喪主の決め方はどうする?喪主の役割や服装・挨拶まで詳しく解説
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- 【 葬儀・葬式の基礎知識 】
「喪主を誰にしようか?」「どのように決めればいいの?」――突然の出来事のなかで、喪主様を決めるのに手間取ってしまうご遺族もいらっしゃるのではないでしょうか。葬儀の準備や進行を取り仕切る喪主様は、精神的・実務的な負担も大きく、簡単には決められないという声も少なくありません。
そこで今回は、喪主様の決め方や役割、挨拶の場面や服装のマナーについても詳しく解説します。喪主様の決め方に迷っている方や、喪主様の役割について知りたい方は、ぜひ、この記事を参考にしてください。
1.喪主の立場と役割とは
喪主様の立場や役割について基本から整理し、施主様との違いも含めてわかりやすく解説します。
喪主の一般的な立場と役割
喪主様は、一般的にご遺族を代表して、葬儀を主催し、参列者や関係者に対応する中心的な人物です。葬儀全体の流れを把握し、葬儀前後におけるさまざまな場面で、的確な判断や対応をする役割を担います。
喪主と施主の違い
喪主様と施主様の違いは、葬儀における役割分担にあります。喪主様は、ご遺族の代表として葬儀全体を取り仕切る人です。施主様は、葬儀費用を負担し、お寺や僧侶へのお布施を納めるなど、金銭面を支える役割を果たします。
両者は同一人物である場合も多いですが、たとえば、高齢の配偶者が喪主様、子どもが施主様を務めるなどのケースも見られます。
行政手続き上の喪主の役割
喪主様は、行政手続きの場面でも代表者として取り扱われることが多くあります。たとえば、死亡届の提出や火葬許可申請といった公的な手続きでは、喪主様が届出人となることが多くあります。
葬儀後の相続、年金、保険などの手続きでも、喪主様がご遺族の代表として連絡を受けたり、申請書類を用意したりする場面が多く見られます。
ただし、必ずしも喪主様でなければこれらの手続きを行うことができないわけではありません。ご親族や同居人、後見人など、手続きごとに届け出や申請ができる範囲が異なるため、誰が手続きを行えるのかを確認することが大切です。
2.喪主の決め方に法的ルールはある?
喪主様の決め方に関して、法令で明確に定められた基準は存在しません。喪主様という役割は、公的な制度として位置づけられているものではなく、葬儀を滞りなく進行させるために慣習として生まれた立場だからです。
血縁関係の有無にかかわらず、誰が喪主様を務めるかの厳格なルールはなく、ご家族や関係者の判断に委ねられます。
3.喪主の一般的な決め方
喪主様に法的な規定がないとはいえ、誰が務めるかには一定の慣習や判断の基準があります。喪主様の一般的な決め方を詳しくご説明します。
故人の遺志を考慮する
故人様が生前に遺言やエンディングノートなどで、喪主様を誰にするかを示していた場合は、希望を最大限に尊重することが望ましいでしょう。一般的な慣習とは異なっていても、故人様の希望であれば、知人や友人が喪主様を務めることもできます。
喪主様に指名された方が、事情によって務めるのが難しい場合は、別の方が喪主様になっても問題はありません。重要なのは、形式や序列にとらわれず、故人様の思いや人間関係を丁寧にくみ取ることです。
続柄による優先順位を参考にする
喪主様は、一般的に故人様と血縁関係が深い人物から選ばれます。現代の慣習における続柄の優先順位は、以下のとおりです。
第1位:配偶者
長男が成人している場合は、長男が務めることが多かったものの、現在では故人様の配偶者である妻も喪主様を務めるケースが増えています。
第2位:子ども
昔は「男性が喪主を務める」という考え方が強く、長男・次男・長女・次女の順で決められる傾向がありました。しかし、最近では性別にかかわらず、娘も喪主様となるのが一般的です。
以前は、娘しかいない場合、その夫が喪主様になることもありましたが、故人様との血縁を重視して実の娘が喪主様を務める例が増えています。
第3位:両親
故人様が若年で、配偶者や子どもがいない場合は、両親のどちらかが喪主様を務めます。父親、母親どちらが務めるかは、ご家族の事情や体調などを考慮して判断されます。
第4位:兄弟姉妹
故人様に配偶者・子ども・両親がいない、あるいは高齢などで喪主様を務めるのが難しい場合は、故人様と関係が深かった兄弟姉妹が選ばれます。
第5位:その他の親族
上記に該当する人物がいない場合は、叔父・叔母・甥・姪など、故人様との関係性や事情に応じてご親族の中から喪主様が決められます。
続柄による優先順位は、あくまで一般的な目安ですので、ご家族の事情や故人様の意向を尊重し、柔軟に判断するとよいでしょう。
複数人で喪主を務める選択肢もある
