海洋散骨・海洋葬とは?手続き・費用・メリット・デメリットを解説
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- 【 葬儀の種類 】
近年、新たなお別れのかたちとして「海洋散骨」や「海洋葬」が注目されています。広い海に旅立つ自由な葬送スタイルに心惹かれる方も増えてきました。ただし、一般的な埋葬方法とは異なるため、手続きや費用、注意点などに不安を感じる方も少なくありません。
そこで今回は、海洋散骨・海洋葬の特徴、費用の目安や手続きの流れ、メリット・デメリットを解説します。法律的な解釈やルールもご紹介しますので、故人様の海洋散骨・海洋葬を考えている方や、ご自身の最期について準備されている方は、ぜひ、この記事を参考にしてください。
1.海洋散骨・海洋葬とは
海洋散骨・海洋葬とは、火葬後の遺骨を粉末化し、海にまいて供養する葬送方法のことを指します。どちらの言葉も同じ意味で、故人様を自然の循環へと送り出す自然葬の種類のひとつとして行われます。特定の宗教や慣習に縛られず、個別の事情に合わせて柔軟に実施できる点が特徴です。
2.海洋散骨・海洋葬が注目される背景
海洋散骨・海洋葬を選ぶ人が増えているのはなぜでしょうか。注目される背景を解説します。
「海に還りたい」と望む人が増加
海洋散骨・海洋葬が増えている背景には、「海に還りたい」「大自然の中で眠りたい」といった価値観の広がりがあります。海に身を委ねる葬送は、より自由でありたいと考える方に、精神的な解放感を感じられる方法としても支持されています。
「お墓を持たない選択」の広がり
少子化や都市部への人口集中で、先祖代々のお墓を維持できないご家庭が増えています。跡継ぎの不在や経済的な負担を背景に、墓じまいを選択するケースも目立ち始め、お墓を持たない海洋散骨・海洋葬が、供養の選択肢になりつつあります。墓じまいにあたり、お墓に収められていた遺骨を散骨する方もいらっしゃいます。
3.海洋散骨・海洋葬の法律・ルール
海洋散骨・海洋葬に、法的な問題や社会的なルールについて不安を感じる方もいるかもしれません。違法性の有無や業界の指針について解説します。
法律で明確に禁止する規定はない
結論として、海洋散骨・海洋葬は違法ではありません。刑法第190条(遺骨遺棄罪)や、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)を確認しても、海に遺骨をまくこと自体を明確に禁止する規定が見当たらないためです。
法務省は散骨について、「節度をもって行えば問題ない」との見解を示しています。そのため各専門の業者が、この「節度」を重視して海洋散骨を実施しています。
ただし、一部自治体では、条例で個人・事業者問わず散骨を禁止または規制しているため、散骨を希望する場合は、必ずその地域の条例やガイドラインを確認しなければなりません。
日本海洋散骨協会ガイドラインの概要
海洋散骨・海洋葬を適切な方法で実施するための指針として、一般社団法人日本海洋散骨協会が「海洋散骨ガイドライン」を策定しています。社会通念上のモラルに配慮し、節度ある散骨を実現するためのものです。
ガイドラインで特に重視されている主なルールは、以下のとおりです。
・遺骨は1mm〜2mm程度に粉末化すること
・散骨は陸地から一定の距離を保った海域で行うこと
・漁場や養殖場、航路を避けること
・環境に配慮し、自然に還らないものをまかないこと
法律やガイドラインを理解し、適切な方法で実施することが、故人様を安らかに見送るうえで大切です。
出典:日本海洋散骨協会ガイドライン|一般社団法人日本海洋散骨協会
https://kaiyousou.or.jp/guideline.html
4.海洋散骨・海洋葬の種類と特徴
海洋散骨・海洋葬には、いくつかの実施方法があります。主な3つの種類と、それぞれの特徴をご説明します。
チャーター散骨
ご家族や関係者などが、船をチャーターして散骨を行う方法です。船の大きさによって乗船できる人数は変わりますが、限られた人たちのみで落ち着いて故人様を見送ることができ、最後の時間をゆったりと過ごせます。
合同散骨
一隻の船に複数のご家族が同乗し、順番に散骨を行う方法です。1組あたりの乗船人数が限られ、希望する方がすべて立ち会えない場合もありますが、船をチャーターする費用を抑えることができます。
委託(代理)散骨
ご遺族が乗船せず、業者が代理で乗船、沖合で散骨を行う散骨方法です。乗船費用が抑えられるため、費用総額が抑えられるのがメリットです。
ご遺族は散骨に立ち会うことはできませんが、当日の様子を写真や映像で報告する業者が多く見られます。散骨が確かに執り行われたことを証明する「散骨証明書」が、後日郵送されることが一般的です。
5.海洋散骨・海洋葬のメリット
