寄り添えるでしょう。環境や状況により手順は異なりますが、大切なのは、本人の想いとご家族の気持ちを尊重しながら進めることです。
看取りに関して不安を感じている方は、花葬儀の事前相談まで、ぜひ、ご連絡ください。花葬儀では、事前相談を何度でも無料で受け付けております。経験豊富なスタッフが、ご家族の想いに寄り添いながら、最適な看取りと葬儀のサポートをいたします。