喪主様は一般的に一人ですが、人数制限はないため、兄弟姉妹や配偶者・子どもなど、関係の深い複数人で務めることもできます。葬儀の規模が大きい場合や、準備や対応を一人で担うのが難しいと判断されるときに有効な方法です。
ただし、責任の所在や役割分担をあらかじめ明確にしておかないと、混乱が生じるおそれもあります。喪主間で情報共有や事前の打ち合わせをしっかり行うことが重要です。
4.ご親族がいないときの喪主の決め方
ご親族がいらっしゃらない場合、喪主様はどのようにして決めればいいのでしょうか。身近な関係者がいない方が、自身の葬儀に備える方法についてもご紹介します。
故人と縁のあった人々が話し合って決める
故人様に配偶者や血縁者がいない場合は、葬儀の実施に関わる人が喪主様を決めることがあります。たとえば、故人様を支えていた方々や、親しい知人、近隣の住民などが話し合い、喪主様を決めるのです。介護施設や老人ホームで生活していた場合は、施設の代表者が喪主様の役割を務めるケースも見られます。
もし、喪主様が決まらないまま、葬儀の準備を進めなければならない場合は、葬儀社が代行することもあります。
故人が生前に第三者に依頼し、決めておく
将来、自分の葬儀で喪主を務めてくれる人がいないと予想される場合は、生前に準備をする方法があります。たとえば、「死後事務委任契約」は、葬儀の手配、納骨、遺品整理、行政手続きなどの事務全般を第三者に委任できる制度です。受任者が喪主の役割を担うことも可能です。
委任契約の依頼先としては、知人のほか、葬儀社や行政書士などの専門職を選ぶこともできます。葬儀社によっては、ご自身の葬儀に関する生前相談や、死後事務委任契約の締結に向けたサポートを行っているところもあるため、相談してもよいでしょう。
5.喪主を決めるタイミング
喪主様の選定は、葬儀の円滑な進行に欠かせません。喪主様を決めるタイミングと事前に決定しておく利点を解説します。
喪主はいつ決めるべきか
喪主様は、葬儀の内容や進行を取り仕切る役割を担うため、葬儀の打ち合わせ前までに決定するのが一般的です。故人様が病気の場合は、容態が悪化した際に決めるケースもあります。
喪主を事前に決めておくメリット
喪主様を事前に決定しておくことには、以下のようなメリットがあります。
・葬儀社との打ち合わせや式の内容決定などが円滑に進められる。
・誰が喪主様を務めるかで意見が分かれることを防ぎやすい。
・役割や責任を前もって理解できるため、ストレスが軽減されやすい。
・故人様が希望する喪主様を生前に決めておけば、意志を尊重しやすくなる。
事前に喪主を決めておくことは、故人様とご遺族双方にとって、後悔のないお見送りのための大切な準備と言えるでしょう。
6.喪主が行う葬儀前の主な手配
葬儀を滞りなく進めるには、喪主様が中心となって必要な準備をしなければなりません。喪主様が葬儀前に行う主要な手配を解説します。
葬儀社の選定と安置場所の確保
喪主様が最初に行うべき手配は、葬儀社の選定と安置場所の確保です。病院や施設で亡くなった場合は、故人様を長くとどめておけないことが多いため、速やかに葬儀社を決定し、搬送と安置先の確保を行わなければなりません。
葬儀社は、安置場所の確保だけでなく、ご安置中のお身体のケア、そして葬儀全体の進行をサポートしてくれる、心強い存在です。大切な方の死後のことを事前に考えるのは気が進まないかもしれませんが、もしものときに後悔なく葬儀が迎えられるよう、事前に葬儀社の候補を挙げておくことをおすすめします。
故人様ご本人が生前にご自身の葬儀について葬儀社に事前相談をしているケースもありますので、ご本人がお元気なうちにご意向を確認しておくと、より満足度の高い葬儀ができるでしょう。
寺院への依頼連絡
故人様が生前に菩提寺(ぼだいじ:お世話になっている寺院)と関わりがあったかどうかを確認し、関係がある場合には速やかに連絡を入れます。菩提寺の存在を確認せずに葬儀の準備を進めると、納骨を断られたり、戒名をあらためて付け直したりなど、予期せぬトラブルにつながる可能性があります。
菩提寺または縁のある寺院への連絡の際は、読経の依頼や戒名の相談、葬儀日程の調整などをして葬儀の段取りを整えます。寺院との関係がない場合は、葬儀社に僧侶を紹介してもらうことも可能です。
もし菩提寺がない場合や、菩提寺が遠方であるなどの理由で僧侶による葬儀の読経が難しい場合は、葬儀社に相談し、寺院を紹介してもらうとよいでしょう。最初に葬儀社へサポートを依頼しておくと、必要な段取りを教えてもらえるため、安心して準備を進められます。
参列者への訃報連絡
喪主様やご遺族が中心となり、ご親族や故人様と関わりの深かった方々に訃報を伝えます。時間が限られるなかでの作業となるため、あらかじめ連絡リストや伝達内容を整理し、役割を分担しながら正確に進めます。
7.喪主にふさわしい服装の基本
喪主様は、葬儀の中心的な立場として参列者の前に立つため服装にも気を配らなければなりません。男女それぞれで、喪主様にふさわしい服装は次のとおりです。
