お香典に新札は避けるべき?葬儀・法事それぞれの場合のマナーを解説

お香典に新札は避けるべき?葬儀・法事それぞれの場合のマナーを解説

お香典を用意する際、新札の使用に関して迷われている方も多いのではないでしょうか。「新札は使ってはいけない」と聞いた覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。また、葬儀と法事では、お香典のお札のマナーに違いがあるのかも気になるところでしょう。

今回は、葬儀と法事におけるお香典のお札のマナーや対処方法について、詳しく解説します。葬儀や法事でお香典を準備しようとしている方は、ぜひ、この記事を参考にしてください。

1.葬儀・法事で渡すお香典の意味

葬儀・法事で渡すお香典の意味

葬儀の際に、参列者がご遺族に渡す金銭のことをお香典と呼びます。昔はお線香やお花などをお供えしていましたが、現在では、葬儀の金銭的な支援の意味を込めて、お香典を渡すことが主流になっています。

法事などで故人様にお供えする金銭の呼び方は、関東では「お香典」と呼ぶのが一般的ですが、ほかにも「お供え」「御仏前」など、地域によって異なる場合があります。

2.葬儀のお香典|新札を使うのはマナー違反?

まずは、葬儀のお香典を用意する際、新札を使うことがマナー違反にあたるのかどうか解説します。

葬儀のお香典は「使用感のある」お札

葬儀においてお香典を包むときは、一般的に新札ではなく、ある程度の使用感があるお札を使うのがマナーです。

ただし使用感があるといっても、ひどい汚れや破れがあるお札はご遺族に対して失礼にあたるので、葬儀のお香典にはふさわしくありません。使用感が少しでもあれば十分であるため、できるだけ清潔なお札を選ぶようにしましょう。

なぜ新札を使わないほうがいいのか?

葬儀のお香典で、新札を使用するのを避けるべきとされている理由は、新札を使うと、まるで不幸を予期し、準備をしていたかのような印象をご遺族に与えてしまうからです。

葬儀のお香典は突然の訃報に対するものであるため、あらかじめ用意していたと思われる新札の使用は、不適切だといえます。

未使用ではないがきれいなお札(ピン札)は使える?

ピン札とは、すでに使われたことはあるものの、折り目や汚れがないきれいなお札を指します。ピン札も新札と同様、「不幸を予期していた」と受け取られる可能性があるため、新札と同様に使用は避けたほうが無難です。

3.法事のお香典|新札ではない「使用感のあるもの」が無難

葬儀のお香典に新札は使わないほうがよいと述べましたが、法事のお香典の場合はどうでしょうか。実は、法事のお香典のお札については、新札の使用に関して意見が分かれています。

法事は葬儀と違い、事前に日程が決まっているので、新札であってもかまわないと考える人もいます。

しかし、新札はお祝い事に使われることが多いため、弔事には不向きだと感じる人も少なくありません。このような状況を考慮すると、迷ったときには葬儀のときと同様に、使用感のあるお札を選ぶとよいでしょう。

4.葬儀のお香典に旧札は使ってもよい?

葬儀のお香典に旧札は使ってもよい?

旧札とは、発行から時間が経過し、現在は流通していない紙幣を指します。お香典で旧札を使用することは、できるだけ避けることをおすすめします。流通しなくなった時期にもよりますが、見慣れない旧札にご遺族が困惑する可能性があるためです。

なお、旧札と似たような言葉として、「古札」という言葉もあります。古札を旧札と同じだと考える方もいるかもしれませんが、それは正しくありません。古札は「現在流通していて、一度でも使われたことのあるお札」のことです。葬儀のお香典では、主にこの古札が使われます。

5.新札しかないときのお香典の対処法

お香典を用意するとき、新札やピン札しか手元にないときは、お札に折り目をつけて対処します。折り目の付け方に決まりはありませんが、お札の真ん中を縦に折る方が多いようです。軽く一回折れば、それで新札ではないこと、配慮したことを示せます。くれぐれも、ぐしゃぐしゃに折り曲げないよう注意しましょう。

6.葬儀のお香典|金額の相場

お香典の金額について悩まれる方も多いのではないでしょうか。以下に、葬儀のお香典の金額の相場を、故人様との関係別に表にまとめましたので、参考になさってください。

自分と故人様との関係 金額
3万円~10万円(以上)
兄弟姉妹 3万円~10万円
祖父母 1万円~5万円
叔父叔母 3,000円~3万円
友人 3,000円~1万円
職場の方 5,000円~1万円

上記は、あくまで目安です。お香典の金額の決め方について、詳しくはこのあとの「お香典の金額に関するマナー」に載せております。

7.法事のお香典|金額の相場

法事のお香典の金額は、葬儀のお香典の金額の半分から7割程度が妥当だとされています。四十九日や一周忌、三回忌の法事のお香典の金額の相場を、故人様との関係別に表にまとめました。

自分と故人様との関係 金額
1万円~5万円
兄弟姉妹 1万円~3万円
祖父母 5,000円~2万円
配偶者の親 1万円~5万円
親戚の叔父や叔母 5,000円~1万円
知人・友人 3,000円~1万円

