介護施設での逝去|葬儀までの対応、慌てないための事前準備を解説
- 作成日: 更新日:
- 【 生き方のヒント 】
介護施設でご家族が亡くなられたとき、深い悲しみとともに「このあと何をすればよいのか」「葬儀の手配はどうしよう」と戸惑う方は多くいらっしゃいます。初めてのことばかりで不安を感じるなか、限られた時間のなかで、判断や手配が必要になる場面も少なくありません。
本記事では、介護施設でのご逝去後の対応の流れや葬儀場所の選び方、施設とのやりとりの注意点などについて解説します。少しでも安心してお別れの時間を迎えられるよう、必要な情報をまとめています。介護施設で看取った後の葬儀に不安のある方は、ぜひ参考になさってください。
【もくじ】
1.介護施設で家族が亡くなった直後の対応
介護施設でご家族が亡くなられた際、ご遺族は迅速に手配を進めなければなりません。介護施設でのご逝去後に、ご家族が行う基本的な対応を解説します。
施設からの連絡を受けて現地へ向かう
故人様の容態が急変し、危篤状態に陥られた場合や、逝去された場合には、まず介護施設からご家族へ連絡が入ります。
危篤の連絡では、ご本人の容体や医師の見通しなどが伝えられます。可能な限り早く施設へ駆けつけ、大切な方との最期の時間を過ごせるよう、他のご家族にもすぐに知らせましょう。
ご逝去の連絡(訃報)を受けた場合も同様に、まずは落ち着いて状況を聞き、できるだけ速やかに施設へ向かいます。夜間や休日の対応となるケースも少なくないため、あらかじめ連絡体制を家族間で共有しておくと、緊急時でもスムーズに動くことができます。
医師による死亡確認と死亡診断書の受け取り
介護施設の職員が医療機関と連携し、医師を手配していることが一般的ですが、医師の到着が遅れる場合は、ご家族は落ち着いて待ちましょう。
医師による死亡確認後に発行される死亡診断書は、今後の葬儀手配や火葬許可申請に不可欠な書類です。診断書の控えを複数枚コピーしておくと、葬儀社との打ち合わせや市区町村への届け出の際に役立ちます。
葬儀社への連絡と搬送先の調整
死亡診断書を受け取った後は、速やかに葬儀社へ連絡を入れます。葬儀社は、故人様を介護施設から搬送し、安置先(ご自宅、葬儀会館、または専用の安置施設など)までの手配を行います。
2.介護施設からの搬送後の葬儀場所の選択肢
搬送先が決まったら、どこで葬儀を行うかを決める必要があります。自宅や斎場など、それぞれに異なる特徴があるため、状況に応じた選択が大切です。ここでは、主な葬儀場所の特徴と選ぶ際のポイントを解説します。
自宅での葬儀(自宅葬)
自宅葬は、故人様の住み慣れた場所で静かに見送れる点が特徴です。形式にとらわれず、近しいご家族のみであたたかい時間を過ごせることから、近年あらためて見直されている葬儀スタイルです。
ただし、スペースの確保や近隣への配慮、祭壇の設置可否など、事前に確認すべき点が多くあり、搬送後すぐに安置できる環境が整っていない場合には、別途安置施設を利用する必要もあります。
斎場
斎場は、葬儀社が運営する民間斎場と、自治体が運営する公営斎場があります。民間斎場は設備が整っており柔軟な対応が可能ですが、費用面では割高になることもあります。公営斎場は費用を抑えられますが、予約の取りづらさや使用の制約にも考慮が必要です。
いずれを選ぶ場合も、介護施設からの搬送後すぐに利用できるかを含めて、葬儀社と早めに相談し、空き状況や条件を確認しておくことが重要です。
なお、「介護施設でお別れはできないだろうか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。この点については、次の章で詳しく解説します。
3.介護施設の中で葬儀やお別れはできる?