男性の服装
和装であれば黒紋付羽織袴、洋装ではモーニングコートが本来の正装にあたります。しかし近年では、光沢の無い略式のブラックスーツが主流となっています。ネクタイや靴下などの小物も黒で統一するようにしましょう。
女性の服装
和装では染め抜き五つ紋付きの黒無地の着物に喪帯を合わせた装いが基本です。洋装では黒のワンピースやアンサンブルスーツなどが選ばれます。バッグや靴、アクセサリー類も控えめなデザインとし、黒色でまとめます。
8.喪主が挨拶を行う主なタイミング
喪主様は、ご遺族を代表して僧侶や参列者へ感謝の気持ちを伝える役割を担います。ここでは、一般的に喪主様が挨拶をするタイミングを解説します。
通夜
通夜での喪主様の挨拶のタイミングを時系列に整理すると、以下のようになります。
・お世話役やお手伝いの方を迎える際の挨拶
・僧侶のお迎え時
・受付開始時の参列者への挨拶
・通夜式終了後の「喪主挨拶」
・通夜ぶるまい開始時
・通夜ぶるまい終了時
葬儀・告別式・出棺
葬儀・告別式・出棺の喪主様の挨拶のタイミングを時系列に整理すると、以下のようになります。
・お世話役やお手伝いの方を迎える際の挨拶
・僧侶のお迎え時
・受付開始時の参列者への挨拶
・告別式終盤での「喪主挨拶」
・出棺時に見送る方々への挨拶
葬儀での喪主様の挨拶は、文例も掲載しております「葬儀の喪主挨拶」の記事をご覧ください。
精進落とし
精進落としは、葬儀を終えたあとの節目として設けられる会食の席であり、喪主様が参列者へあらためて感謝の言葉を述べる機会です。
精進落としでの喪主様の挨拶のタイミングは、以下のとおりです。
・精進落とし開始時
・精進落とし終了時
9.喪主が葬儀後に行うお礼や挨拶
葬儀が終わっても、喪主様としての務めが終わるわけではありません。喪主様が行う葬儀後のお礼や挨拶について解説します。
関係者や近隣への挨拶
当日お手伝いくださった方々や、日ごろお世話になっている近隣の方々へ、できるだけ早く挨拶に出向きます。葬儀の翌日または翌々日に直接訪問して、感謝の気持ちを伝えると丁寧です。故人様の勤務先がある場合は、できれば、初七日までを目安に挨拶へ伺いましょう。
挨拶に伺う際には、香典返しとは別のささやかなお礼の品を添えると、より心のこもった印象になります。
僧侶へお布施を渡す
読経をお願いした僧侶には、感謝の気持ちを込めてお布施を渡します。多くの場合、葬儀の開始前、もしくは葬儀終了後など、当日に渡します。喪主様が葬儀後に改めて寺院を訪れてお渡しするケースもあります。
葬儀のお布施の金額や渡すタイミング、表書きの書き方などは宗派や地域によって異なるため、事前に寺院または葬儀社に確認しておくと安心です。
弔電・供物へのお礼状の送付
当日、参列できなかった方から届いた弔電や供物には、お礼状を送るのが礼儀です。パソコンで作成しても問題ありませんが、はがきや手紙を選ぶことをおすすめします。葬儀から1週間以内に送付するのが理想です。
10.喪主を安心して務めるためにできること
喪主様の役割は多岐にわたるため、大きな負担がかかります。最後に、喪主様が安心して役割を果たすためのポイントをご紹介します。
一人で抱え込まないことが大切
喪主様は、葬儀全体の決定を任されることが多く、責任感からすべての判断を自身で背負おうとしてしまいがちですが、無理をすれば心身の不調を招くおそれもあります。ご遺族の代表であるとはいえ、葬儀の運営は一人で行うものではありません。周囲との連携体制を整え、ご家族や関係者などに、できることは任せる意識が大切です。
事前相談や専門家のサポートを活用
葬儀社の事前相談を通じて、葬儀の流れや安置場所の確保、費用の目安などを把握することで、当日の不安や混乱を大きく減らせます。喪主様の決め方についてご不安がある場合にも、頼れる葬儀社に相談することで、ご家族の事情に応じたアドバイスが受けられるでしょう。
11.喪主の決め方を知って、不安なく葬儀の準備を進めましょう
喪主様を誰にするかは、葬儀全体の方向性を定めるうえで、きわめて重要な判断です。しかし、法的な決まりがないからこそ迷いやすく、ご家族のあいだで意見が分かれて混乱が生じることもあります。
大切な方を思いを込めてお見送りするためにも、喪主様の決め方について事前に理解を深め、情報をご家族間で共有しておきましょう。そうすれば、いざというときにも落ち着いて判断を下すことができ、安心して葬儀の準備を進められます。
喪主様の決め方に迷っている方や喪主様の役割に不安を感じている方は、花葬儀の事前相談をご利用ください。経験豊富なスタッフが、ご家族の状況やご意向に丁寧に寄り添いながら、後悔の無い葬儀を行えるようお手伝いいたします。ご自身の葬儀の生前相談や、死後事務委任契約のサポートも行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。