なお四十九日や一周忌、三回忌は節目の法事のため、そのほかの法事よりも多めの金額を包む場合もあるようです。三回忌よりもあとの法事におけるお香典の金額は、一般的には減少する傾向があります。

8.お香典の金額に関するマナー

ここからは、お香典に包む金額を決める際に、気をつけるべき注意点について解説します。

金額は故人様との関係と年代に応じて決める

先にお香典の金額をご紹介しましたが、あくまで一般的な相場です。実際の金額は、故人様との関係が深いほど、またお香典を渡す人の年齢が上がるにつれて高くなる傾向にあります。

また、夫婦でお香典を出す場合の金額についても、押さえておきましょう。お香典は一世帯でひとつにまとめるのが基本です。夫婦であるからといって、お香典の金額を2人分にする必要はありません。

金額の頭は奇数を基本とする

お香典では、金額の頭の数字は奇数を基本にします。偶数(2万円や6万円など)は「割り切れる」ことから、縁が切れることが連想する人もいるためです。

この考え方は、もともとご祝儀のマナーに由来するもので、お香典については絶対的なルールではありませんが、気にする人もいらっしゃるため、奇数を選ぶことをおすすめします。

また、4は「死」、9は「苦」を連想させるため、それらの金額は避け、お札の枚数にも気をつけましょう。

9.香典袋の選び方

これまで、お香典のお札や金額について説明してきましたが、ここからは、お金を入れる香典袋についてご紹介しましょう。

宗教も考慮する

香典袋を選ぶ際は、故人様の宗教を考慮する必要があります。次項から、宗教別にどのような点に注意すべきか具体的に解説します。

香典袋の絵柄

まず、気をつけたいのが、絵柄です。宗教ごとの香典袋の絵柄について、下の表にまとめました。

宗教 香典袋の絵柄
仏教 ・蓮の花
神道 ・基本白無地
キリスト教 ・十字架
・百合の花

なお、白無地は、すべての宗教で使用できます。迷ったときは模様のない白い袋を選びましょう。

水引の違い

祝儀袋、不祝儀袋などに使われる飾り紐を水引(みずひき)といいます。水引に関する宗教別の使い分けは、下の表のとおりです。

宗教 水引の概要
仏教
・一般的には「黒白の結び切り」
・関西から西では「黄白の結び切り」が使われる場合もある
・三回忌以降は「双銀(銀銀)の結び切り」が使用される場合もある
神道
・一般的には「双銀の結び切り」
・「双白(白白)の結び切り」や「黒白の結び切り」が使われる場合もある
キリスト教
・通常、水引のないものを選ぶ

香典袋の水引における「結び切り」は、「一度結ぶと解けない」結び方であり、「繰り返すことがないように」という意味を持っています。水引の選び方は地域や宗派によって異なる場合があるため、事前に確認することが重要です。

金額にふさわしい香典袋を選ぶ

金額によっても、選ぶべき香典袋が異なるため、下記の表を参考にして、できるだけふさわしいものを選択しましょう。

金額 水引の色や形・香典袋の大きさ
1,000円〜5,000円
黒白・青白の水引が印刷されたもの
5,000円〜1万円
藍銀の水引が印刷されたもの
1万円〜3万円
実物の黒白の水引がかけられているもの
1万円〜5万円
実物の黄白の水引がかけられている
5万円以上
実物の双銀(銀銀)の水引を使った、中金封(通常よりひと回り大きい香典袋)を使用
10万円以上
実物の双銀の水引で、大金封(中金封よりひと回り大きい香典袋)を使用

10.香典袋の表書きはどうする?

こちらでは、香典袋の外袋に書かれる文字である表書きについて解説します。表書きには、故人様の宗教・宗派に応じた適切な言葉を使うことが求められます。

香典袋を購入する際の「表書き 早わかり診断図」

下記は、主な表書きについて、どのような場合に選んだらよいかを示した早わかり診断図です。店頭で香典袋を購入する際の参考になさってください。

早わかり診断図

以下より、葬儀の場合と法事の場合、それぞれで選ぶべき表書きについて詳しく解説します。

葬儀の場合

葬儀の香典袋の表書きを宗教・宗派別に表にまとめました。仏教においては、浄土真宗だけが、故人様は亡くなるとすぐに浄土に行くとされているため表書きの作法も他の宗派とは異なっています。

【葬儀の香典袋の宗教・宗派別の表書き】
宗教・宗派 表書き
仏教(浄土真宗以外)
御霊前
浄土真宗
御仏前、御佛前
仏教で宗派が不明
御香典
神道
御玉串料(おんたまぐしりょう/おたまぐしりょう)、御榊料(おさかきりょう)、御霊前
キリスト教
御花料、献花料
カトリックでは御ミサ料、プロテスタントでは弔慰料の場合もある
無宗教
御香典

なお、葬儀の際の香典袋の表書きを書く際は、薄墨を使うのがマナーとされています。悲しみの涙で墨が薄くなった様子や、突然の訃報に急いで駆けつけたために墨をしっかりと擦れなかったことを表現するためです。一方で、四十九日や一周忌、三回忌などの法事では、事前に予定がわかっているため、一般的に濃い墨を使います。