海洋散骨・海洋葬を選ぶ理由は人それぞれですが、従来の供養と異なる利点がいくつかあります。こちらでは、主なメリットを解説します。
自然に還りたいとの想いをかなえられる
海洋散骨・海洋葬は、自然の循環に身を委ねたいと願う故人様やご自身の想いを形にできます。従来の埋葬方法では実現が難しかった「大自然の中で眠る」という希望に応える手段であり、形式や宗教にとらわれず、自分らしい最期を望む方に適しています。
お墓を持たずに供養できる
海洋散骨・海洋葬は、遺骨をお墓に納めず、海に還す供養方法であるため、特定の場所に縛られずに故人様をしのぶことができます。お墓を建てる必要がなく、土地代や管理費も発生しないため、経済的な負担を軽減でき、墓地の維持や跡継ぎの心配も不要です。
お墓の管理をしてくれる跡継ぎがいない場合でも安心
跡継ぎ不在でお墓の維持管理に不安がある方にとって、海洋散骨は心強い選択肢となります。物理的なお墓を設けないことで、将来の管理や費用の心配が不要となる点は大きなメリットでしょう。お墓の跡継ぎがいない場合でも、無縁仏になってしまう心配が不要になります。
6.海洋散骨・海洋葬のデメリット
海洋散骨・海洋葬は、メリットだけでなく、デメリットも理解したうえで判断することが大切です。こちらでは、主なデメリットを解説します。
お参りできる場所がない
命日や節目にお墓のような場所に行って故人様をしのびたい方にとっては、寂しさを覚えることもあります。実際に手を合わせる場がないことで、気持ちの整理がつきにくいと感じる方もいるでしょう。
散骨場所によってはトラブルになる可能性がある
海洋散骨では、散骨場所の選定に十分な配慮が不可欠です。実施場所によっては、モラルを欠いた行為と受け取られ、思わぬトラブルを招く可能性があります。漁場や養殖場などの近くで散骨を行うと、周辺住民からの苦情につながるかもしれません。
散骨業者を選ぶ際には、散骨場所に関する明確な説明があるかも確認するとよいでしょう。
7.海洋散骨・海洋葬の費用相場
海洋散骨・海洋葬で気になるのが、実際にかかる費用でしょう。主な3種類の費用相場と追加費用の確認が必要な項目をご説明します。
種類別の費用相場
チャーター散骨、合同散骨、委託散骨、それぞれの費用相場は次のとおりです。
チャーター散骨の場合
15万円〜40万円程度が目安となります。船の大きさやサービス内容によって金額は変動します。
合同散骨の場合
5万円〜20万円程度が一般的です。日程や散骨場所を他のご遺族と共有するため、比較的費用を抑えることができます。
委託散骨の場合
3万円〜10万円程度が相場とされており、ご家族が乗船しないぶん、費用を抑えやすくなります。
追加料金がかかる可能性のある項目
海洋散骨・海洋葬では、基本プランに加えて発生する追加料金の確認が欠かせません。追加料金がかかる可能性のある項目は以下です。
粉骨費用
海洋散骨では、遺骨はそのまま散骨できないため、粉末状に加工する必要があります。希望する散骨プランに粉骨作業が含まれていない場合、ご自身で粉骨を行うことも可能ですが、専門業者に依頼するのが一般的です。費用は、1柱あたり1万円〜3万円程度が相場です。
献花オプション
散骨時に花を海に捧げる演出は、無料で提供されることもありますが、有料の場合もあります。
その他の追加費用
散骨証明書の発行、記録写真の撮影、遺骨の郵送などにも費用が発生する場合があります。
8.海洋散骨・海洋葬の実施までの手順
海洋散骨・海洋葬は、事前準備から当日の実施まで、いくつかのステップを踏む必要があります。具体的な手順を解説します。
1.業者選びと相談
信頼できる海洋散骨業者を選びます。プラン内容や費用、対応エリアが異なるため、数社を比較しながら検討し、希望する散骨方法(チャーター・合同・委託)や日程、出航地についても相談します。
2.申し込みと打ち合わせ
依頼する業者とプラン内容が決まったら、正式に申し込み、契約書を取り交わします。契約内容やキャンセル規定などは必ず事前に確認してください。
3.必要書類の提出
散骨を行うためには、火葬許可証などの必要書類をきちんと揃えたうえで、選んだ業者に提出しなければなりません。書類の提出によって、遺骨が正規の手続きを経ていることが証明されます。
4.粉骨作業(必要な場合)
遺骨の粉骨が業者のプランに入っていない場合は、別途粉骨作業を行います。
5.散骨実施
指定された日時に、出航地から船で沖へ向かい、散骨を行います。海洋散骨・海洋葬は、事前に決められたスケジュールに従って進行します。
以下に、弊社「花葬儀」でご提供しております海洋散骨までの流れを掲載いたします。具体的な流れは、サービスを行う散骨業者により異なりますので、事前にご確認ください。
花葬儀で行っている海洋散骨の様子を、別のページで写真とともに詳しくご紹介しております。ご興味がございましたら、そちらも併せてご覧ください。