ご家族の中には、「故人様が長く過ごした施設で、最後のお別れをしたい」「施設で葬儀はできないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。ここでは、介護施設でのお別れの可否や対応の例、事前の確認ポイントを解説します。
介護施設内での葬儀は基本的に難しい
結論から言うと、多くの参列者を招くような一般的な通夜や告別式を介護施設で行うことは、原則として困難です。
介護施設は「医療・介護の提供」を目的とした生活の場であり、宗教儀式や式典を行う場所として設計されていません。居住者や職員の安全・衛生面への配慮が求められるため、葬儀式場のような使用は難しいのです。
また、施設の規模や構造によっては、参列者の受け入れや駐車スペースの確保が難しいことが多く、火気やお香の使用が制限される場合もあります。これらの複雑な理由から、介護施設での葬儀に対応している葬儀社は、ほぼないのが実情です。
施設内でできるお別れの例
大々的な葬儀は難しくとも、介護施設によっては、搬送前に簡単なお別れの時間を設ける、あるいは小規模な葬儀であれば可能である場合があります。
実際に弊社「花葬儀」では、故人様が長年お過ごしになった老人ホームの一室をお借りして家族葬を行った事例がございます。葬儀では、祭壇に季節のお花を飾り、故人様が趣味で撮影された思い出の写真をたくさん並べることで、その方らしい、非常に温かなお別れの空間となりました。
このようなお別れは、介護施設の深いご理解と、全面的なご協力があって初めて実現できる、特別なケースだと言えるでしょう。
施設側と確認しておくべき項目
どのような形のお別れが可能かは、施設の規則や方針によって全く異なります。もし、介護施設で何らかの形のお別れを希望する場合、対応可能な範囲や時間帯などについて、あらかじめ施設や葬儀社に相談することが重要です。いざというときに慌てないためにも、ご家族の意向を早めに伝えることをおすすめします。
4.介護施設でのお別れの後、葬儀に向けてすべきこと
介護施設でご家族を見送られたご家族は、葬儀に向けてさまざまな準備をすることになります。ご家族が葬儀前にすべき主な項目をご紹介します。
喪主や連絡担当者をどうするか話し合う
葬儀を円滑に進めるには、早めに喪主様と連絡担当者を決めておくことをおすすめします。喪主様は葬儀全体の責任を担う役割で、葬儀社との打ち合わせや挨拶なども行います。ご親族や関係者への連絡をまとめる担当者がいると、情報共有も円滑に進みます。
宗教や希望する葬儀形式をご家族で確認する
故人様の意向やご家族の希望に応じて、どのような葬儀にしたいかを家族間で共有することも重要です。仏式・神式・無宗教といった宗教や、家族葬・一般葬・一日葬などの葬儀形式によって葬儀の準備の内容は大きく異なります。
あらかじめご家族間で希望を確認しておけば、葬儀社との打ち合わせも滞りなく進みますし、関係者間の認識のズレも防ぐことができます。
不安があれば事前に葬儀社へ相談してみる
介護施設でのご逝去後、葬儀までどのような流れになるのか、不安を感じる方も多いかもしれません。そうした場合は、前もって葬儀社へ相談することをおすすめします。
葬儀の費用や準備の流れ、施設からの搬送や夜間対応など、具体的なポイントを確認しておくことで、いざというときにも落ち着いて行動することができます。無料で相談に応じている葬儀社も多いため、気になる点があれば遠慮なく問い合わせましょう。
5.搬送をトラブルなく進めるための介護施設との連携
ご逝去から、故人様を安置場所にお連れするまでの時間は、慌ただしくなりがちです。ここでは、その搬送を滞りなく進めるために、ご家族が「伝えるべきこと」と、葬儀社が「配慮してくれること」という2つの側面に分けて、ポイントを解説します。
施設職員に伝えておくべき情報
逝去後、葬儀社が施設に来るまでの間に、施設側へご家族の希望を共有しておくことが大切です。
まず、生前から希望している葬儀社がある場合は、葬儀社の連絡先を施設側にすぐに伝えましょう。もし決まっていなくても、その旨を伝えることで、今後の動きについて相談できます。
また「一度自宅に帰してあげたい」「できるだけ静かに出発したい」といった搬送に関するご希望があれば、この時点で伝えておくと、施設側もできる限りの配慮をしやすくなります。
施設の退所手続きや死亡診断書など、事務的な段取りについても、流れを確認しておくと安心です。ご家族の中で誰が施設との主な連絡窓口になるかを施設側に伝えておくと、情報の錯綜を防ぐことができます。
搬送ルートや施設の出入りに関して考慮されること