法事の場合

仏教(浄土真宗以外)と神道では、忌明け(仏教は四十九日・神道は五十日祭)までと、あとでは、同じ法事でも表書きが変わる点に注意が必要です。

【法事の香典袋の宗教・宗派別の表書き】
宗教・宗派 表書き
仏教(浄土真宗以外)
四十九日までは、御霊前
四十九日よりあとの法要・法事では、御仏前、御佛前
浄土真宗
御仏前、御佛前
仏教で宗派が不明
御香典
神道
仏教の四十九日にあたる五十日祭までは、御玉串料、御榊料、御霊前
五十日祭よりあとの法要・法事では、御神前(ごしんぜん)を使ってもよい
キリスト教
御花料、御花代、献花料
カトリックでは、御ミサ料、プロテスタントでは、弔慰料の場合もある
無宗教
御香典

表書きは自分の宗教・宗派のものを選んでもよい

お香典の表書きは、故人様の宗教・宗派に合わせるのが基本ですが、絶対にそうしなければならないわけではなく、自分の宗教・宗派で香典袋を用意しても間違いではありません。

たとえば、「キリスト教の方が、お焼香を控える」など、自分の宗教のしきたりで故人様を見送るケースもあります。大切なのは、故人様を思う気持ちです。

11.香典袋の中袋がある場合・ない場合の書き方

一般的に市販されている香典袋には中袋がついていますが、中袋は袋を二重にするため「不幸が重なる」と考えられることから、ついていないケースもあります。
ここでは、中袋がある場合とない場合とで、外袋も含めて、どこに何を書くかを解説します。

中袋がある場合の書き方

中袋がある場合は、中袋に金額、住所、氏名を書きます。金額は中袋の表面に記入し、頭に「金」を付けて金額を書きます。

金額を書く際は、下記のような旧漢字を使用することが多くあります。

・1:壱
・2:弐
・3:参
・5:伍
・10:拾
・千:阡
・万:萬
・円:圓

ただし、必ずしも旧漢字でなければならないわけではありません。旧漢字の使用が推奨されるのは、数字の改ざん防止のためと、伝統的な慣習によるものです。

住所と氏名は通常、中袋の裏面に書きますが、場所が指定されているときはそれに従って書きましょう。また、中袋の封の糊付けは不要です。

中袋が無い場合の書き方

中袋が無い場合は、表面の書き方は中袋がある場合と同様ですが、住所や金額はどちらに書いたら良いのでしょうか。

裏面の右下に縦書きで、住所、その左側に金額を、やはり旧漢字を用いて「金◯萬円」などと記入します。書く場所が印字されている場合は、それに従って記入します。

12.香典袋のお札の向き

香典袋のお札の向き

香典袋にお札を入れる際は、香典袋の表側にお札の裏側(肖像画が描かれていない側)が向くようにし、さらに肖像画が袋の底側にくるように入れます。人物の顔を裏向きにするのは、「悲しみで顔を伏せる」との意味を表すためです。

お札の向きは、中袋の有無にかかわらず同じとなります。中袋がない場合、香典袋の表側にお札の裏側が向くように直接入れることになります。

13.お香典における新札、お札に関するQ&A

A. お香典を葬儀のあとに渡したり、送ったりする場合においては、新札を使っても一般的に問題はないとされています。

お香典を葬儀に持参する際は、「不幸を予期して準備していた」と受け取られる可能性があるため新札は避けるべきとされています。しかし、お香典を葬儀後に渡す場合は、新札・使用感のあるお札、どちらでもかまわないと考えられているのです。

新札であることが気になるときは、お札の真ん中に軽く折り目をつければ、気を遣っていることをご遺族に伝えられるかもしれません。

A.お布施は、新札でも問題ありません。

お布施のお札をどうするかについては、多くの人が疑問を持つようです。おそらく、お香典が新札だと失礼になるためだと考えられますが、実際には、お布施は、僧侶への感謝の気持ちを表すものであり、新札を使うことで感謝の気持ちをより明確に示せるので、新札の使用はむしろよいとされています。

A.新札、使用感のあるお札のいずれでも大丈夫です。

通常、お別れの会は、多くの場合、ご家族の密葬のあと数週間以上たってから開かれます。そこで、葬儀の後日お香典を渡す場合と同様に、用意する時間的余裕があるため、新札でも失礼にはあたらないとされています。

とはいえ、使用感のまったくない新札は慶事で使われることが多いため、新札しかない場合は、半分のところに折り目を入れておくと、気遣いが表せるため無難でしょう。

14.お香典に新札を使う場合はご遺族に失礼のないようにしましょう

お香典に入れるお札に関しては、新札でも良い場合、避けたほうがよい場合など、いくつかの注意点があります。ご遺族に対して失礼のないよう、お香典のお札の基本的なマナーを理解しておくことが大切です。

ご遺族の感情に配慮し、心を込めてお香典を準備することで、ご遺族に寄り添おうとする気持ちが伝わるでしょう。

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