9.海洋散骨・海洋葬に必要な書類と取得方法
海洋散骨・海洋葬を実施するにあたり、必要となる主な書類とその取得方法をご紹介します。
火葬許可証または埋葬許可証
故人様が正式に火葬されたことを証明する公的な書類で、死亡届を市区町村に提出した際に発行され、火葬場または役所で受け取ります。海洋散骨を行うにあたり、公的機関への書類提出義務はありませんが、散骨業者から身元確認のために提出を求められることが一般的です。
紛失した場合でも、市区町村役場で再交付手続きが可能です。
改葬許可証
すでにお墓に納められている遺骨を、取り出して散骨する際に必要な書類です。お墓の管理者から発行される埋蔵証明書を受け取り、市区町村役場へ申請し取得します。
親族の同意書
ご親族間での合意が得られていることを示すために用意する書類です。必須ではありませんが、後々のトラブルを防ぐ目的で業者から提出を求められる場合があり、多くは業者が用意した書式に署名・押印して提出する形を取ります。
10.海洋散骨・海洋葬を円滑に進めるための注意点
海洋散骨・海洋葬を検討する際は、事前に押さえておきたいポイントがあります。最後に、注意すべき点をご説明します。
故人の遺志と家族の気持ちの両立
故人様が「海に散骨してほしい」という希望を持っていた場合は、それを叶えることが供養につながります。ただし、ご家族の中に「遺骨を手元に置いておきたい」「海にまくことに抵抗がある」と感じる方がいる場合もあります。
散骨を決断する前には、故人様の想いとご家族それぞれの気持ちの両方を考慮し、十分に話し合いを重ねることが重要です。ご親族間で意見が分かれた際は、無理に進めず、皆が納得できる形を探るようにしましょう。
時期・天候による影響と日程調整
晴天であっても、海が荒れていると船が出航できない場合があり、当日に急遽延期となることも珍しくありません。特に台風シーズンや冬場の荒天が予想される時期は、注意が必要です。
計画を立てる際は、日程に余裕を持たせるとともに、天候次第で予定変更の可能性がある点を理解したうえで進めます。散骨業者によって悪天候時の対応(再手配料の有無など)が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
信頼できる専門業者を選ぶ
海洋散骨・海洋葬では、経験豊富で信頼できる専門業者を選ぶことが不可欠です。
業者選びのチェックポイントとして、次のような点を確認しておきましょう。
・散骨実績が豊富で過去の事例がしっかり公開されている
・料金プランが明瞭で追加費用についても説明されている
・悪天候時の対応方針(延期や中止の場合の扱い)が明記されている
・散骨後に「散骨証明書」などの書類が発行される
・問い合わせ時の対応が丁寧で、安心感を持てるかどうか
11.海洋散骨・海洋葬に関するQ&A
A.散骨後も故人様を供養する方法はあります。
たとえば、自宅に小さな骨壺やメモリアルグッズなどを置く手元供養や、命日や節目に海に向かって祈りを捧げる方法が挙げられます。お墓がなくても、それぞれの想いを込めた供養が続けられます。
A.散骨証明書とは、海洋散骨・海洋葬を正式に実施したことを証明する書類です。
実施日や散骨を行った海域、実施業者の情報などが記載され、散骨の記録としてご遺族の手元に残ります。将来的にご家族や関係者への説明が必要になった際にも役立つため、大切に保管することをおすすめします。
A.春(4月〜6月ごろ)や秋(9月〜11月ごろ)が比較的天候が安定し、海も穏やかなため適しています。
海洋散骨・海洋葬は、1年を通じて実施可能ですが、夏は台風、冬は強風や荒波の影響を受けやすく注意が必要です。実施時には、事前に天候や海の状態を確認し、無理のない日程を選びましょう。
A.海洋散骨・海洋葬では、喪服を着用する必要はありません。
多くの場合、動きやすく落ち着いた色合いの服装が推奨されています。船上は風が強く、足元も滑りやすくなるため、カジュアルすぎない範囲で、風や天候に対応できる控えめな色味を基調にした服装を選ぶとよいでしょう。
12. 海洋散骨・海洋葬を正しく理解して、納得のいく選択をしましょう
海洋散骨・海洋葬は、お墓を持たない自由な供養の選択肢として注目されています。しかし、自然に還る美しいイメージだけで決めるのではなく、手続きや供養のあり方、ご家族の気持ちなど、さまざまな面をしっかり理解して判断することが大切です。
デメリットや心情への影響にも配慮しながら、ご家族や大切な方にとって心から納得できるかたちで、海洋散骨・海洋葬を選びましょう。
海洋散骨・海洋葬に少しでも興味をお持ちの方、具体的に検討したい方は、花葬儀の事前相談までご連絡ください。経験豊富なスタッフが、海洋散骨・海洋葬に関するご不安やご質問に丁寧にお応えいたします。