葬儀社が施設に到着すると、葬儀社が中心となり、施設職員と搬送のための最終確認を行います。ご家族が直接細かな指示を出すことは稀ですが、どのような点に注意が払われるかを知っておくと、当日の流れを落ち着いて見守ることができます。
介護施設からの搬送には、ストレッチャーでの移動や、寝台車を施設に乗り入れたりする必要があります。そのため、施設内のどのルートを使用するか、出入口の位置や段差の有無、駐車可能な場所などが、あらかじめ確認されます。特に夜間や雨天時などは、より慎重な打ち合わせが行われます。
ご家族が搬送に関するご希望を事前に施設や葬儀社に伝えていれば、その意向も踏まえて確認が進められるでしょう。
6.介護施設でのお別れに備え、葬儀社を選んでおくことが大切
いざという時、深い悲しみの中で冷静に葬儀社を選ぶのは簡単なことではありません。ここでは、後悔のないお別れのために、「なぜ事前の準備が大切なのか」、そして「どのような基準で葬儀社を選べばよいのか」、知っておきたいポイントを解説します。
介護施設では葬儀社を紹介されないこともある
介護施設の対応は施設ごとに異なります。葬儀社を紹介されることも少なくありませんが、中立的な立場を保つために特定の葬儀社を紹介しない方針をとっているところもあります。そのため、ご家族で葬儀社を選んでおくと、搬送の手配なども迅速に進められ、納得した葬儀にもつながります。
葬儀社を選ぶ際は施設への配慮があるかも大事
多くの葬儀社では、24時間体制の電話対応や夜間搬送を受け付けています。しかし、その「対応の質」には差があるのも事実です。
介護施設でのお別れは、他の入居者様も生活している空間で行われます。そのため、ただ駆けつけるだけでなく、「他の入居者様へ配慮した静かで丁寧な搬送をしてくれるか」「施設のルールを尊重し、職員と円滑に連携できるか」といった、細やかな配慮や経験が問われます。
対応に習熟した葬儀社であれば、故人様とのお別れに集中できる環境を整えてくれるはずです。
事前に依頼先を決めておけば落ち着いて対応できる
もしものときに慌てないためにも葬儀社の事前相談を活用し、依頼先を決めておきましょう。葬儀の事前相談では、費用や葬儀の流れだけでなく、介護施設での対応実績も確認できます。
「いざというとき、どこに連絡するか」を明確にしておくだけで、精神的な負担は大きく軽減されるものです。心穏やかに故人様を見送るための大切な第一歩ともなるでしょう。
7.介護施設で亡くなったときの葬儀に関するQ&A
A.ご家族が主体となって、医師による死亡確認の直後から葬儀の手配を行います。
介護施設でご家族が亡くなられた際、まず施設側からご家族へ連絡が入ります。その後、死亡診断書の受け取りや搬送の手配など、葬儀社への連絡・段取りはご家族の判断と責任で進められるのが一般的です。
死亡診断書の手続きが済んだ段階で、安置や搬送のための手配を進めることが求められるため、まずはご家族が葬儀社へ速やかに連絡をします。その後の段取りも、基本的にはご家族の判断で進めていくことになります。
「もしもの時」に備えるための情報収集や葬儀社の比較検討は、いつ始めても早すぎることはありませんので、少しでも不安を感じた時に事前相談をしておくと、落ち着いて信頼できる依頼先を見つけることができ、大きな安心につながります。
A.医師が施設で死亡を確認した後、その場で死亡診断書を発行されるのが一般的です。
介護施設に常駐する主治医や、連携する訪問診療医が対応するケースが多く、診断書はその場でご家族に手渡されるか、後日受け取りに行く形となります。死亡診断書は火葬許可証の取得や葬儀手続きに必須となるため、紛失しないよう保管に注意しましょう。
A.介護施設には故人様を長時間安置する設備がないため、早急に搬送先を手配する必要があります。
一般的には、ご家族が手配した葬儀社が搬送を行い、ご自宅または葬儀会館などの安置施設に安置します。
8.介護施設でのご逝去後に慌てず葬儀を進めるために備えましょう
介護施設でご家族が亡くなられた後は、施設側との対応や死亡診断書の受け取り、搬送先の決定、葬儀の手配など、短時間で多くの判断が必要になります。特に介護施設では、葬儀社を紹介されないこともあるため、どのように葬儀を進めるか事前に整理して備えておくことが、ご家族の負担軽減につながります。
介護施設でのお別れに不安がある方や、施設からの搬送・葬儀を滞りなく行いたい方は、花葬儀の事前相談までご連絡ください。経験豊富な専門スタッフが、介護施設の特徴やご家族の事情に応じた最適な段取りをご提案し、いざというときに慌てないための備えを一緒に考えさせていただきます。